新作歌舞伎「刀剣乱舞」が熱い!登場する刀やあらすじを徹底解説
令和5年(2023)7月、新作歌舞伎「刀剣乱舞 ー月刀剣縁桐ー」が新橋演舞場で公開されました。
世界的に人気のあるゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」の初歌舞伎化として大きな話題を呼んだ演目ですが、この舞台に登場する歌舞伎にも関連する刀や物語のあらすじ、配役などを解説します。
歌舞伎としての「刀剣乱舞」について、また歌舞伎と“刀”の関わりについてもっと知りたい人はぜひ御覧ください。
目 次
新作歌舞伎「刀剣乱舞」とは?
新作歌舞伎「刀剣乱舞」の元になったのは、2015年に公開されたオンラインゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」です。実在の日本刀から生み出された“付喪神”(長い年月を経た道具などに霊魂が宿ったもの)である、“刀剣男子”たちが歴史上の戦いを舞台に活躍するというゲームですが、イケメンキャラクターたちに多くの女子が夢中になり、実際の刀剣も好きな“刀剣女子”という言葉も生み出すほどブームになりました。これまで、ミュージカルや演劇、アニメ、映画など数々のジャンルが作られましたが、ついに新作歌舞伎として上演されることになります。
タイトルを略して「とうらぶ歌舞伎」とも呼ばれる今回の舞台ですが、歌舞伎化するにあたって中心となったのは、今回の企画・主演そして初の演出にも挑戦する尾上松也。メインの刀剣男士には若手歌舞伎俳優を起用しながら、人間国宝でもある中村梅玉や元歌舞伎俳優で新派俳優の河合雪之丞も出演するなど配役にも工夫が見られます。
松也が「今までにありそうで、見たことのなかった古典歌舞伎」と言う新作歌舞伎「刀剣乱舞」の配役とあらすじを以下に紹介します。
「刀剣乱舞」の配役
新作歌舞伎「刀剣乱舞」に登場する主なキャラクターを紹介します。
三日月宗近 |
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今回の舞台の刀剣男士たちのリーダー。冷静で落ち着いた佇まいの中にすべてを見通す力を持ち、他のメンバーからの信頼も厚い。任務を遂行することで、かつての主である足利義輝の最期を見届けなければならないことに葛藤を感じるのは愛情の深さゆえ。【初演:尾上松也】 >>三日月宗近のビジュアルはコチラ |
小狐丸 |
その名の通り白い狐を思わせる風貌で、人懐っこい性格ながら戦闘時は獣らしい野性味を発揮する。冷静な三日月宗近とは対象的に賑やかで場を盛り上げるタイプ。【初演:尾上右近】 >>小狐丸のビジュアルはコチラ |
同田貫正国 |
男らしく強さを追い求める真っ直ぐで無骨な性格。強さへのこだわりは、美しさを讃えられる他の刀剣に対する意地のような部分でもある。【初演:中村鷹之資】 >>同田貫正国のビジュアルはコチラ |
髭切 |
普段はほんわかして細かいことには頓着しないが、戦いになると積極的で、特に妖(あやかし)にたいして絶大な威力を発揮する。膝丸は弟だがよく名前を忘れる。【初演:中村莟玉】 >>髭切のビジュアルはコチラ |
膝丸 |
兄・髭切と比べて感情的で血気盛んだが、根は真面目でまっすぐな性格。兄同様、妖(あやかし)退治を得意としている。兄に忘れられて落ち込むがすぐ立ち直る。【初演:上村吉太朗】 >>膝丸のビジュアルはコチラ |
小烏丸 |
今回の刀剣男士メンバーの中ではもっとも女性的な側面を持つが、実は他の刀剣男士たちの父のような存在で他のメンバーを子供のように思っている。でも年寄り扱いされると怒る。【初演:河合雪之丞】 >>小烏丸のビジュアルはコチラ |
足利義輝 |
