歌舞伎の女形で人気の俳優は?魅力や化粧も紹介

歌舞伎の女形で人気の俳優は?魅力や化粧も紹介

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歌舞伎の最大の特徴と言ってもいいのが、男が女の役を演じる「女形おんながた」です。

女形は本当の女性より美しいと言われることもありますが、どうして女性が演じないのでしょうか?

ここでは女形の誕生の理由その美しさの秘密女形の有名な演目現在活躍している有名な女形の歌舞伎役者などを紹介します。

歌舞伎の女形の歴史

歴史のある歌舞伎の女形

歌舞伎で男が女を演じるようになったのは、江戸時代の寛永6年(1629年)に風紀の乱れを取り締まるために幕府が「女歌舞伎」を禁止したことが始まりです。

その後、女性に変わって美少年が演じる「若衆歌舞伎」が人気となりますが、やはり風紀の乱れから禁止され、成人の男だけで演じる「野郎歌舞伎」の中で女形という存在が確立されていきます。

当初は色気や見た目で興味を引くものでしたが、次第に演技で観客を魅了するものへとなっていき、江戸幕府がなくなった現代の時代にも女形の伝統は脈々と受け継がれ、さらに磨きがかけられているのです。

【達人メモ その1】
「女形」という字は本来は「女方」と書いて女を演じる役割としての意味がありました。「おやま」とも呼ばれますが、今はほぼ「おんながた」で統一され、「立女形(たておやま・女形のトップ)」「若女形(わかおやま・若い娘の役)」などの場合に「おやま」の呼び方を使います。

歌舞伎の女形の魅力

歌舞伎の女形の一番の魅力とは、なんと言っても「女性よりも女らしい」と言われる演技です。

男の役者が「どうやって女性らしさを表現するか」、を追求しながら女形の演技は発展してきました。

肩幅を狭く見せるために肩甲骨を寄せたり、歩くときは膝と膝を離さないように歩いたり、首の動きや指の動きで色気を表現するなど、姿形を女性らしく見えるように研究されています。

