【2021年】歌舞伎役者ランキング!2020年のデータから今年の活躍を徹底分析
令和三年(2021年)に活躍が予想される歌舞伎役者ランキングはどうなるでしょうか?
前年(2020年)の歌舞伎役者の、“歌舞伎”での舞台出演を元にして、家柄やこれまでの舞台での実績、歌舞伎以外でのテレビ出演なども考慮して徹底分析してみました。
新型コロナウイルスの影響による公演自粛で苦境に陥った歌舞伎界を支えて、新しい年の活躍が期待される注目の歌舞伎役者をぜひチェックしてくださいね。
目 次
令和二年(2020年)公演自粛の中で最も活躍した歌舞伎役者は?
2020年の歌舞伎界は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、3月〜7月の公演はほぼ休演になり、8月の再開後も出演者や上演時間を減らした公演となってしまいました。
そんな苦境の中でも、無観客の舞台をネットで動画配信するなどの新しい試みも行われ、歌舞伎の新しい可能性を大きく広げるきっかけになった年だったとも言えます。
ここでは、それぞれの役者が2020年の歌舞伎の舞台に実際に立った回数を調べて、ポイントとして換算した上位20人を紹介します。
基本的なポイントの数え方は、一つの演目に出演したら1P(ポイント)で、その演目のメインの立役か女形を務めたらプラス2P。歌舞伎座での出演にはさらにプラス1Pとしています。
演目・吉野山、役・佐藤忠信(主演立役)、
出演1P+主演2P+歌舞伎座1P=4P
【集計の対象にした公演】
- 歌舞伎座
- 国立劇場
- 新橋演舞場
- 大阪松竹座
- 京都南座
- 博多座
- 御園座
- 新春浅草歌舞伎
- 市川海老蔵特別公演
- 図夢歌舞伎
- ART歌舞伎
- 中村勘九郎・七之助 特別公演
- システィナ歌舞伎
- 超歌舞伎
- 須磨浦
- みよしや
- 古典への招待
- 研の会
- GOEMON抄
- 百傾繚乱
自主公演や動画配信なども基本は同じですが、日程が短い場合などは一日を一演目と考えてポイントを計算したりもしています。
把握しきれていない公演もあるかもしれないので、あくまでも当サイトでの判断基準の一つとしてご覧ください。
令和二年(2020年)歌舞伎の舞台出演ランキング
上記の内容でポイントを集計した結果は以下のようになりました。
2020年歌舞伎出演ランキング | ||
---|---|---|
1 | 松本幸四郎 | 48P |
2 | 中村勘九郎 | 34P |
3 | 市川猿之助 | 32P |
4 | 中村芝翫 | 29P |
5 | 片岡孝太郎 | 28P |
6 | 市川海老蔵 | 27P |
7 | 中村七之助 | 26P |
8 | 松本白鸚 | 25P |
8 | 中村壱太郎 | 25P |
10 | 坂東玉三郎 | 23P |
10 | 中村梅玉 | 23P |
12 | 中村魁春 | 21P |
13 | 片岡仁左衛門 | 20P |
13 | 中村雀右衛門 | 20P |
13 | 片岡愛之助 | 20P |
16 | 中村児太郎 | 19P |
17 | 中村吉右衛門 | 18P |
17 | 尾上右近 | 18P |
19 | 中村莟玉 | 17P |
20 | 市川猿弥 | 16P |
20 | 中村隼人 | 16P |
2020年の歌舞伎出演ランキングは上記のようになりましたが、いかがでしょうか?
