2026年4月 歌舞伎座「四月大歌舞伎」昼の部 観劇記 〜廓の華やぎと『裏表先代萩』に感じた光と影〜

2026年4月24日、🎭歌舞伎座で開催された『四月大歌舞伎』昼の部を観劇してまいりました✨
昼の部は、成駒屋一門による華やかな舞踊『廓三番叟』と、名作『伽羅先代萩』の裏のお話が一緒に見られる『裏表先代萩』の通し上演という、個人的にはなかなか魅力的なラインアップです。
最後に四月の歌舞伎座集客状況を予約率(2026/04/26時点)で紹介しています。映画『国宝』ブームによる観客数増加はまだ続いているのか――
どうぞ最後まで、ごゆっくりお付き合いください🍵
今回の公演の詳細については「歌舞伎美人」をご確認ください👇
➡️ 令和8年4月歌舞伎座「四月大歌舞伎」
『廓三番叟』 ー 🌸 廓の華やぎと、少しの寂しさ ー

前日の雨は止んでますが、やや曇り空の中、歌舞伎座へ到着☁️ 1月にも見ましたが団体さんのバスが数台歌舞伎座前につけています🚌 たまたまなのかもしれませんが、国宝ブーム以降は旅行会社がこぞって歌舞伎観劇ツアーを組んでいるのでしょうか?
それはそうと、昼の部の最初は『廓三番叟』🎭
公演のハナを勤める華やかな舞踊演目ですが、今回はキャスティングが五代目 中村歌右衛門の流れを汲む「成駒屋一門」勢揃いとなっております✨
まずは、若手の橋之助、福之助、歌之助の太鼓持ちと莟玉、玉太郎の新造が登場し幕開けに花を添えます🌸
そして舞台中央に大きく空いたセリから、梅玉、魁春、福助、芝翫と一門の重鎮たちが登場し、一気に廓の洒落た雰囲気へ!✨
なかでも注目は福助さん。常に後見がつかねばならない状態なのは変わりませんが、限られた足の運びと左手のみの演技がかえって優美さを引き立てるようです。若手達が福助さんを手助けしている様子もなんとも微笑ましく、ついつい見入ってしまいました☺️
そして、番新の歌女之丞、梅花に莟玉が加わって盃を飲み干したり、東蔵と松江が玉太郎と廓の傾城と客のやりとりを演じて見せるなど、廓の日常風景のような場面を楽しそうに演じます🍶
ラストは大尽・梅玉と傾城・魁春を中心に全員で華やかに舞い収めて幕となりました✨
まるる(莟玉)も可愛いし出だしの舞踊演目としては言う事なしの出来なのですが……
本来なら、もう一人ここに新造としていなければならない役者——児太郎の姿がないのが、福助さんの踊る姿とも相まって、なんとも寂しいというか切ないものがありました😌
通し狂言『裏表先代萩』 ー 表と裏が交錯する物語 ー
さて、次の演目は時代物の名作と名高い『伽羅先代萩』を元にした、通し狂言『裏表先代萩』です。
政岡や仁木弾正が登場する場面が「表」、そして裏話的な下男小助という小悪党の物語が「裏」という、言わば本編とスピンオフを一緒に上演するような展開です。
八代目 菊五郎が政岡、小助、仁木弾正とまったく異なる主要な三役を勤めるのも大きな見どころです。
序幕『花水橋の場』
序幕に登場するのは中村歌昇演じる足利頼兼。この役、どういう立場だっけと思いきや、この後の話で、政岡が必死に守ることになる若君・鶴千代の父です。
出だしから夜の闇に黒装束が集まって何やら不穏な気配🌙
そこへ現れた駕籠が襲撃され、刀が突き立てられますが、開けてみたら誰も乗っていない。
……と思いきや頼兼が駕籠の裏からさらりと登場!ってどういうことなの?襲撃を察知して先に出てた?🤔
よくわかりませんが、はんなりとした遊び人風情の殿様は、暗闇の中、襲撃者たちを飄々とあしらっていきます。
いわゆる歌舞伎の「ダンマリ」の場面です。普通はメインの登場人物たちが一堂に揃う「顔見世」的な意味をもつダンマリですが、ここは『鈴ヶ森』と似た感じの「立ち廻り」がメインの場面⚔️
頼兼は襲ってくる敵を、時には椅子にしてその上に座り、さらには肩を揉ませたり……これは伽羅の靴の匂いを嗅いだ敵が、なんだかおかしくなっているということでしょうか?
