歌舞伎三大名作『菅原伝授手習鑑』とは?あらすじ・見どころ・登場人物を徹底解説

歌舞伎三大名作『菅原伝授手習鑑』とは?あらすじ・見どころ・登場人物を徹底解説

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🎭 歌舞伎を代表する三大名作のひとつ、 『菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ』。

📚 学問の神様・菅原道真の悲劇をもとに、親子の別れ三つ子兄弟の運命が交錯する、胸に迫る大作です。⚡️

📝 本記事では、『菅原伝授手習鑑』の
あらすじ登場人物名場面の見どころ初心者にもわかりやすく解説。さらに、近年の上演情報名優のエピソードもご紹介します。

✨ これを読めば、『菅原伝授手習鑑』がなぜ「三大名作」と呼ばれるのか――その魅力がぐっと身近に感じられるはずです。🔰

歌舞伎三大名作!『菅原伝授手習鑑』とは?

歌舞伎演目『菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ』は、学問の神様として今も親しまれる✨菅原道真菅丞相かんしょうじょう)の悲劇を描いた、全五段の歌舞伎の大作です。

延享3年(1746)8月に大坂竹本座で人形浄瑠璃として初演されたものが、翌月にはすぐに歌舞伎化され京都の中村喜世三郎座で上演されました。「義経千本桜よしつねせんぼんざくら」「仮名手本忠臣蔵かなでほんちゅうしんぐら」と並ぶ歌舞伎三大名作のひとつとして知られています📚。

物語の中心には、立場の異なる三つ子の兄弟――
梅王丸🧔🏻‍♂️・松王丸👨🏻‍🦱・桜丸👦🏻🌸がいます。
それぞれが別の主人に仕え、やがて敵味方に分かれていくという数奇な運命…。
朝廷の権力争いの中で起きた悲劇、趣向のちがうさまざまな親子の別れが描かれ、涙なしでは見られない物語となっています😭。

菅丞相と苅屋姫の生き別れ白太夫と桜丸の死に別れ松王丸と小太郎の首の別れなど、三組の親子が迎える悲劇が濃密に描かれ、まさに三大名作と呼ぶにふさわしい作品です。

ちなみに近年の歌舞伎『菅原伝授手習鑑』では以下の内容が上演されており、

初段 大内山(おおうちやま)、加茂堤(かもづつみ)、筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)
二段目 道行詞の甘替(みちゆきことばのあまいかい)、道明寺
三段目 車引(くるまびき)、賀の祝(がのいわい)
四段目 天拝山(てんぱいざん)、寺子屋(てらこや)
五段目 大内天変(おおうちてんぺん)

その中でも特に人気があって有名な以下の場面は、単独でも何度も上演されています。

  • 加茂堤」🌸 … 斎世親王と苅屋姫の恋が描かれる、ロマンチックで美しい場面。
  • 筆法伝授」✍️ … 菅丞相が忠臣・源蔵に家伝の筆法を伝える、主従の絆を示す重要な場。
  • 道明寺」🏯 … 太宰府に流される菅丞相と苅屋姫の親子の別れを描く、胸を打つ一幕。
  • 車引」🐂 … 三兄弟が揃いの衣裳と隈取で立ち回る、歌舞伎様式美の粋。
  • 賀の祝」🥂 … 三兄弟と父・白太夫が揃い、親子の情愛とそれぞれの運命が交錯する場面。
  • 寺子屋」🏫 … 子を思う親の情と忠義がせめぎ合う、感動必至の名場面。

一幕だけでも十分楽しめますが、段をまたいで観ることで登場人物たちのつながりが見えてきて、物語全体が一気に胸に迫るのが、この作品の醍醐味です🌟。

「三大名作」と呼ばれるのは、延享3年(1746)から3年にわたって次々に世に出された三つの大作――『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』です。作者は並木千柳・三好松洛・竹田出雲らの合作で、いずれも人形浄瑠璃として生まれ、その後すぐに歌舞伎へ移されました。重厚でスケールの大きい物語は、時代を超えて観客を魅了し続け、幾多の名優による舞台を通じて磨き上げられ、歌舞伎の様式美の精華として今日まで受け継がれています。




菅原伝授手習鑑の登場人物

『菅原伝授手習鑑』には、菅丞相と三つ子の兄弟をはじめ、物語を大きく動かす重要な人物が数多く登場します。
ここでは主要キャラクターの立場や性格をまとめました。人物像を知っておくと、舞台でのセリフや行動がより鮮明に理解でき、観劇の楽しみがぐっと深まります🎭✨