足利幕府第十三代将軍。将軍になる前は菊幢丸(きくどうまる)と名乗っている。温和な性格だったが孤独な立場でもある。刀剣男士「三日月宗近」の存在は数少ない心の支えになっていたが、異界の者たちにつけこまれ暴君へと変貌する。将軍ながら剣の達人でもあり、三日月宗近を始め多くの名刀を保有する。【初演:尾上右近】 |
義輝妹紅梅姫 |
義輝の妹。将軍になる前の落ちぶれた兄を支えていた。三日月宗近に対して淡い恋心を抱いている。【初演:中村莟玉】 |
松永弾正 |
義輝に忠義を尽くす家臣だが、暴君に変貌した義輝により不当な扱いを受けることになり、最後は義輝を討つために挙兵する。歌舞伎では悪役として登場することが多い人物だが、今回は主君を思う忠臣として描かれている。【初演:中村梅玉】 >>松永弾正のビジュアルはコチラ |
松永久直 |
弾正の息子。歴史改変をふせぐために、父・弾正を命をかけて説得する。【初演:中村鷹之資】 |
異界の翁(おきな)と嫗(おうな) |
義輝を自分たちの意のままにあやつり日の本の支配を企む異界の者たち。翁は果心居士、嫗は雲居姫に化けて義輝に取り入る。正体は戦乱で命を落とし足利の世を恨む民たちの怨念。【初演:澤村國矢、市川蔦之助】 |
時間遡行軍 |
未来から過去に戻って歴史を改変しようとする軍勢。 |
審神者(さにわ) |
古代の神道の祭祀において神託を受け神意を解釈して伝える者のことだが、ここでは刀剣男士たちの主であり歴史を守ろうとする者、舞台には声だけの登場。ゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」ではゲームプレイヤーのことであり、舞台では観客も審神者となる。【初演時声:中村獅童】 |
「刀剣乱舞」のあらすじ
現代より未来の世界である2205年では、日本の歴史を改変しようとする勢力が存在しました。彼らは「時間遡行軍」を編成して過去の日本に送り込み、足利義輝を生き長らえさせて戦国時代の到来を遅らせるため、義輝を暗殺した松永弾正の殺害を目論んでいます。
彼らに対抗し歴史改変を防ぐために、審神者は自らの配下の付喪神・刀剣男子に、義輝や弾正が存在していた永禄年間に戻ることを命じます。
今回命を受けた刀剣男子は、三日月宗近、小烏丸、髭切、膝丸、同田貫正国、小狐丸の六振り。
時代は応仁の乱の後の日本。度重なる戦乱で権威が失墜した足利家の時期将軍、足利菊幢丸(義輝)と妹の紅梅姫が志賀の寂れた寺で過ごしています。そこへ突然、時間遡行軍の兵士たちが襲いかかってきますが、彼らが狙っている松永弾正がその場にいないことを知り慌てていると、刀剣男士たちが駆けつけ瞬く間に撃退します。
窮地を救われた菊幢丸が宗近たちに自らの家臣になってくれと頼むと、宗近は家臣にはなれないが側で見守ることを約束し、近いうちに菊幢丸が将軍となると予言します。そこへ現れた松永弾正が将軍宣下の式の準備が整ったことを告げると、菊幢丸は京の都に向かって旅立ちます。
同じ頃、足利の世に恨みを抱く異界の翁と嫗は、将軍を操って日本を我が物とするために時間遡行軍と結託し、さらに魔物の“禍獣”を蘇らせ、その力で自らの妖力を復活させると菊幢丸に呪いをかけます。
菊幢丸の元服式と十三代足利将軍の宣下の宴が行われているところへ、時間遡行軍が弾正の命を狙って襲撃してきますが、再び刀剣男士たちによって阻止されます。しかし、同時に義輝の体に異変が起こり始めます。
呪いによって病の床に伏せている義輝は、祈祷師の果心居士を呼び出します。異界の翁が化けた果心居士は瞬く間に義輝の病を治すと、生真面目な義輝には拠り所となる女性が必要と説き、異界の嫗が化けた雲居姫を紹介します。
異界の翁の目論見どおり、義輝は雲居姫と果心居士の言いなりになり、暴君として振る舞うようになってしまいます。ついには忠臣である弾正に謀反の疑いをかけ謹慎させ、その息子の久直の額を雲居姫に割らせて屈辱を与えます。