歌昇は力強い立役キャラのイメージでしたが、こういう和事味もなかなかに魅せてくれます。そういえば去年は『加茂堤』で桜丸やってましたね。
むしろ荒事味はこの後、頼兼を救いにくる絹川谷蔵を演じる弟・種之助のほうが似合うのでしょうか。
二人の出番はここまでですが、足利家の家中に不穏な動きがあることを示して、この後の展開へとつなげるエピソードでした。
二幕目『大場道益宅の場』

次はこの演目の「裏」に当たるお話です👁️ あまり見られない場面なので楽しみなところですが、もともとの「表」の話がわかっていないと、何の話かわかりにくいところではあります。
ざっくりと説明すると、「表」でお家乗っ取りのために主君の若君を毒殺しようという動きがあり、その毒を調合する役目の医者がこの「裏」の話に出てくるわけです☠️ そしてこの医者が、自分の弟分の下男である小助に殺されるというのがこの場面。
これだけ聞くと、小助はなんだかお家騒動の元凶を暴こうとする正義の味方のように見えますが、実際は単に金欲しさに殺人を犯してその罪を他人に被せようとする小悪党にすぎません💰
そんな小悪党・小助を演じるのが八代目 尾上菊五郎。父・七代目も演じた、小助・政岡・仁木弾正の三役に挑みます✨
そして、注目は坂東彌十郎の大場道益と、市村橘太郎が演じる弟の宗益。この大男と小男のコンビはなかなか見られない貴重なショットです👀 いかにも悪だくみしてそうな雰囲気がいいですね〜。道益は中村七之助演じるお竹に言い寄っても相手にされない、でもめげない。まさに勘違いオジサンの鑑です(笑)
仁木弾正に毒薬の調合方法を頼まれた二人が報酬の二百両を手に入れ、ウハウハなのを見た小助💸 とたんに金に目がくらみ、「殺してでも奪い取る」ことを選択します。一人になった道益に襲いかかり、立ち廻りの末に包丁で刺し殺しますが、トドメを刺す時にちゃんと口を塞いで断末魔の叫びが聞こえないようにしてました。
そして小助は、自分が殺したにもかかわらず、素知らぬ顔で殺害現場に戻ってわざとらしく驚いて見せます😱 このとき、弟・宗益が兄の死を確認するのですが、医者らしく脈をとってるのが面白い。
宗益は現場に遺されたお竹の文を見て犯人だと疑いますが、なぜか小助にも疑惑の目を向けます🤔 自分の下男だけど信用してなかったってこと?このへんからも、小助が根っからの小悪人だったことが伺えますね。
というところで、二幕目が幕となりましたが、さてさて小助とお竹の運命はどうなっていくのか?🎭
三幕目『御殿』『床下』

さて、三幕目は「表」の場面。『伽羅先代萩』の代名詞と言える『御殿』と『床下』の場面です🎭
子役の出番が長い場面です。千松を歌昇次男・秀之助、そして鶴千代を尾上琴也が勤めますが、はて?琴也って誰の子供かと思えば、振り付けで有名な日本舞踊家・尾上菊之丞の息子とな!👀
琴也くん、ちょっと体調不良で休演していましたが、このときは元気にやってました。本人は歌舞伎に興味津々とのことで、今後どうしていくのか気になりますね。
そして先ほどの場面では小助と道益という悪党同士の醜い争いを繰り広げた八代目 菊五郎と彌十郎が、今度は政岡と八汐として、お家の存続をかけた女の闘いを繰り広げます⚔️ 1月には『鏡山旧錦絵』で尾上と岩藤として対決したのが思い出されますね〜。
もっともここでは、鶴千代をかばって毒入りの菓子を食べた千松が重要なポイント。
毒を食べた上に八汐に刺されて苦しむ千松。それを見ながらも鶴千代を守る以外は何もできない政岡……忠義を貫くことの厳しさを感じさせる場面です。
この後、一人になった政岡が、息子・千松の死を嘆き悲しむ姿が涙を誘います😢 歌舞伎は子供が犠牲になる場面が多いですが、現代社会では有りえないような話から、「人間にとって本当に大切なものは何か?」と考えさせられる場面です。