📚菅丞相 (かんしょうじょう)

立場右大臣でありながら、無実の罪で失脚し太宰府へ流罪となる悲劇の主人公

人物像学識と品格を備え、人々に敬われた人物。失脚後は雷神となって都に戻り仇を討つ

登場場面「大内山」「筆法伝授」「道明寺」「天拝山」

🌸梅王丸 (うめおうまる)

立場菅丞相に仕える三つ子兄弟の長男

人物像情熱的で一本気な性格。強い忠誠心を抱き、流罪となった主君を追って太宰府へ向かう

登場場面「筆法伝授」「車引」「賀の祝」「天拝山」

🌲松王丸 (まつおうまる)

立場三つ子の次兄。左大臣・藤原時平に仕え、丞相の子(菅秀才)の首実検を任される

人物像忠義と親情の板挟みに苦しむ人物。妻・千代と共に自らの子供(小太郎)を犠牲にしてまで菅秀才を救おうとする

登場場面「車引」「賀の祝」「寺子屋」

🍒桜丸 (さくらまる)

立場斎世親王の舎人を務めた三つ子の末弟

人物像穏やかで心優しい性格。親王と苅屋姫の恋を手助けしたことで丞相失脚の原因を作り、責め苦しんだ末に命を絶つ

登場場面「加茂堤」「道行詞の甘替」「車引」「賀の祝」

💮八重 (やえ)

立場桜丸の妻

人物像夫とともに苅屋姫の恋を支援。桜丸の死後は園生の前を守りつつ暮らすが、やがて時平方に討たれる

登場場面「加茂堤」「賀の祝」

👸苅屋姫 (かりやひめ)

立場菅丞相の養女

人物像斎世親王との恋に身を投じ、父の失脚のきっかけとなる。覚寿の屋敷に身を寄せつつ、父に謝罪したいと願う

登場場面「大内山」「加茂堤」「道行詞の甘替」「道明寺」「大内天変」

👑斎世親王 (ときよししんのう)

立場醍醐天皇の弟宮

人物像苅屋姫と恋仲となり、桜丸の助けで密会する。騒動ののち、姫と共に都を去る

登場場面「大内山」「加茂堤」「道行詞の甘替」「大内天変」

📜三善清貫 (みよしのきよつら)

立場藤原時平に従う公家

人物像斎世親王と苅屋姫の逢瀬を目撃し、これを利用して菅丞相を失脚に追い込む

登場場面「大内山」「加茂堤」「筆法伝授」「大内天変」

✒️左中弁希世 (さちゅうべんまれよ)

立場菅丞相の門弟だった公家

人物像筆法の継承者は自分だと思い込んでいたが、師が失脚するとあっさり時平側に寝返る

登場場面「大内山」「筆法伝授」「大内天変」

👩園生の前 (そのうのまえ)

立場菅丞相の正室

人物像息子・菅秀才を守る母。丞相失脚後は北嵯峨に隠れるが、松王丸に助けられて再会を果たす

登場場面「筆法伝授」「寺子屋」

📖武部源蔵 (たけべげんぞう)

立場菅丞相の弟子で寺子屋の師匠

人物像妻・戸浪とともに芹生(せりょう)で寺子屋を営む。勅命により筆法を伝授されるが、師の子を守るために身替りを立てる決断をする

登場場面「筆法伝授」「寺子屋」

👩戸浪 (となみ)

立場武部源蔵の妻

人物像元は園生の前に仕えた腰元。夫と寺子屋を営み、源蔵の苦渋の決断を支え、宮仕えの厳しさを共に嘆く

登場場面「筆法伝授」「寺子屋」

👦菅秀才 (かんしゅうさい)

立場菅丞相と園生の前の子

人物像幼いながら才気にあふれる少年。源蔵夫妻に匿われ、寺子屋で習字に励む

登場場面「筆法伝授」「寺子屋」

⚔️判官代輝国 (はんがんだいてるくに)

立場宇多法皇に仕える武士

人物像菅丞相を太宰府まで護送する役目を負い、情に厚く土師の里で丞相の叔母・覚寿との別れを許す

登場場面「大内山」「道明寺」「大内天変」

👵覚寿 (かくじゅ)

立場菅丞相の伯母

人物像苅屋姫の母。厳格で、丞相失脚の原因となった姫をも容赦なく責める。老女役の大役「三婆」として知られる

登場場面「道明寺」

👩立田の前 (たつたのまえ)