そこに現れた三日月宗近が義輝の蛮行を止めようとすると、義輝は宗近を切ろうと刀を振り上げますがどうしても切れません。義輝たちがその場を去ると、残った宗近は久直に自分たち刀剣男士の正体と目的を明かし、弾正が挙兵して義輝を討つことが歴史を守ることだと打ち明けると、久直は宗近の言葉を信じて父・弾正の元へと向かいます。
弾正は乱心した義輝を諫めるために食事も取らずに部屋にこもっていると、やってきた久直は宗近たちの目的を伝え、義輝を討つために挙兵するようにと訴えます。主君を討つなどとんでもないと弾正は受け入れませんが、久直がすでに腹を切り命をかけて訴えているのを見て挙兵の覚悟を固めます。
一方、刀剣男士たちは果心居士と雲居姫を追い詰めますが、二人は“禍獣”を呼び出し刀剣男子たちと激しく戦います。死闘の末、小烏丸の術によって“禍獣”を封印することに成功すると、妖力を失って異界の翁と嫗に戻った二人は逃げていきます。刀剣男士たちは現れた時間遡行軍と戦いますが、宗近は一人義輝の元へと向かいます。
弾正の起こした謀反によって義輝は追い詰められますが、所持する数多くの名刀を次々と取り替えながら孤軍奮闘し、助けを求めてやってきた異界の翁と嫗も切り捨てます。すると、それまでの呪縛がとけて元の義輝に戻り、そこに宗近が現れます。
対峙する義輝と宗近は、かつてのような穏やかな気持で語り合いますが、宗近が歴史を守るために義輝を切らなければならないと言うと、義輝もそれに応えて最後の闘いが始まります。
心の奥では通じ合っている二人はしばし舞うように刀を合わせますが、ついに宗近の刀が義輝を貫き、義輝は自らの運命を全て受け入れて倒れます。
全ての任務を終えた刀剣男子たちは、弾正に別れを告げて元の時代へと帰っていくのでした。
見どころは歌舞伎ならではの演出!
新作歌舞伎「刀剣乱舞」には、歌舞伎ならではという見どころが溢れています。
まず、登場する刀剣男士たちの衣装ですが、原作の雰囲気を守りつつ、それぞれ古典歌舞伎に登場するような和装に変えられています。たとえば髭切は原作ゲームでは以下の動画のような完全な洋装のキャラクターですが、和装の羽織を袖を通さず肩にかけ、髪型も色は同じですが前髪立ちの歌舞伎の若衆のようになっています。
【原作の「髭切」ビジュアル参考】
そして実際の舞台では随所に古典歌舞伎の演出が見られました。
プロローグで刀剣男士たちが登場する場面では、六人が次々と自己紹介をしていきますが、これは歌舞伎演目「白浪五人男」の「稲瀬川勢ぞろいの場」で有名な“つらね”と言われるものです。
異界の翁と嫗が禍獣を目覚めさせ、その妖力で若い姿に戻る場面では、衣装を一瞬で替える“引き抜き”という演出が使われています。
宗近に敗れた義輝が最期に後ろ向きに崖から落ちていきますが、この場面は「義経千本桜 大物浦」という歌舞伎演目で平知盛が最期に後ろ向きに海に飛び込む場面とよく似ています。
刀剣男士たちが竹本の演奏で華やかに歌舞伎の踊りを披露する場面もあり、松永久直が屋敷の畳の上で父・松永弾正に命をかけて訴える場面はまさに歌舞伎そのものの場面になります。
また、今回「小狐丸と義輝」、「髭切と紅梅姫」の二役を同じ役者が演じているので、刀剣男士たちが全員が揃わない場面が何度かありました。このことを劇中で「なぜ小狐丸と髭切は時々いなくなるのか?」と指摘して笑いを取るような場面もありますが、歌舞伎ではよくある二役の出演を、歌舞伎を初めて見るようなお客さんに「歌舞伎とはこういうものだ」と理解してもらうためのちょっとしたサービスですね。
歌舞伎では普通カーテンコールはありませんが、今回はプロローグからカーテンコールを予告しており、そのとき「大向う」をかけたり写真撮影も許可されるなどのサービスもありました。今後、他の歌舞伎公演でもこういうファンサービスは広がって行くのでしょうか?
