中村壱太郎の家系図紹介!「君の名は」の踊りを振り付けた上方歌舞伎の名門

中村壱太郎の家系図紹介!「君の名は」の踊りを振り付けた上方歌舞伎の名門

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中村壱太郎なかむらかずたろうは、名門・中村雁治郎家なかむらがんじろうけ(成駒家)の初代から数えて五代目に当たる若手女形役者で、関西の上方歌舞伎でもっとも注目される新星の一人です。

女形役者としての目覚ましい成長だけでなく、現代の若者らしくYoutubeインスタグラムTwitterなどを駆使した広報活動や、アニメ映画「君の名は。」の作中の踊りの振り付け、ART歌舞伎という新しい舞踊を生み出すなど、これからの歌舞伎界の中心となっていく可能性を秘めている要注目の役者です!

ここでは、上方歌舞伎役者・中村壱太郎の家系図を紹介し、そのプロフィール歌舞伎以外の活動なども紹介していくので、特にこれから歌舞伎を見てみようと思う人は、ぜひチェックしてくださいね。

中村壱太郎の家系図紹介

初代・中村雁治郎から五代目になる中村壱太郎を中心とした家系図は以下のようになります。

中村壱太郎を中心とした家系図【中村雁治郎家】

中村壱太郎を中心とした家系図【中村雁治郎家】

屋号の成駒家は、もともとは成駒屋と同じ「屋」の字を使っていましたが、平成27年(2015年)に四代目中村鴈治郎の襲名の際に「家」の字に改められました。これは、かつて初代中村鴈治郎が同じ屋号の五代目中村歌右衛門に遠慮して「家」の字を使っていたことに倣ったようです。

二代目鴈治郎の妹・中村芳子も女優で四代目中村富十郎の妻となり、四代目坂田藤十郎の妹で女優の中村玉緒の夫は映画俳優・勝新太郎です。

歌舞伎役者・中村壱太郎のプロフィール

中村雁治郎家の五代目・中村壱太郎

中村壱太郎のプロフィールは以下のようになります。

生年月日
平成2年(1990年)8月3日
本名
林 壱太郎はやし かずたろう
屋号
成駒家
家紋(定紋)
寒雀の中に壱かんすずめのなかにいち
初お目見得
平成3年(1991年)11月 南座「廓文章くるわぶんしょう」藤屋の手代壱太郎役
本名・林壱太郎で初舞台
初舞台
平成7年(1995年)1月 中座「嫗山姥こもちやまんば」一子公時役
初代・中村壱太郎を名乗り初舞台
襲名歴
平成7年(1995年)1月 中村壱太郎なかむらかずたろう(初代)
主な役
春興鏡獅子しゅんきょうかがみじし」 小姓弥生後に獅子の精
曽根崎心中そねざきしんじゅう」 お初
寿曾我対面ことぶきそがたいめん」 喜瀬川亀鶴
「金閣寺」 雪姫
河庄かわしょう」 小春
神霊矢口渡しんれいやぐちのわたし」 お舟
土屋主悦つちやちから」 お園
女殺油地獄おんなごろしあぶらのじごく」 お吉
東海道四谷怪談とうかいどうよつやかいだん」 お袖
輝虎配膳てるとらはいぜん唐衣からぎぬ
道成寺再鐘供養どうじょうじごにちのかねくよう白拍子花子しらびょうしはなこ

平成2年(1990年)8月3日に、父・四代目中村雁治郎(当時・中村智太郎)と母・日本舞踊吾妻流家元二代目吾妻徳穂(当時・六代目吾妻徳彌)の間に長男として生まれた壱太郎は、1歳3ヶ月のときに祖父(現・坂田藤十郎)が三代目中村雁治郎を襲名する舞台で初お目見えを果たします。

4歳のときに父親が五代目中村翫雀なかむらかんじゃくを襲名するときに、自身も初代中村壱太郎を襲名して初舞台を踏みますが、本人はまだ幼かったのでよく覚えていないそうです。

子供のころは歌舞伎役者になることをそれほど意識することもなく普通の学校生活を送っていたのですが、15歳のときに大きな出来事が起こります。祖父(当時・三代目中村雁治郎)が、231年も空白だった上方の大名跡・坂田藤十郎を襲名することになるのです。

当時74歳になろうかという祖父が新たな挑戦として大名跡を復活させるという熱い生き様を見て、「歌舞伎というものは人生をかける価値のあるものだ」と強く感じ、そこから本気で歌舞伎役者になることを決意します。