立場覚寿の娘、苅屋姫の姉であり宿禰太郎の妻

人物像夫と義父の企みを止めようとするが、口封じのために命を奪われる

登場場面「道明寺」

👨宿禰太郎 (すくねのたろう)

立場立田の前の夫

人物像父・土師兵衛と結託して丞相暗殺を企み、妻をも殺める冷酷さを持つ

登場場面「道明寺」

👴土師兵衛 (はじのひょうえ)

立場宿禰太郎の父

人物像時平方と通じ、丞相暗殺を企む陰険な人物

登場場面「道明寺」

👩(はる)

立場梅王丸の妻

人物像丞相失脚後、八重と共に園生の前を守る役割を担う

登場場面「賀の祝」

👩千代 (ちよ)

立場松王丸の妻

人物像息子・小太郎を源蔵の寺子屋に通わせる。夫と共に重い決断を担う

登場場面「賀の祝」「寺子屋」

👴白太夫 (しらたゆう)

立場三つ子兄弟の父

人物像佐太村の百姓で、丞相の屋敷を守る。七十の賀を祝ったのち太宰府へ向かう忠義者

登場場面「賀の祝」「天拝山」

💀藤原時平 (ふじわらのしへい)

立場左大臣で菅丞相の政敵

人物像醍醐天皇の代理として権勢を振るい、陰謀で菅丞相を失脚させる。大悪人らしく三つ子兄弟さえ威圧するほどの迫力がある

登場場面「大内山」「車引」「大内天変」




菅原伝授手習鑑のあらすじと見どころを解説

『菅原伝授手習鑑』は、歌舞伎三大名作のひとつで、物語は五段にわたって展開します。
ここでは、その中でも近年よく上演される6つの場面を中心に、あらすじと見どころを初心者にもわかりやすく解説しました。名場面の魅力や観劇のポイントを押さえながら、物語の流れを一緒に追ってみましょう🎭✨

🌸 加茂堤 〜秘めた逢瀬と運命の分かれ道〜

加茂堤の斎世親王と苅屋姫

『加茂堤』の斎世親王と苅屋姫

春爛漫の加茂神社。梅の香ただよう境内へ、帝の弟・斎世親王が牛車で参詣に現れます。そこで待っていたのは、菅丞相の養女・苅屋姫👸。人目を忍ぶ二人は、この場で束の間の逢瀬を交わします。

しかし、この恋は許されぬ関係…💔 そこで親王の舎人である桜丸と、その妻八重が密かに段取りを整え、逢引を後押ししていました。

けれども油断大敵⚡️ 丞相の政敵・藤原時平に仕える三善清行が現れ、親王の行方を詮議し始めます。ここで密会が露見すれば、菅丞相の立場は一気に危うくなる――。

桜丸は必死に追っ手を食い止め💥、そのすきに斎世親王苅屋姫は姿を消します。やがてこの一幕が、後の大きな悲劇へとつながっていくのです…😢

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 🐂🛞 女形の“牛車(ぎっしゃ)を引く”所作
    …八重が桜丸の白丁(=舎人の制服)を借りて、空の牛車を自ら引く場面。
    歌舞伎の古い型「引く芸」を女で見せるのが粋で、のちの名場面「車引(くるまびき)」とも響き合うポイントです。
  • 💞 若さ×色気のコントラスト
    斎世親王と苅屋姫の初々しさに、桜丸・八重の大人の艶っぽさが重なる。
    同じ“恋”でも質感が違うのが楽しく、舞台を見ていて自然と頬がゆるむはず😊
  • 🌿➡️⚠️ 前半まったり→後半キリッの緩急
    …牧歌的でのどかな序盤から、二人を追う者の登場で空気が一変
    雰囲気の切り替えを感じるだけでも、この段の“うまさ”がわかります。

🖋 筆法伝授 〜秘められた技と別れの刻〜

『筆法伝授』の菅丞相と武部源蔵

『筆法伝授』の菅丞相と武部源蔵

菅丞相は帝からの勅命を受け、自らの家伝の筆法を一人の弟子に伝えることになります✒️。その場にいた古参の弟子・左中弁希世は、自分こそ継承者だと思い込んでいました。

ところが呼び出されたのは、かつて不義の罪で勘当された旧臣武部源蔵。彼は妻の戸浪とともに貧しい寺子屋を営みながらも、書の道を究め続けていたのです📜。

源蔵が見事な筆さばきを披露すると、その力量を認めた菅丞相は神道秘文の一巻を伝授します✨。しかし、その直後に宮中からの使者が現れ、菅丞相には太宰府へ流される運命が告げられるのです…⚡️。