ゲームの名セリフも登場
オンラインゲーム刀剣乱舞のキャラクターにはそれぞれゲーム内での決めセリフがありますが、歌舞伎でもところどころにキャラクター特有のセリフが入れられています。
【三日月宗近】
「はっはっはっはっは、よきかなよきかな」
「一騎打ちとは古風よのう」
【同田貫正国】
「とっとと戦場に行こうぜ」
「武器は強いかどうか・・・たたっ斬ってやる!」
【髭切】
「ありゃ?もう始まるのかい?」
「弟の…う~んと、なんだったかな。ええと…まあ名前はど忘れしたけど…」
【膝丸】
「俺に任せておけ」
「兄者が、また俺の名前を忘れていてな。……いや、泣いてはない。泣いてはないぞ!」
【小狐丸】
「ぬしさまが戻られましたか」
【小烏丸】
「刀剣乱舞、始めるとしよう」
以上のようにゲーム中で使われるセリフがところどころに使われており、元々のゲーム刀剣乱舞ファンであれば思わずニヤッとしてしまうのではないでしょうか。
古典歌舞伎としての演出だけでなく、原作ファンであればわかる楽しみも隠された作品となっているのです。
物語の最後に三日月宗近が舞台中央で客席に向かって刀を振る場面がありますが、ここで尾上松也は“刀”の文字になるように振っています。今後も古典歌舞伎と呼ばれるように受け継がれてほしいという、「刀剣乱舞」への思い入れの強さを感じさせますね。
なぜ「刀剣乱舞」を歌舞伎にしたのか?
大ヒットゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」が歌舞伎化されたのはなぜでしょうか?
これまでも人気漫画やゲームを原作にした新作歌舞伎は作られてきました。「ワンピース」(2015)、「NARUTO」(2018)、「風の谷のナウシカ」(2019)、「新選組」(2022)、「ファイナルファンタジーⅩ」(2023)などがあります。他にも絵本を原作とした「あらしのよるに」(2015)、「プペル」(2022)や、バーチャルシンガー初音ミクが出演する「超歌舞伎」(2016)、映画「リング」とのコラボレーションとなる「日本怪談歌舞伎」(2022)などもありますが、それぞれ広く親しまれて人気のある作品ばかりです。
「歌舞伎」は伝統芸能とは言え、“興行”ですからお客さんを集めることができなければ話にならないので、有名作品の歌舞伎化は当然の選択と言えます。「新選組」は漫画としての知名度は高くないですが、漫画の神様・手塚治虫の作品ということと、“新選組”自体の知名度が高いので作品化しやすかったのではないでしょうか?
2015年から始まったゲーム「刀剣乱舞 ONLINE」も、現在は世界的にも有名なゲームとなっており、人気・知名度ともに申し分ありませんから、歌舞伎の興行としても充分に成立すると考えられます。
しかし、歌舞伎化にあたって企画した尾上松也は以下のようにも語っています。
松也としては、「刀剣乱舞」が人気のコンテンツである以上に、新作歌舞伎であっても王道の古典歌舞伎となっていける作品と見ているようです。
江戸時代から歌舞伎は人形浄瑠璃や落語の人気作を次々に歌舞伎化しており、その中で評判が良かった作品が何度も再演され現在も古典歌舞伎として上演され続けています。
と尾上松也は語っていますが、今後どうなっていくでしょうか?
