【中村勘九郎】いだてん男は妻・前田愛の支えで歌舞伎の先頭を走り続ける
六代目中村勘九郎は、若くして亡くなった父・十八代目中村勘三郎の意思を受け継ぎ、弟の中村七之助とともに歌舞伎の名門・中村屋を引っ張る若きリーダーです。
勘九郎の妻は女優の前田愛で、二人の間に生まれた長男の七緒八くん、次男の哲之くんは、それぞれ中村勘太郎、中村長三郎として舞台に立っています。
この記事では、2019年の大河ドラマ「いだてん」で主役を勤めたことで東京オリンピックの聖火リレー最終参加者にも選ばれ、妻や家族の支えで中村屋一門とともに歌舞伎界の先頭を走りつづける中村勘九郎を紹介していきます。
目 次
中村勘九郎の妻・前田愛は夫を支える良妻賢母
現在、歌舞伎の中村屋を率いて歌舞伎の舞台だけでなくテレビでも活躍する六代目中村勘九郎ですが、その活躍を支えるのが妻で女優の前田愛です。
二人のこれまでの経歴や、出会ってからどのようにして結婚までたどり着いたのかなどを解説します。
歌舞伎役者六代目中村勘九郎
生年月日 |
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昭和56年(1981年)10月31日 |
本名 |
波野 雅行 |
屋号 |
中村屋 |
家紋(定紋) |
角切銀杏 |
初舞台 |
昭和61年(1986年)1月 「盛綱陣屋」の小三郎役 |
襲名歴 |
昭和62年(1987年)1月 中村勘太郎(二代目) 平成24年(2012年)2月 中村勘九郎(六代目) |
主な役柄 |
「土蜘」 土蜘の精 「一條大蔵譚」 一條大蔵長成 「御所五郎蔵」 「夏祭」 団七 「封印切」 忠兵衛 「天日坊」 「盟三五大切」 三五郎 「乳房榎」 |
江戸歌舞伎最初の芝居小屋である中村座の座元から続く名跡が「中村勘三郎」であり、昭和から平成にかけてもっとも人気のあった歌舞伎役者と言っていいのが、十八代目中村勘三郎です。
その、十八代目勘三郎の長男として生まれたのが、現在の六代目中村勘九郎です。
父親から他人に言えないほどの厳しさで歌舞伎の芸を叩き込まれて成長し、5歳のとき「門出二人桃太郎」の兄桃太郎役で初舞台を踏み中村勘太郎を襲名、9歳のときに歌舞伎座で「供奴」を踊る姿で高い身体能力と舞踊の才能を見せつけます。
平成12年(2000年)に父・勘三郎と弟・七之助とともに演じた三人連獅子は、その勇壮な姿と三人の息がぴったりと合ったところが、歌舞伎の芸の継承の厳しさを思わせ、高い評価を得ています。
それでも駆け出し時代は苦労もありました。18歳のときから出演した若手の登竜門である「新春浅草歌舞伎」では、弟の七之助や市川亀次郎(現・猿之助)、中村獅童、市川男女蔵らと共演しますが、観客席がガラガラなのを見て、いつも満員の父の舞台との違いに衝撃を受けます。
しかし、そのことが自分たちで興行することについて真剣に考えるきっかけになり、ポスターを貼ってくれるように浅草の町中を自分たちでお願いして回るなど、宣伝の仕方などを工夫することで乗りきっていきます。
平成24年(2012年)に尊敬する父・勘三郎が名乗っていた「中村勘九郎」を襲名しますが、襲名披露公演のさなかに、その父親を病気で亡くすという悲劇に見舞われます。
「父が名乗り、魂を込めた名を襲名させていただき、息子であることを誇りに思います。」と、言葉をつまらせながら口上を述べる姿は多くの人の涙を誘いました。
父・勘三郎が生み出した新しい歌舞伎のスタイルである、「平成中村座」「赤坂大歌舞伎」「コクーン歌舞伎」などを、中村屋の跡継ぎとして受け継ぎながら、古典歌舞伎も守り続けようとする姿勢で、現在の歌舞伎界を代表する役者の一人となっています。
テレビや映画の出演も多く、平成31年〜令和元年(2019年)のNHK大河ドラマ「いだてん」では主役の金栗四三役を演じてさらに人気が高まり、東京オリンピックの聖火リレーでは最終参加者にも選ばれています
名門の生まれでありながら、確かな演技力はたゆまぬ努力を重ねてきた証拠で、真面目な性格と謙虚な人柄は好漢と呼ぶに相応しい役者です。歌舞伎の面白さを伝えるために新しいことにも積極的に取組む姿勢は父親の姿を彷彿とさせるものがあり、これからの歌舞伎界を牽引することが期待されます。
女優・前田愛
中村勘九郎の妻・前田愛は昭和58年(1983年)10月4日生まれで、1993年にマクドナルドのCMで妹の前田亜季と共演で芸能界デビューを果たします。
1994年には、フジテレビの「あっぱれさんま大先生」でレギュラーを勤め、ジュニアアイドルとしてブレイク。1997年には浜丘麻矢、野村佑香、大村彩子とグループ限定ユニット「Pretty Chat」を結成してシングルCDを発売するなど歌手としての活動も行います。
映画「ガメラ3 邪神覚醒』」で主役を勤めたり、ゲームやアニメ「キノの旅」の声優なども勤め、他にも数多くのテレビドラマや映画、CMなどに出演しています。
童顔のショートヘアで可愛らしいキャラクターと、清廉な女の子の雰囲気で人気を集めました。
二人の馴れ初めは?