源蔵は主君の子である菅秀才を守るため、密かに伴って逃げる決意を固めます。ここから物語は、さらに大きな転機へと向かっていきます――😢。

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 👣🎭 花道の“源蔵・戸浪”で物語の芯が立つ
    仕事も身分も失って“流れ者”のように暮らす源蔵夫婦が花道から登場。
    戸浪は貧しさの中、たった一枚残った拝領の裲襠(うちかけ)
    町女房らしい質素な装いの上にまとって現れる――
    生活の苦しさと、それでも消えない誇りが同居する人物造形の見せ場です。
  • 🖌️📜 “精進潔斎→秘伝授与”の格調
    菅丞相が精進潔斎を経て、書の秘伝を源蔵に伝授する荘重な場面。
    伝授は伝授、勘当は勘当」と突きつけられ、夫婦は今生の暇乞いをする――
    美しさと哀しさが同時に胸に来る名シーン。
  • 🤹‍♂️🎶 弟子・希世の“道化”でリズムにメリハリ
    しっとりした伝授場に、希世の軽妙な道化ぶりが程よいアクセント。
    初めてでも緊張と緩和の呼吸がつかみやすいポイントです。
  • 👑⬇️🌩️ 冠が落ちる=不吉のサイン
    宮中へ参内しようとする刹那、冠がポロリと落下
    後に降りかかる悲劇をさりげなく暗示する、思わず息をのむ瞬間。

🪵 道明寺 〜木像の声、主君を守る〜

『道明寺』菅丞相と苅屋姫の別れ

『道明寺』菅丞相と苅屋姫の別れ

菅丞相は太宰府へ流される途上、伯母覚寿の館に身を寄せています。そこへ、養父である菅丞相に一目会って謝りたい苅屋姫👸が忍んで来訪しますが、覚寿(姫の実母)は、娘の過ちを戒めるために厳しく杖を振るい折檻します😢。

その時――閉ざされた部屋の中から「もう叱るでない」と菅丞相の声が。ところが部屋にあったのは、丞相自ら彫った木像のみ🪵。まるで魂が宿ったかのように像が声を発し、場を鎮めます。

やがて夜明け前、迎えの一行が到着して菅丞相は出立。ところがそれは藤原時平側が差し向けた偽の一隊で、土師兵衛宿禰太郎らの暗殺計画でした⚠️。連れ去られたのは、なんと木像――像が身代わりとなって危機を逃れたのです。

のちほど本物の迎えが現れ、本人の丞相が姿を見せると覚寿は驚愕。木像が主を守った奇跡を軸に、母娘の断絶と和解、そして時平の陰謀がより深く動き始めることを示す一幕です🌙。

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 🌙➡️🌅 “真夜中→夜明け”のサスペンス演出
    舞台はほぼ真夜中の暗闇。丞相暗殺計画が進む中、事件が収束して迎える夜明けの清涼感が胸に残る。
  • 🪵✨ 木像が“動く”奇蹟劇
    菅丞相自刻の木像が動き出して主君を救う――歌舞伎でも珍しい伝奇色の濃い名場面。
    役者は本人/木像を演じ分け(木像は少しぎくしゃくとした所作)、違いが見どころ。
  • 🕵️‍♀️🔍 “立田殺し・身替り”の推理要素
    誰が、どう仕組んだのか――謎解きの面白さが加わり、物語にグッと引き込まれる。
  • ⛩️🌸 人情×宗教劇の二重奏
    覚寿・親娘の情、菅丞相と養女・苅屋姫別れの場は客席もしん…とする感動ポイント。
    そして血と犠牲の果てに、やがて天神として崇められる“聖なるものの誕生”が立ち上がる。
  • 🏯📜 寺の縁起が香る世界観
    道明寺ゆかりの伝承を背景に、中世的な語り物の空気を一気に味わえる一本。

⚔️ 車引 〜三つ子の忠義、牛車の前で交錯〜

『車引』三兄弟と藤原時平

『車引』三兄弟と藤原時平

都・吉田神社のあたり。白太夫の三つ子のうち、梅王丸菅丞相桜丸斎世親王に仕え、松王丸藤原時平の家臣。時平の策で菅丞相と斎世親王が失脚したと聞いた梅王丸・桜丸の二人は、主君の無念を晴らそうと、参詣に向かう時平の牛車に立ちはだかります🔥。