刀と歌舞伎の切っても切れない関係
新作歌舞伎「刀剣乱舞」には六振の刀が登場しますが、それぞれ歌舞伎の演目と関係があるものが選ばれているようですね。六振の刀と歌舞伎との関わりについて紹介します。
三日月宗近(みかづきむねちか)
平安時代に刀工・三条宗近によって作られたとされる太刀(たち)。天下五剣と呼ばれる名刀の一つとされ、その中でも最も美しいと称される刀。刀身に打たれた刃文が三日月型になっているのが名前の由来とされる。新作歌舞伎「刀剣乱舞」では足利義輝が最初の所有者として描かれている。
歌舞伎では作者である三条宗近が登場する「小鍛冶」という演目がある。
現在、三日月宗近は国立博物館に国宝として所蔵されており、京都の粟田神社の境内には三条宗近を祀る鍛冶神社が存在している。
小狐丸(こぎつねまる)
三日月宗近と同じく刀工・三条宗近の作だが、同名の刀が複数存在している。歌舞伎演目「小鍛冶」は、別名“小鍛冶宗近”と呼ばれた三条宗近がこの刀を作るときに稲荷明神の力を借りて完成させたことから「小狐丸」と命名したという物語。
現在、大阪の石切剣箭神社に宗近作と言われる小狐丸が所蔵されており、4月と10月の例大祭のとき一般公開されている。奈良県の石上神宮にも同名の刀が存在するが、こちらは宗近作ではないとされる。
同田貫正国(どうだぬきまさくに)
九州肥後(現在の熊本県)の菊池に同田貫という地名があり、そこで室町時代末期から活躍した刀工集団が同田貫。刀剣乱舞では、肥後の藩主だった加藤清正から“正”の一字を授かったとされる「同田貫藤原正国」のことを指す。
他の五振は刃を下に向けて腰から紐で吊るす太刀(たち)と呼ばれる刀だが、同田貫正国は刃を上に向けた状態で腰帯に指す打刀(うちがたな)となっている。また、装飾要素が一切なく実践での強さと切れ味を追求した、「折れず曲がらずの刀」となっているが、明治天皇の御前で兜を割った「天覧兜割り」でその刀としての強さが証明された。
現在、各地に「同田貫」の刀は存在しているが、熊本の本妙寺、玉名市博物館、福岡の九州国立博物館などが有名。
髭切(ひげきり)
罪人を試し切りしたとき髭まで切れたことから、「髭切(ひげきり)」と呼ばれる。 清和源氏の二代目・源満仲が、「天下を治めるためには良い刀を持たなければならない」ということで二振り作らせた刀の一つ。もう一つは兄弟刀・膝丸。この刀を持つことが源氏の棟梁の証とされ、源氏代々の重宝として受け継がれてきた。
平安時代に渡辺綱がこの刀で鬼を切ったとされることから「鬼切丸(おにきりまる)」とも呼ばれ、歌舞伎では「戻橋」でその時の様子が描かれている。また、歌舞伎では有名な曽我兄弟が探している刀「友切丸(ともきりまる)」も髭切のことであり、「助六由縁江戸桜」「寿曽我対面」などで友切丸の話が登場する。
現在、髭切は京都の北野天満宮に重要文化財として所蔵され、2023年7月7日〜9月10日まで一般に公開されている。兵庫県の多田神社の宝物殿に所蔵されている髭切は2021年5月に一般公開された。
膝丸(ひざまる)
「名品の来歴 幻の刀“膝丸”が語る1000年」(NHK BSプレミアム)