それだけでなく、心情的にも女性らしく見せるために、舞台上では男役を立てた控えめな演技が求められます。

歌舞伎の女形が本物以上に女らしく魅力的なのは、どこまでも可愛らしく優しく見せようとする歌舞伎役者の地道な研究と努力の積重ねがあるからなのです。

【歌舞伎役者】女形で人気のトップ俳優3選

歌舞伎の女形

歌舞伎の華とも言える女形ですが、演じることは役者においても決して簡単ではありません。

そんな難しい女形の役で、現在人気のある役者を3人紹介します。

坂東玉三郎

名実ともに現在の女形最高位の役者と言っていいのが、人間国宝でもある坂東玉三郎です。

歌舞伎役者に必要な、口跡(せりふの言い回し)、振り(踊りのしぐさ)、姿の3つの条件が揃った名女形としてあまりにも有名です。

立女形のような大役から、可愛らしい10代の少女の役までこなし、その美しさは見るものにため息をつかせます。

2019年の文化功労者にも選出され、まだまだ役者としての勢いは衰えません。

中村七之助

その美貌は本当の女性かと見紛うほどで、現代的な美しさとよく通る声で若手女形の中心的存在です。

兄の中村勘九郎とともに、父である故・中村勘三郎の芸をしっかりと受け継いだ切れの良い演技に定評があります。

おもに女形を演じるようになったのは20歳を過ぎてからで、女形の修練の中で体型も女らしくなってきたとか。

舞台での美しさは多くの歌舞伎女子を虜にするほど魅力的です。

中村梅枝

若手女形の有望株でしっかりと芸の基礎を持ち安定感も抜群、美しい中にも伝統を感じさせる容姿の女形・中村梅枝なかむらばいし

近年は玉三郎しか演じ手がいなかった難役「阿古屋あこや」を、同じく若手の有望株である中村児太郎とともに演じ、高い評価を受けました。

今後も女形としての活躍が期待される中村梅枝に注目です。

女形の有名な大役「三姫」

赤色が美しい衣装の赤姫

歌舞伎に登場するお姫様で時代物の中によく見られる、赤い着物を着た姫役を「赤姫」と言います。

赤い色は一途に恋に生きる情熱も表しています。

その中でも女形の至難の大役とされ「三姫」と呼ばれる、「本朝廿四孝ほんちょうにじゅうしこう」、「鎌倉三代記」、「金閣寺」の姫様を紹介します。

「本朝廿四孝」の八重垣姫は情熱的

八重垣姫は武田勝頼の許嫁ですが、その勝頼が切腹したと聞いて嘆き悲しみ、勝頼の姿絵を日々眺めながら自分を慰めていました。

そこに勝頼にそっくりの箕作みのさくという男が現れると、「今ここで自分をかわいがって」と言うほど、情熱的な愛情表現を見せます。

その箕作の生命が危ないと知ると、狐の精を自分にとりつかせ、宙を飛んで助けに行こうとする驚くべき行動力を見せます。

おとなしくじっと座っているような役が多い赤姫の中で、八重垣姫は情熱的で行動的なお姫様として稀有な存在なのです。

「鎌倉三代記」の時姫は行動派

北条時政の娘・時姫は、敵方の三浦之助の許嫁となり、病気で倒れている三浦之助の母親を看病していました。

戦が始まると父の時政は時姫に戻ってこいと使者をよこしますが、三浦之助を愛している時姫は帰ろうとしません。

ところが三浦之助は敵方の娘を許嫁とはできないので、もし夫婦になりたければ時姫の父・時政を暗殺しろと迫ります。

苦悩する時姫ですが、迷いぬいた末に「北条時政、討ってみしょう」と、恋しい人のために自らの父親を暗殺することを決意するのです。

戦国時代、女性は男性のいいなりで生きていたイメージがありますが、時姫は自分の意思を貫いて行動する現代的な女性像として描かれています。

「金閣寺」の雪姫は三姫唯一の人妻

天下の乗っ取りを企む松永大膳は、名人画家・雪舟の孫の雪姫と夫の直信を捕らえ、雪姫に龍の絵を描かなければ自分のものになれと迫ります。

大膳が父の仇であることを知った雪姫は、敵を討とうと切りかかりますが、失敗して縛り上げられてしまい、直信は処刑されるために処刑場へと連れて行かれてしまいます。

姫は嘆き悲しみながらも、祖父の雪舟が描いたネズミが実体となり、縄を噛み切ったという奇跡を思い出し、足元の桜の花びらをかき寄せ、爪先でネズミの絵を描きます。

すると、奇跡が起きてネズミが実体となって姫の縄を噛み切り、雪姫は愛する夫を助けに向かいます。

雪姫が裾を翻して爪先でネズミを描くシーンは、「爪先鼠つまさきねずみ」と呼ばれるエロティックな見せ場として有名です。

【達人メモ その2】
赤姫と呼ばれる三姫の一人でありながら、雪姫だけは赤い衣装ではなく桜色を着ています。これは赤い振り袖は処女を表すという原則があるので、人妻である雪姫は色を変えているのだと思われます。