2007年5月の坂田藤十郎襲名記念「近松座歌舞伎公演」では、歌舞伎史上最年少の16歳で「春興鏡獅子」を踊ります。そして19歳のときには祖父・坂田藤十郎の代名詞とも言える、「曽根崎心中」のお初という大役を務めましたが、これが一つの転機となって女形として注目されていきます。

本人も女形を演じることには思い入れが深く、「僕が女形を志すようになったのも、男性が女性を演じるという世界でも稀に見る芸術に、一生かけて取り組めることに惹かれたから」と語っています。

歌舞伎の家に生まれた役者としては珍しく、大学(慶応大学総合政策学部)を卒業しており、母親が家元である日本舞踊の吾妻流七代目家元を吾妻徳陽として襲名しました。

現在、人気上昇中の壱太郎ですが、現在の歌舞伎界を作ってきた先輩役者の方々への感謝を忘れることなく、芸だけでなく自分の強みを利用して歌舞伎の裾野を広げることを考え、今の若者らしく動画配信サービスのYoutubeインスタグラムなども積極的に活用しています。

2020年10月にはテレビのバラエティ番組「ネプリーグ」に尾上松也らと出演し、クイズで珍回答を連発してスタジオを大いに沸かせていました。

みずみずしく情感のこもった演技と爽やかな口跡で観客を楽しませ、舞踊においても新たな世界を切り開く姿勢で、歌舞伎にとどまらない多彩な方面での活躍が期待されれる、まさに上方歌舞伎の期待の新星が中村壱太郎なのです。

大ヒット映画「君の名は。」の踊りの振り付けを担当

2016年に公開され大ヒットを記録したアニメ映画「君の名は。」(監督・新海誠)の中で、ヒロイン・三葉と四葉の姉妹が「巫女の奉納舞」を踊りますが、その舞を創作したのが中村壱太郎です。

もともと新海誠監督作品にあこがれていたようで、「君の名は。」が公開されたときのツイッターでは次のようにつぶやいて喜びを表しています。

遂に封切りです!!「君の名は。」高校の時に秒速(※)に出会い、多くの感銘を受けてきた大好きな大好きな新海誠さんの作品たち。そんな新海さんの新作「君の名は。」の劇中でほんの数秒ですが巫女舞の振付・創作として関わらさせていただきました!!中村壱太郎Twitterより

創作を担当するにあたっては、新海誠監督から声をかけていただいたそうですが、壱太郎が振り付けの様子を撮影した映像は、作品の舞台になった飛騨市の美術館で開催された「君の名は。」展(2017年1月7日〜2月19日)において公開されました。

(※)新海誠監督作品のアニメ映画「秒速五センチメートル」のこと

Youtubeチャンネル「かずたろう歌舞伎クリエイション」も注目

新型コロナウイルスの影響で歌舞伎の公演が次々と休演を余儀なくされる中で、中村壱太郎は早くから歌舞伎役者個人のYoutubeチャンネル「かずたろう歌舞伎クリエイション」を立ち上げて歌舞伎に関する情報を発信しはじめました。

内容は、歌舞伎の化粧をする様子や自らの創作舞踊、盟友と言うべき尾上右近と作り上げた新作舞踊のART歌舞伎の紹介など、歌舞伎に関する情報を発信することを基本としたものになっています。

2020年9月27日には、動画配信サイトのYoutubeで、白鷺城とも呼ばれる姫路城で行われた「GIはりま オンライン一斉乾杯」というイベントの中で中村壱太郎による鷺娘が無料配信されました。

また、インスタグラムTwitterも駆使しながら、歌舞伎が危機を迎えている中で自らできることを積極的に実行しながら、先輩たちが作ってきた歌舞伎を守ろうとしている姿勢が伺えます。

>>中村壱太郎公式インスタグラムはコチラ
>>中村壱太郎公式Twitterはコチラ



上方歌舞伎の名門一族を紹介

中村壱太郎中村雁治郎家(成駒家)は、上方歌舞伎の名門一家です。その家族を以下に紹介します。

伝説の大名跡・四代目坂田藤十郎


壱太郎の祖父・四代目坂田藤十郎(山城屋)は、昭和6年12月31日に二代目中村鴈治郎の長男として生まれます。妹は女優の中村玉緒です。

9歳のときに大阪角座で「嫗山姥こもちやまんば」の一子公時役で二代目中村扇雀を名乗り初舞台を踏んでから、晩年まで現役で舞台に立ち続けました。

華やかな艶のある女形の芸風から、年とともに様々な役柄をこなす幅の広さを持ち合わせています。「曽根崎心中」のお初が代表的な当たり役で、生涯に1,400回以上も演じており、中村鴈治郎家のお家芸ともなりました。