歌舞伎役者の中村勘九郎(当時・勘太郎)と女優・前田愛の最初の出会いは、2001年に放送されたNHKのテレビドラマ「光の帝国」で共演したときです。このドラマでの共演をきっかけに恋愛関係に発展し、それから7年の交際期間を経て2009年に結婚します。
二人共あまり結婚願望を持っていないタイプでしたが、勘九郎は交際をはじめてからいつかは彼女と結婚したいと思うようになり、前田愛も仕事や家庭でいろんなことがあった時に、ずっと勘九郎に支えられたことで一緒にいたいと思うようになったそうです。
ちなみにお互いの第一印象は、勘九郎は「ちっさい子だなと」と思い、前田愛は「(暑い時期の撮影で)タンクトップを着られてて。タンクトップ、苦手だったので、ちょっと変な人だなって思った」とのこと。
前田愛は女優を引退したわけではありませんが、今は夫を支えて子育てのほうに専念することが多いようです。「いだてん」に出演する勘九郎の食事の管理など、夫が仕事をしやすいように気を遣っています。
現在は二人の息子に恵まれ、その息子たちとの一家の奮戦ぶりがテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられたりしますが、女優時代とはガラリとちがう着物姿に身をまとった前田愛の姿を見ると、歌舞伎の世界でしっかりと良妻賢母として夫や子どもたちを見守りながら、中村屋のメンバーにとってもなくてはならない存在になっているようですね。
「いだてん」では日本マラソンの父と呼ばれる金栗四三を演じた勘九郎ですが、もともと歩くのも嫌いで子供のときからタクシーを使っていたとか。妻の前田愛が散歩に誘っても行きたがらなかったが、「いだてん」出演のためにトレーニングをしたせいか、今では少しの距離なら歩いて行くようになっているそうです。
中村勘九郎夫妻の子供も歌舞伎役者デビュー
中村勘九郎・前田愛夫妻の間に生まれた二人の男の子も、長男・七緒八くんが中村勘太郎、次男・哲之くんが中村長三郎として歌舞伎の舞台デビューを果たしています。
七緒八くんは、2011年2月22日生まれです。初お目見得は2013年10月27日の東京・築地本願寺で行われた「十八世中村勘三郎 一周忌メモリアルイベント」で、祖父の追悼の舞台で堂々と舞を踊りきりました。
そして、2017年2月の歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」で弟と一緒に「門出二人桃太郎」の兄桃太郎で中村勘太郎を襲名して初舞台を踏みます。
2019年3月には、父や叔父の七之助が出演しない中、大先輩達に混じって一人で「盛綱陣屋」の小四郎役で出演しました。舞台では緊張してセリフを忘れる場面もありましたが、大先輩の片岡秀太郎にフォローしてもらってなんとかその場を乗りきっています。
弟の哲之くんは、2013年5月22日生まれで、3歳のときに兄とともに「門出二人桃太郎」の弟桃太郎で中村長三郎を襲名して初舞台を踏んでいます。国立劇場で行われた日本舞踊中村流の「雀成会」では、初の女形に挑戦し、楽しげな舞踊を披露しました。
2019年8月には兄弟二人で「伽羅先代萩」に出演し、叔父の中村七之助演じる政岡と三人だけで50分もの長い演技が要求される舞台を見事にこなしました。
母・前田愛が言うには、勘太郎は稽古が大好きで自分からいろいろと話すタイプで、長三郎は負けず嫌いだけど意外にシャイな性格だそうです。父親の勘九郎が弟・七之助と二人で息の合った演技を見せているように、勘太郎・長三郎兄弟もお互いに高め合って歌舞伎中村屋を盛り上げていってほしいですね。
「伽羅先代萩」で、勘太郎は舞台上で共演する叔父の七之助の前で寝てしまい、楽屋で七之助に怒られる様子がテレビで放映されました。ところが、七之助も初舞台のときの口上で眠ってしまったことを同じようにテレビで放映されていたと、勘九郎・七之助の母親・波野好江の著書「中村勘三郎最後の131日」の中に書いてあります。
弟・中村七之助の結婚は?