髭切の兄弟刀として作られた太刀であり、髭切同様こちらも源氏の重宝とされてきた。罪人を試し切りしたとき膝まで切れたことから「膝丸(ひざまる)」の名がつく。ほのかな緑色をした刀身から「薄緑(うすみどり)」とも呼ばれる。
歌舞伎演目「土蜘」では、源頼光が家臣に命じて禍の元凶だった土蜘蛛を退治する物語が描かれており、このとき土蜘蛛を切った膝丸は「蜘蛛切(くもきり)」と呼ばれるようになった。北野天満宮隣の北野東向観音寺には、土蜘蛛を膝丸が退治したときに塚から出てきたとされる灯籠の火袋(灯りが入る部分)が祀られている。
現在、膝丸は京都・大覚寺に重要文化財として所蔵され一般には公開されていないが、2020年秋に一般公開され、2023年10月にも特別公開された。また、神奈川県・箱根神社の宝物殿にも膝丸が所蔵されており、一般に公開されている。
小烏丸(こがらすまる)
平安時代中期に伝説の刀工・天国(あまくに)によって作られたとされる太刀。日本刀特有の刀身の反りができていく過渡期に作られたとされる刀で、上半身にはほとんど反りがなくなっている。
名前の由来は、桓武天皇の元に伊勢神宮の使いとして来た大きな三本足の烏がもたらしたという伝承から。将門の乱を鎮圧した平貞盛が天皇から拝領した刀として平家の重宝として伝えられていたが、現在は皇室御物となっている。
歌舞伎演目「紅葉狩」では、平貞盛の子孫・平維盛が戸隠山の鬼女と闘う場面で小烏丸が登場する。
「刀剣乱舞」がネットで炎上!?
人気オンラインゲームの初の歌舞伎化であり、出演役者も若い女性層にも人気の高い役者を揃えて公演前から話題になっていた新作歌舞伎「刀剣乱舞」ですが、実はネット上では他のことでも話題になっていたようです。
>>尾上松也『刀剣乱舞』歌舞伎が「騙し討ち」「ドブ席」「ハズレくじ」チケット販売方法を巡って大炎上「先行より一般が良席」業界特有の“ルール”に困惑の声が殺到
週刊誌の見出しは大げさに書くものなので、実際のところはわかりにくいですが、ツイッター上などでは元々の「刀剣乱舞」ファンからのチケット販売に対する不満の声が上がっていたようです。
簡単に説明すると、ゲーム「刀剣乱舞オンライン」のファンクラブなどの先行販売で購入した席が後ろや端のほうのあまりいい席ではなかったのに、後から一般販売された席や松竹のチケット販売サイトなどでもっといい席が余っていたことに対して納得いかないとのこと。
週刊誌報道の内容には、「歌舞伎の公演では“売れ残りやすい席を、せめてそのぶん早く確保できるよう先行販売する”という通例があります。」となっています。
通常の歌舞伎公演のチケットを“チケットweb松竹”で購入すれば、とくに座席を制限されているようには感じませんが、今回のような歌舞伎とは別のファンクラブ先行販売が行われるような場合は、座席の割り振りに不公平を感じないような形を考えていく必要があるのかもしれませんね。
「刀剣乱舞」の再演は?
尾上松也が「古典歌舞伎として受け継がれてほしい」と願う「刀剣乱舞」ですが、今後の再演の可能性はあるのでしょうか?