女形が主役の有名な演目

男性が主役の内容が多い歌舞伎ですが、女形がメインで有名な演目を紹介します。

京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)〜女形の憧れの役

京鹿子娘道成寺の清姫

愛する男への恋心と嫉妬の思いで亡霊となった清姫が、道成寺の鐘の中に入って蛇の姿に変身するお話です。

女性の様々な思いを唄と踊りに乗せて表現するところは、女形の美しさと魅力が存分に発揮される見せ場です。

第四期歌舞伎座の閉場式では、最後を飾る演目として5人の女形によって華やかに演じられるほど、女形の代表的な演目として知られています。

阿古屋(あこや)〜難しい女形の役

平景清の愛人で遊女の阿古屋は、鎌倉幕府に景清の居場所を知っていると疑われますが、知らないと言い張るので拷問に掛けられることになります。

この拷問の内容が変わっていて、三味線胡弓こきゅうを演奏させて、その調べが乱れていたら本当は景清の居所を知っているというのです。

3つの楽器、特に胡弓は演奏が難しく、しかもその演奏で阿古屋の心情を表現しなければならないので、戦後は六代目中村歌右衛門と坂東玉三郎しか演じていませんでした。

しかし2018年になってようやく、玉三郎の指導を受けた若手の中村梅枝、中村児太郎によって演じられました。今後の上演が増えることが期待されます。

藤娘〜藤の精が優雅に舞う

藤娘

20分足らずの短い舞踊劇で特に物語はないのですが、親しみやすい唄と愛らしい踊りで人気があります。

藤の枝を担いで黒塗りの傘をかぶった娘は実は藤の精です。

意のままにならない男のことを嘆いたり、酒に酔って愛しい男を思って唄う中で、少女から大人の女性へと変わっていく様子を夢のように幸せな光景として見る者を楽しませてくれます。

他にも女形が活躍する演目はたくさんあります。他の演目は以下をチェック!

女形の仕草や化粧の仕方は?

女らしい仕草

女形が女らしく見えるのは、その仕草化粧にも秘密があります。

女形の代表的な仕草は以下のようなものがあります。

  • 肩を落としてなで肩に見えるようにする
  • 体を少しひねって色っぽく座る
  • 笑うときに口元を袖で隠す
  • 話し方はゆっくりした口調
  • 指は小さく可憐でよくしなること

女形の役者はこういった仕草を常日頃から研究していますが、江戸時代に活躍した女形の芳澤あやめは、「普段から女のように生きることが大事」と言っています。

たとえば、楽屋にいるときも、食べ物をむしゃむしゃと食べたりしてはいけないというふうに、外見だけでなく心から女になることを意識することで、女らしい仕草を自然と表現していたのですね。

そしてもう一つ女らしさを出すのに重要なものに化粧があります。基本的におしろいを塗るのは男役と同じですが、隈取をすることはありません。

化粧の基本的な手順としては、以下のようになります。

  1. おしろいののりを良くするために鬢付(びんつけ)油を顔・首・背中までまんべんなく塗ります。
  2. 眉毛は見えないようにロウが多く入った固めの鬢付け油でつぶします。
  3. ドーランを塗り眉の跡が目立たないようにします。
  4. 細い羽二重(はぶたえ)という布を頭に巻いて、ツリ目にして美しく見せるようにします。
  5. 刷毛(はけ)を使っておしろいを塗ります。
  6. 墨を使い眉を描きます。
  7. 目張りや唇に紅を入れます。

女形の化粧はその役柄によって違いがあり、遊女役や御殿女中役、年増の役はお歯黒をつけますが、若い娘の姫役や芸者役などではつけません。

御殿女中や年増の役では眉毛は描かずに塗りつぶしたままです。

他にも目元のライン口紅の色なども役によって違いがあります。

また、役者が自分で化粧をするので、演じる役者によっても微妙な違いがでるものです。

歌舞伎を観劇するときは、女形がどうやって女らしさを表現しているのか、その一つ一つの仕草や化粧の仕方にも注目してくださいね。

【達人メモ その3】
女形は普段から眉毛を剃っていて、眉墨で描いている人も多いようです。松本幸四郎はあるときファンの前に出る時に眉墨を忘れてしまい、タバコの灰を使って眉毛を描いてごまかしたことがあるとか。

まとめ

歌舞伎の大きな特徴である、女形について解説してきましたがいかがでしたか?

歴史的には女性が演じることを禁止されたので、<やむをえず始まった女形ですが、今では歌舞伎にとってなくてはならないものです。

現代の女形の役者は、紹介した坂東玉三郎中村七之助中村梅枝以外にも、思わずドキッとするほどの美形の方も多くいます。

女形の有名な三姫と言われる大役の、八重垣姫時姫雪姫はどれも恋する女性の情熱を女形が鮮やかに表現するものです。

演目の中では、京鹿子娘道成寺阿古屋藤娘が女形の美しさと微妙な女心で見るものを魅了します。

普段からどうやって女らしく見えるのかを、その仕草化粧の仕方を研究することで発展してきた歌舞伎の女形に、ぜひ注目してください。

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