中村勘九郎の弟・中村七之助は、父親の十八代目勘三郎亡き後は兄とともに中村屋の屋台骨を支える存在に成長します。特に女形としての活躍は目覚ましく、しなやかで美しい容姿は本物の女性と見まごうほどの色気があり、若女形としての演技が光ります。
イケメン歌舞伎俳優であり、父親の勘三郎がそうだったように女性関係の噂も数々ある七之助ですが、現在は本気でお付き合いしている女性がいて結婚までは秒読み状態とも言われています。
雑誌「女性自身」に七之助は「僕は、前々から言ってますが、歌舞伎が好きな女性じゃないと結婚は難しいかな、と思ってます。僕ら、家も生活も歌舞伎にどっぷりですから」と語っており、お相手の女性も、七之助の舞台を見ながら歌舞伎役者の妻となるべく準備をしているとも言われています。
しかし、テレビで七之助は自粛期間の過ごし方などの話になると、「ボクは兄と違って家では一人なので・・・」とコメントし、特に付き合っているような相手はいないかのように振る舞っているので、実際のところはよくわかりません。
ただし、現在新型コロナウイルス感染拡大の影響で、歌舞伎界の一大イベントでもある市川團十郎白猿襲名披露公演が延期されているので、七之助が結婚するとしてもその後になりそうです。
女形として、今もっとも成長した歌舞伎役者の呼び声も高い中村七之助ですが、兄・勘太郎のように結婚して妻や子供を持ち、さらに飛躍した姿を見せてくれるかもしれませんね。
中村勘三郎の精神を受け継ぐ歌舞伎名門「中村屋」
十八代目中村勘三郎は常にお客さんを喜ばせるために、伝統を守りながらも新しい歌舞伎への挑戦を忘れませんでした。
江戸歌舞伎の芝居小屋を再現したいという思いから、移動式の仮設芝居小屋「平成中村座」や、渋谷や赤坂で歌舞伎の舞台をやりたいという思いから「コクーン歌舞伎」「赤坂大歌舞伎」をはじめました。
息子の中村勘九郎は、その勘三郎の精神を受け継いで、父親が作り上げたものを更に発展させようとしています。
勘三郎亡き後、浅草、大阪、名古屋、北九州で「平成中村座」の公演を大盛況で行い、ほぼ2年ごとに行われる「コクーン歌舞伎」では、新たな解釈と演出で「三人吉三」「四谷怪談」「切られの与三」を、七之助以外にも尾上松也、中村鶴松などの人気役者とともに上演し若い歌舞伎ファンを集めました。
「赤坂大歌舞伎」では、勘九郎が「怪談乳房榎」で三役早替りを見せれば、七之助は「お染の七役」で七役の早替りを披露するなど、兄弟で父の残したものをさらに発展させていく意欲を見せています。
中村勘三郎家の家系図は以下の記事を御覧ください。
中村屋の出演情報
中村勘九郎・七之助の歌舞伎やその他の舞台への今後の出演情報は以下のようになります。
2024年6月 歌舞伎公演
2024年6月の歌舞伎座「六月大歌舞伎」に中村七之助が出演します。
まとめ:中村勘九郎の妻だけでなく家族にも注目
「いだてん」で主演を勤めた六代目中村勘九郎は、父・十八代目中村勘三郎の意思を受け継いで歌舞伎名門中村屋の中心として活躍しています。
妻である女優・前田愛は歌舞伎役者の夫を支えながら、二人の息子・中村勘太郎、長三郎の兄弟も歌舞伎役者に育てる良妻賢母ぶりを見せています。
勘九郎の弟・中村七之助も近々結婚するのではないかと言われていますが、歌舞伎役者としての七之助を支えてくれる奥さんを迎えることで、ますます芸に磨きがかかっていくことも期待されます。
中村勘三郎が大事にしていた、お客さんを喜ばせるために常に新しいものに挑戦し続ける精神は、中村屋の跡継ぎ、中村勘九郎とその家族や一門にしっかりと伝わっているのです。