近年の漫画やゲームなどの新作歌舞伎の状況を見てみると、スーパー歌舞伎セカンド「ワンピース」は、初演から3年間で6回上演されました。「ナルト」は2回上演されましたが、予定されていた3回目の公演はコロナ禍で中止されてしまいました。コロナ禍がなければどちらももっと再演されていたかもしれませんが、いずれも歌舞伎座での上演はされていません。
古典歌舞伎として長く愛される演目になるためには、やはり歌舞伎の本丸といえる歌舞伎座での上演ができるかどうかがポイントになるかもしれませんが、初演が歌舞伎座だった「新選組」を除くと、歌舞伎座での再演がなされたのは「あらしのよるに」、「風の谷のナウシカ」と、2023年12月に上演された「超歌舞伎」となります。
もちろん、人気がなければ再演自体が難しくなってしまいますが、今回の「刀剣乱舞」は室町時代を舞台とした時代物として往年の歌舞伎ファンにとっても受け入れやすいテーマになっており、実際の舞台の評判も決して悪くありません。
ぜひとも歌舞伎座での再演を果たし、古典歌舞伎として愛される作品になってくれることを期待したいものです。
新作歌舞伎「刀剣乱舞」の上演情報
新作歌舞伎「刀剣乱舞」の上演情報を紹介します。
2023年7月 新橋演舞場
初演となった2023年7月の新橋演舞場での公演では六振りの刀剣男士が登場しました。三日月宗近(尾上松也)、小狐丸(尾上右近)、同田貫正国(中村鷹之資)、髭切(中村莟玉)、膝丸(上村吉太郎)、小烏丸(河合雪之丞)という配役で、松永弾正は中村梅玉が努めています。
サブタイトルは「月刀剣縁桐」となっており、主役である三日月宗近と“桐”を家紋に持つ足利義輝との因縁を表しています。
その他の配役などは以下の記事を御覧ください。
2024年4月5日 シネマ歌舞伎
全国の映画館で歌舞伎を楽しめる「シネマ歌舞伎」で2024年4月5日(金)に新作歌舞伎「刀剣乱舞」が登場します。舞台で見れなかった人ももう一度見たい人もぜひ御覧ください。
2024年4月 「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」衣裳展
2024年の4/13〜5/6の期間、京都南座で「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」で使用された衣裳展が開催され、衣裳や小道具等の展示やオリジナルグッズや貴重な台本も収録した豪華図録の販売も行われます。4/12にはプレオープン記念トークショーが行われ、尾上松也と尾上右近が登場します。
まとめ:「刀剣乱舞」の今後に期待!
新作歌舞伎「刀剣乱舞 ー月刀剣縁桐ー」は、大人気オンラインゲームを歌舞伎化したものですが、元のゲームの雰囲気を残しつつ、古典歌舞伎の要素をたくみに取り入れた作品です。
元々の刀剣乱舞ファンだけでなく従来の歌舞伎ファンにも楽しめる内容は、これからの歌舞伎の発展にも大きな意味のある作品になりそうです。
チケットの販売方法などで批判もありましたが、今後も再演されていくことで、いずれ古典歌舞伎として演じ続けられてほしいものですね。
参考資料
新作歌舞伎「刀剣乱舞」の記事に関する内容は、主に以下の資料やウェブサイトを参考にさせていただきました。
【書籍】
「新作歌舞伎 刀剣乱舞 月刀剣縁桐 筋書(公演プログラム)」
【ウェブサイト】
「新作歌舞伎『刀剣乱舞 ー月刀剣縁桐ー』公式サイト」
「DMMゲームズ 刀剣乱舞ONLINE」
「アニメ続『刀剣乱舞-花丸-』 公式サイト」
「刀剣乱舞(とうらぶ)セリフ・ボイス集 」
「刀剣乱舞攻略まとめWiki(とうらぶ)」
「刀剣ワールド」
「国立博物館 e国宝」
「石切剣箭神社」
「北野天満宮」
「多田神社」
「大覚寺」
「箱根神社」
「本妙寺」
「玉名市」
「九州国立博物館」
「週間女性プライム」
「歌舞伎オンザウェブ」
「歌舞伎美人」
「歌舞伎用語案内」
「Wikipedia」
【テレビ】
「新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』密着番組 前後編」(日テレプラス )
「あなたの知らない京都旅 〜1200年の物語〜 『右近・松也』が迫る日本人と刀」(BS朝日)
「名品の来歴 幻の刀“膝丸”が語る1000年」(NHK BSプレミアム )