1〜3位の松本幸四郎、中村勘九郎、市川猿之助の三人は、自粛期間中も積極的に歌舞伎の動画配信やテレビ出演などもこなしており、順当な順位と言えそうです。
女形役者として最高位の5位に入った片岡孝太郎は、新型コロナウイルスに感染して休演したりと一時は心配されましたが、中堅の女形として貴重な存在だということがわかります。
6位の市川海老蔵は、本来ならば市川團十郎白猿襲名披露で2020年の歌舞伎界の主役になるはずでしたが、襲名の延期が大きく響いているようです。
歌舞伎座で主役を務めることが多い幹部クラスの役者は順当にランキング入りしていますが、尾上菊五郎(14P)、尾上菊之助(14P)ともに1,2月の歌舞伎座での出演がなかったことから20位以下という結果になりました。
この顔ぶれを見た時に新鮮なのが、19位の中村莟玉と20位の市川猿弥でしょうか。
中村莟玉は2019年11月に襲名したばかりで、2020年は襲名のご祝儀もあってか比較的大きな役を務めることが多かったようです。市川猿弥は図夢歌舞伎で口上人形を務めた後、歌舞伎座で8,11,12月と出演し、貴重な脇役として存在感を示しました。
2020年の歌舞伎界は、本来の形での公演はできませんでしたが、そんな中でも歌舞伎の存続を真剣に考えて、新しい試みに積極的に取り組む役者が注目された一年だったのではないでしょうか。
令和三年(2021年)期待の歌舞伎役者ランキング
2020年の歌舞伎の舞台出演ランキングを踏まえて、2021年にも活躍が期待される歌舞伎役者を紹介していきます。
新型コロナウイルスの感染拡大が未だ収まらない中、ベテランの幹部俳優が出演しにくい状況は続いています。その分、中堅から若手の役者に期待がかかりますね。
松本幸四郎 〜歌舞伎界のアイデアマン〜
2020年に一番歌舞伎の舞台で活躍したと言えるのが、松本幸四郎です。
3月からの公演自粛を受けて、いち早く舞台上でのソーシャルディスタンスを保った演出を取り入れた「図夢歌舞伎」を立ち上げます。単なる舞台映像ではなく、別々の場所で撮影した映像で舞台を作り上げるという新たな試みは注目を集めました。
また、テレビ番組にも積極的に出演し、「幸四郎と踊ろうプロジェクト」では、リモートで多くの踊り手たちと一緒に踊るという、これまた前代未聞の演出で、歌舞伎だけでなく舞台が中止になった日本舞踊などの踊り手たちにも活躍の場を提供しています。
歌舞伎座が再開した8月公演では中心的な立場で「与話情浮名横櫛」の与三郎、9月公演では「色彩間苅豆」の与右衛門と連続して主役を務め、10月の国立劇場では、芝居ができない状況を描いた新作歌舞伎「幸希芝居遊」を披露し、12月には早くも図夢歌舞伎の第二弾となる、これまた疫病が流行る世界をテーマにした「弥次喜多」をAmazonプライムビデオで公開しています。
次々と新しい歌舞伎のスタイルを打ち出して、すぐに実行に移していくのは、まさに「歌舞伎界のアイデアマン」の面目躍如といったところでしょうか。
しかし、その裏には芝居ができないことへの大きな苦悩を抱えていたようで、第一弾の図夢歌舞伎の上演後のアフタートークでは、感極まって涙ぐむ姿を見せています。
2021年は1月の歌舞伎座で、「菅原伝授手習鑑 〜車引〜」の梅王丸を演じ、父・白鸚が松王丸、息子・染五郎が桜丸と親子三代の共演で幕を開けます。
今年の幸四郎は、どんな驚きのアイデアを見せてくれるのかとても楽しみですね。
中村勘九郎・七之助 〜中村屋ファミリーの底力〜
中村屋の勘九郎・七之助兄弟も、2020年は毎年恒例だった中村屋の巡業がすべてキャンセルになるという状況に陥ります。
2019年の勘九郎はNHK大河ドラマの撮影に追われ歌舞伎に専念できませんでしたが、2020年からは再び本腰を入れて歌舞伎に取り組むことになるはずでした。ところが3月からの公演中止の決定は、完全に足元をすくわれた形になってしまいます。
しかし、緊急事態宣言が解除されてから中村屋はファミリーの結束力を見せ始めます。
7月には浅草公会堂で無観客ライブ配信を行い、9月には浅草寺の野外特設舞台で、雨が降りしきる中にもかかわらず「連獅子」をライブ配信し、多くの歌舞伎ファンが視聴しながらネットの書き込みで参加しました。