平成2年に三代目中村鴈治郎を襲名し、日本芸術会員人間国宝にも認定され、歌舞伎界の大きな栄誉を手にした名優でありながら、その立場に甘んじることなく独自の芸のさらなる進化を求めて、それまで長い間受け継ぐ者がいなかった上方の大名跡・坂田藤十郎を平成17年(2005年)に231年ぶりに復活させました。

上方歌舞伎の復興にも中心的立場で力を尽くし、若手の育成にも熱心に務めます。文化勲章も受賞し、日本俳優協会の会長を務めるなど、名実ともに歌舞伎界のトップとして活躍していましたが、2020年11月に88歳で惜しまれて世を去りました。

元宝塚女優で元防衛大臣・扇千景

宝塚歌劇団娘役として活躍していた扇千景は、1958年に坂田藤十郎(当時・中村扇雀)と結婚し、宝塚を退団し芸能活動からも身を引きますが、その後再び女優として最デビューすると、テレビや映画などで活躍します。

しかし、彼女の名声は国会議員としてのほうが有名です。1977年に自民党から出馬し参議院で初当選してから通算5回の当選を果たし、運輸大臣国土交通大臣などの閣僚や、女性初の参議院議長も務めました。

坂田藤十郎との間に長男・四代目中村雁治郎と次男・三代目中村扇雀を設け、孫に中村壱太郎と中村虎之介がいます。

上方歌舞伎の雄・四代目中村雁治郎

四代目中村雁治郎(成駒家)は、昭和34年(1959年)に坂田藤十郎と扇千景の間に長男として生まれました。昭和42年(1967年)に「紅梅曾我」の一萬丸役で初舞台を踏み、平成2年(1990年)に五代目中村翫雀なかむらかんじゃく、平成27年(2015年)に大阪松竹座で四代目中村雁治郎を襲名します。

父親ゆずりの幅広い芸域を持ち、関西と東京の両方の舞台で名脇役として活躍していましたが、父が名乗っていた「鴈治郎」の名跡を襲名してからは、上方歌舞伎の顔として、また成駒家の当主としての責任も大きくなっています。

成駒家の家の芸である「廓文章・吉田屋」の伊左衛門、「心中天網島・河庄」の治兵衛、「恋飛脚大和往来・封印切」の忠兵衛などの、はんなりした上方和事の役を得意とし、人間のおかしみと切なさを微妙な所作で巧みに表現します。

父・坂田藤十郎の後を継ぎ、息子・壱太郎とともに上方歌舞伎を盛り上げていく存在となることが期待される役者です。

中村壱太郎と尾上右近が作り出す「ART歌舞伎」の世界


2020年7月12日、中村壱太郎と尾上右近の2人が、「踊り」と「魅せる」に特化した作品を創りたいという思いを胸に新しい作品、「ART歌舞伎」を生み出しました。日本舞踊家の花柳源九郎、藤間涼太朗とともに、美しくアートな世界を堪能できる舞台は、新型コロナウイルスの影響で歌舞伎の舞台を見られないファンの心を魅了するものとなりました。

一夜限りの舞台は、あいにくの雨が降りしきる中でしたが、まるで何かにとりつかれたように舞い踊る四人の役者と、演奏者たちが奏でる音楽が、神秘的で心情的な世界をみごとに描き出しました。

今後も中村壱太郎&尾上右近という、まさに新しい時代の歌舞伎役者の二人がどんな世界を紡ぎ出すのかとても楽しみです。

>>ART歌舞伎公式サイト
>>尾上右近について詳しくはコチラ



中村壱太郎の公演情報

中村壱太郎や父・中村雁治郎の今後の公演情報を以下にお知らせします。

2024年9月 京都南座

2024年9月の京都南座「九月花形歌舞伎」で「あらしのよるに」が上演され、中村壱太郎が出演します。




まとめ:中村壱太郎は新時代の歌舞伎役者

中村壱太郎は、上方歌舞伎の名門・中村雁治郎家の五代目にあたる若手女形役者で、そのみずみずしい演技と確かな舞踊の技術で将来の大スターの可能性を感じさせます。

現代の若者らしく、YoutubeチャンネルインスタTwitterなども駆使しながら、祖父や父から受け継いだ歌舞伎の伝統を守りつつ、さらに多くの歌舞伎ファンを増やすことも考えています。

アニメ映画「君の名は。」での踊りの創作を担当し、盟友の尾上右近とともに「ART歌舞伎」という新たな舞踊を生み出すなど、新しいものを作り出すことにも挑戦しています。

上方歌舞伎の雄として、祖父・坂田藤十郎、父・中村雁治郎とともに活躍するだけでなく、新しい時代の歌舞伎を作り出す女形役者としての中村壱太郎に注目です。

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