また、この場で注目したのが、中村時蔵の沖の井と中村芝のぶの松島です。この二人が政岡側に立って八汐にキッと鋭い視線を送る姿が、まさに武家の奥方という感じで実に凛々しく惚れ惚れします✨
そして、場面が変わり『床下』へ。
中村萬太郎の荒獅子男之助が大きなネズミを捕まえますが、まんまと逃げられます🐁 花道の「すっぽん」に逃げ込んだネズミが、不気味な雰囲気とともに仁木弾正として再登場。菊五郎の三役目です。
「差し出し」という本物の火がついた蝋燭の明かりに照らされた弾正🕯️ 不敵に微笑むと花道から鳥屋へと下がっていきますが、蝋燭に照らされた弾正の影が定式幕に映り、それがだんだん大きくなっていく……まさに悪人としての格の大きさを示すようでゾッとするものがありました。
大詰め『小助対決の場』『仁木刃傷の場』

いよいよ大詰めです🎭 まずは「裏」の小助の話の結末から。
お竹とともに幕府の問注所に引き出された小助。ところで、ここの床は灰色になってますが「お白州」ではないのでしょうか?🤔
それはそうと、ここでの見せ場は中村勘九郎演じる倉橋弥十郎。吟味役の横井角左衛門(坂東彦三郎)や宗益など、鶴千代毒殺に加担する人々がお竹に罪を被せて悪事の隠蔽を図ろうとするなか、呑気に遅れてやってきます。
角左衛門がすでに詮議は終わったということで納得するのかと思いきや、小助の余計な一言から鋭い質問を浴びせ、小助の矛盾を指摘します。さらに、証拠の品を次々に出して、ついには下手人が小助であることを認めさせるのです。
なるほど、弥十郎が遅れてきたのはこの事件の証拠を集めていたということで、鶴千代毒殺の件に関してもかなり証拠を掴んでいるようです。うろたえる角左衛門や宗益たちに、「悪事で出世はできませんなぁ」と意味深な捨て台詞を吐いて引き立てられていく小助。
なんか、勘九郎が美味しいとこ全部持っていった感じの場面でした😅
そして「表」もいよいよ大詰めに。
なんやかんやで鶴千代の家督相続が認められ、お家乗っ取りを企んだ勢力は追い詰められていきます。
ここで渡辺民部(尾上右近)、渡辺外記左衛門(河原崎権十郎)、山中鹿之介(中村歌之助)らが登場。
民部と鹿之助が退出し、外記左衛門が一人書状を書いているところへ弾正がぬけぬけと現れます。
相手にせず書状を書き続ける外記左衛門に、弾正が例のねずみの姿で奪った「連判状」を差し出します🐁
さすがにこれは無視できずに改めようとする外記左衛門。その背後で懐に手を入れる弾正……不穏な気配に振り向く外記左衛門、ぱっと手を戻す弾正。これを3回ぐらい繰り返すわけですが、客席からは笑いが😂
ここ、笑う場面じゃない緊迫した場面のはずなんですがね(笑)
そのうち誰か「外記左衛門、後ろ〜」とか叫びそうです。(笑笑)
しかし、ついに弾正が懐から刃を取り出し外記左衛門を刺します。よろめく外記左衛門を弾正がゆっくりと追い詰めながら舞台は回転。
瀕死で逃げていた外記左衛門が衝立の後ろに隠れると、再び現れた弾正は戦闘スタイル。
阻止しようとする藩士たちを蹴散らし、執拗に外記左衛門に迫ります。
とはいえ、外記左衛門も老いたりとはいえ一介の武士。扇子を片手に立ち向かいます。
っていうか、最初の不意打ちがけっこう致命傷のような気もするのですが……なかなか倒れないのも『義賢最期』みたいな歌舞伎あるある💦
しかし、ようやく弾正にも最期の時が。
駆けつけた民部たちに討ち取られ、仰向けに倒れて事切れます。
ここで登場するのが、さっきまで「裏」で活躍してた勘九郎。「表」では細川勝元として登場し、ここでも最後を締める役です。
瀕死の外記左衛門を褒め称え、一差し舞うように扇子を与えますが……早く医者に見せてやれよと突っ込まずにはいられない(笑)