8月の歌舞伎座再開公演には、勘九郎・七之助ともに主要な役で出演し、中村屋の存在感を見せつけています。
勘九郎は自粛期間に二人の息子、勘太郎・長三郎と共に過ごす時間が多く、つきっきりで稽古をつけることができた貴重な期間だったと振り返っています。
2021年の勘九郎・七之助は2月の歌舞伎座からの出演になりますが、勘九郎と長男・勘太郎が自粛期間に稽古をした「連獅子」が早速披露されることになっています。
逆境をバネにして更に飛躍が期待される2021年の中村屋ファミリーに注目です。
市川猿之助 〜歌舞伎の異端児の次の一手は?〜
2020年に最も注目を集めた歌舞伎役者と言えば、市川猿之助で間違いありません。
と言っても歌舞伎の舞台ではなく、大ヒットドラマ「半沢直樹」で注目されてから、連日のようにテレビのバラエティ番組に出演し続けたことです。
半沢直樹での演技をネタにするだけでなく、クイズ番組での博識ぶりや、トーク番組で歌舞伎の裏話を面白おかしく話したり、趣味の骨董品のコレクションを披露し、果てはキャスターまで務めるなど・・・その多才ぶりを遺憾なく発揮しています。
しかし、その裏には休演で苦しむ歌舞伎界のためになんとかしなければという思いが強かったようで、歌舞伎再開後はテレビ出演では常に公演の宣伝をしています。
実際に猿之助が出演する歌舞伎の舞台は注目を集め、それまで歌舞伎を見たことがなかった人も含めて、多くの観客を呼び込んでいます。
松本幸四郎の図夢歌舞伎にも出演し、第二弾となる「弥次喜多」では出演だけでなく監督も務めている猿之助ですが、2021年は1月から歌舞伎座に出演し、澤瀉屋の家の芸でもある「悪太郎」でのスタートになります。
2020年は歌舞伎の異端児ぶりを存分に発揮した猿之助が、2021年に本来の歌舞伎役者としてどのような舞台を見せてくれるのか期待されます。
市川海老蔵 〜團十郎襲名こそ歌舞伎の復活〜
2020年は市川團十郎白猿襲名という歴史的大イベントの主役となるはずが、コロナ禍によって襲名が延期され、もっとも割りを食ってしまったのが市川海老蔵です。
歌舞伎座での出演もないまま一年が過ぎてしまいましたが、自粛期間後には自主公演である「古典への誘い」「市川海老蔵特別公演」を各地で行い、歌舞伎の舞台を存続する姿勢を見せており、私生活では、Youtubeで公式チャンネル「EBIZO TV」を新たに開設し、子どもたちとのたわいない日常を面白おかしく配信するなど、公演ができない中でもファンとの交流を大切にしている様子が伺えます。
とは言え、「歌舞伎界の宗家」とも呼ばれる市川團十郎の名跡が歌舞伎座の舞台に帰ってくることが、現在の歌舞伎の苦境を一気にひっくり返す最大のカンフル剤になることは間違いありません。
一日も早い、「市川團十郎白猿」の襲名披露公演の実現を願いたいですね。
中村芝翫 〜息子三人とともに飛躍する〜
2020年は1月の歌舞伎座から立役として貫禄のある役どころを多く務め、舞台での存在感を増してきた中村芝翫ですが、3月からの公演自粛以降は、昔からの思い入れの強い時代劇「十三人の刺客」に出演するなど、バラエティ番組で活躍する他の役者とはちがう、古風な立役としてのイメージを維持しています。
歌舞伎再開後は時代物だけでなく世話物でも主役を務め、大役を務めるような大柄な立役役者が年齢的に感染リスクを避けて出演しにくい状況では、貴重な存在となっているようです。
そして、なんと言っても芝翫の三人の息子(橋之助・福之助・歌之助)が父親を支えるような役者として成長してきたのが大きく、これからの成駒屋一門だけでなく、歌舞伎界を支える役者一家として期待されます。
片岡孝太郎・中村壱太郎・中村児太郎 〜期待の女形〜
女形と言えば長らく坂東玉三郎がトップでしたが、昨年末から単独や少人数の舞踊出演が多くなり、徐々に芝居での出演が少なくなることも予想されます。