まあ、ここは外記左衛門の忠義を立てる場面ですから、もしこのまま死ぬことになっても、「自分の体のことよりも主君のために忠義を尽くした」と認められるわけだし、何より本人がそれを望んでいる。言わば「男を立てる」場面でもあるのでしょう。
現代に生きる我々も、気持ちとしては見習いたいところですね。
かくして大団円を迎えて『裏表先代萩』の幕となりました✨
『裏表先代萩』を見終わって
『裏表先代萩』を見終わっての感想ですが、まずは時代物の「表」と世話物の「裏」という二つの場面が交互に見られるというのは、見る者を飽きさせない趣向で実にいいですね🎭
ただ、この「表」と「裏」の物語のつながりがちと弱いのではないかというのが気になりました🤔
小助が道益を殺した動機は単に金がほしいだけでしたが、ここは小助の出自は本当は足利家に仕える身分であったとか、お竹に惚れていて、彼女を助けるためにやむなく殺しを働いた、みたいな設定があっても良かったのでは?
『四谷怪談』の伊右衛門のような色悪でもなく、『油地獄』や『夏祭』のような凄惨な殺しの場面自体が見せ場になるでもなく、倉橋弥十郎の謎解きがメインテーマだったからなのか、小助というキャラクターの存在感があまりなかったのが残念な気がしました💭
あと、「表」のラストでは、このお家騒動の一番の功労者でもある政岡が出てこないのも、なんか不満です。弾正が引っ込んでから早変わりで登場できそうなものですがね。
結果的に助かりましたが、鶴千代は毒殺される寸前までいったわけで、それを阻止したのが千松の機転だったのです。勝元が、千松が幼いながらも主君を守った「功」と、母・政岡の教えを守った「孝」を褒め称えるという場面があってもいいのでは?
まあ、いつかそんな風に脚本が変えられるかもしれないと楽しみにしながら、今回の観劇記もコレギリといたしとうございます✨
おまけ:2026年4月の歌舞伎座予約数は?
おまけとして「四月大歌舞伎」の予約状況チェックをご覧ください📊
明日の千穐楽の予約状況も含めて、現時点で歌舞伎座の予約数を「チケットWeb松竹」でミナミが毎日目視で確認した数値を共有していきます。なお、今回から予約状況から計算してチケット売上金額も表記してみました。
あくまでご参考までに。
「四月大歌舞伎」
2026年4月2日〜27日
休演日:10日、20日
公演日数:24日間
■ 今年1〜3月との比較
| 年月 | 昼の部(売上/日) | 夜の部(売上/日) |
|---|---|---|
| 2026年1月(22日公演) | 100%(¥25,804,727) | 90%(¥23,048,262) |
| 2026年2月(24日公演) | 98%(¥25,017,804) | 81%(¥20,796,979) |
| 2026年3月(20日公演) | 87%(¥21,833,125) | 77%(¥19,917,751) |
| 2026年4月(24日公演) | 80%(¥20,787,521) | 90%(¥22,840,087) |
1月から予約状況は徐々に下がっていきますが、4月の夜の部は、私は観劇しませんでしたが、尾上右近と尾上眞秀の『連獅子』や中村勘九郎が“ちゅう乗り”を披露する『浮かれ心中』など、テレビでも取り上げられて内容もわかりやすい演目が人気を集めたのでしょうか📺
昼の部の『裏表先代萩』は、古典の名作ではあるものの、やはり内容が難しく感じる人が多かったのでしょうか?私が見たときは幕見席が『廓三番叟』に比べてけっこうガラガラでちょっと驚きました😲 まあ、幕見なのに2時間を超える上演時間が敬遠されただけかもしれませんが。
来月は『團菊祭』で尾上辰之助の襲名披露ですが、どれだけお客さんを集められるでしょうか?✨








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