そんな中、2020年の芝居でもっとも女形の大役を多く務めたのが片岡孝太郎です。新型コロナウイルスへの感染が発覚して休演するということもありましたが大事には至らず、抜群の演技力は健在で、今後はさらに女形の大役を務めることになりそうです。
自粛期間に「ART歌舞伎」の配信などで存在感を発揮したのが中村壱太郎です。2020年末には偉大な祖父・坂田藤十郎を亡くすという悲しみを味わいますが、その分上方歌舞伎の女形としての責任も大きくなります。2021年最初の舞台は立役の曽我十郎からのスタートというのは少し意外な感じもしますが、また違う魅力を発見できるかもしれませんね。
2021年のスタートは壱太郎と同じ舞台で、女形・静御前を務めるのが中村児太郎です。2020年は市川海老蔵特別公演で重要な役を務めました。玉三郎から直接指導を受けるなど将来の立女形としての期待値も高い、今後が楽しみな女形役者です。
尾上菊之助 〜歌舞伎名門の復活に期待〜
2020年は市川團十郎襲名公演で重要な役を演じる予定だった尾上菊之助ですが、海老蔵同様、襲名延期の影響を大きく受けました。2019年末に新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を発表し大きな話題になりましたが、コロナ禍では出演者が多い通しの大作の演目は上演されず、不本意な一年だったと言えるかもしれません。
歌舞伎再開後は9月から毎月舞台に立っており、2021年は例年1月に行われる国立劇場を舞台にした菊五郎劇団の公演でのスタートになりますが、名門一族がコロナ禍を乗り越えてどう巻き返してくるのか楽しみです。
メディア出演で歌舞伎を盛り上げる役者達
2020年の歌舞伎の舞台での出演はそれほど多くなかったものの、テレビやネットの動画配信などで活躍した歌舞伎役者を紹介します。
尾上右近は以前からテレビのバラエティ出演も多く、カレー好きやマザコンキャラなど、その独特な個性で人気の役者です。自粛期間には中村壱太郎とともに「ART歌舞伎」で幻想的な舞踊を披露しました。
テレビでは松本幸四郎や市川猿之助の後輩キャラとして先輩たちの裏話を暴露したりもしていますが、自主公演の「研の会」をクリスマスに開催するなど、人気役者としてファンの期待に応えています。
尾上松也は2020年はほとんど歌舞伎の舞台に立ってはいませんが、猿之助らとともに「半沢直樹」に出演するなどテレビでの活躍が目立ちました。
2021年は例年出演していた浅草歌舞伎は行われませんが、代わりに歌舞伎座の最初の演目「壽浅草柱建」のトップとして登場し、3月には初主演となる映画「すくってごらん」が公開予定となっています。歌舞伎だけでないマルチな活躍にも注目です。
ニコニコ超歌舞伎での初音ミクとの共演が話題の中村獅童は、2020年8月には無観客での超歌舞伎を開催し、ネット上で23万5千人もの観客を熱狂させました。
再開後の歌舞伎座では若手役者たちを相手に「四の切」で狐忠信を演じて歌舞伎の次世代をリードする一人であると印象付け、私生活ではYoutubeチャンネルを開設して二人目の男の子が生まれたことを公表しています。子どもが増えたことも発奮材料にして、さらなる活躍が期待される役者です。
まとめ:2021年の歌舞伎は世代交代が進むか!?
令和三年(2021年)の歌舞伎界はまだまだ感染症予防対策が必要な中でのスタートになりますが、昨年の苦しい経験を乗り越えた歌舞伎役者達によって、これまで以上に魅力的なものになっていくことが期待されます。
中でも松本幸四郎、中村勘九郎、市川猿之助など、自粛期間にも歌舞伎の存続のために奮闘したメンバーを中心とした新しい歌舞伎の見せ方にも注目です。
また、襲名が延期されている市川海老蔵や、「風の谷のナウシカ」など大作の新作歌舞伎を打ち出してきた尾上菊之助といった、歌舞伎の名門役者たちがどのような舞台を見せてくれるのかも気になります。
人間国宝級のベテラン役者たちは、坂田藤十郎が亡くなったことに象徴されるように、第一線で活躍できる時間も限られてくることが予想され、世代交代が大きく進むかもしれません。
しかし何よりも、一年を通して無事に歌舞伎の公演が行われることを心から願って、今年の歌舞伎の舞台を楽しんでくださいね。