そこへ松王丸が現れ、兄弟といえど志は別、我が忠義を見よと言わんばかりに割って入ります🛡️。やがて牛車から時平本人が姿を見せ、その威厳に梅王丸・桜丸も思わず気圧されます😨。

時平は松王丸の働きを評価し、「その忠義に免じて今回は見逃す」と宣言。三兄弟も、父白太夫七十の賀の祝が済むまでは遺恨を預けると約して、その場は収まります。――同じ親から生まれた三人の、別々の忠義が衝突する、緊張感あふれる場面です。

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 🎭💥 浄瑠璃の小場面を“荒事”で拡張
    原作では短い場面を、歌舞伎が荒事(あらごと)の力感で一幕に昇華。
    三味線のリズムに乗る勢い×様式美がたまらない!
  • 🐂🛞🌸 花道名場面:飛び六方
    梅王丸が飛び六方で花道引っ込み→桜丸が追う→二人でにっくき藤原時平の牛車の前へ!
    ここは胸がワクワクする必見の流れ
  • 🎨👹 隈取&髪型で性格が一目瞭然
    梅王丸:筋隈/五本車鬢 松王丸:二本隈/板鬢 桜丸:むきみ/童子髷
    藤原時平:藍隈の公家荒れ(口中真紅=炎のイメージ)で超人的な迫力。
    さらに三兄弟は紫の童子格子、衣裳は梅=梅柄/桜=桜柄/松王丸=白地に緑の松で視覚も楽しい。
  • 🧊📸 “見得”のオンパレード
    松王丸の横見得・石投げの見得、梅王丸の元禄見得など、キメ所作の連打
    役者の個性と型の美がガツンと決まる快感。
  • 🧰✨ 歌舞伎のエッセンス凝縮
    荒事・和事・道化まで役柄が揃い、“これぞ歌舞伎”の工芸品のような一幕。

🏵️ 賀の祝 〜祝宴の庭に落ちる影〜

『賀の祝』桜丸切腹

『賀の祝』桜丸切腹

河内・佐太村にある菅丞相の下屋敷。白太夫の七十の祝いにあわせ、庭には丞相が愛した梅・松・桜の木が並び、千代八重の三人の女房たちが慌ただしく支度を整えています🎉。

そこへ梅王丸松王丸が到着。吉田神社でのいさかいの尾を引き、口論はやがて衝突へ――その拍子に桜の枝が折れてしまいます💥。祝いの席に走る不吉なきしみ。

二人が去ったのち、入れ替わるように桜丸が姿を見せると、父白太夫は一振りの腹切り刀を差し出します🗡️。斎世親王苅屋姫の逢瀬を手引きしたことで事態をこじらせた――その責めと悔いを抱えた桜丸は、すでに覚悟を固めていました。

折れた桜枝は、若き命の行く末を静かに示すしるし。祝宴の場で家族の情と忠義がせめぎ合い、物語は決定的な転回点へと向かっていきます…。

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 🏞️🌸 様式美→田園詩へ
    荒事の『車引』に対して、ここはのどかな田園の家で進む一幕。
    力感よりも詩情・余韻を味わうのがポイント。
  • 🎁🔮 “祝いの品=不吉の暗示”の連鎖
    嫁三人の贈り物がすべて桜丸の運命を示す小道具に。
    千代の頭巾 → 白太夫が投げ返す寒さ(不幸)が戻る。
    の三本扇(梅・松・桜) → 神社でのくじ占い桜だけ選ばれない
    ・帰宅すると桜の枝が折れている
    八重の白木の三宝 → 本来は祝い盃用が、腹切り刀をのせる台に…😢
  • 🚪🌸 “奥から桜丸”ただ一つのトリック
    姿を見せなかった桜丸がやつれた姿で奥から現れる
    若者の自責の念はもはや死ぬことでしか晴らせない。
  • 👴💔🔔 白太夫の断腸と野辺送り
    もはや救えないと悟る白太夫は、桜の木が折れても沈黙
    結末では七十の父が鉦を鳴らし、息子の野辺送りへ――胸えぐられる悲劇。
  • 🌤️→🌆 光の移ろいで感じる悲哀
    春の陽光が夕もやへと変わり、百姓家の静かな悲劇を包み込む。

🏫 寺子屋 〜親の情と主の恩がせめぎ合う〜

『寺子屋』いろは送り

『寺子屋』いろは送り

芹生の山里で寺子屋を営む武部源蔵は、流罪となった菅丞相の御子・菅秀才を密かに匿っています。しかし藤原時平方に露見し、「首を差し出せ」と厳命が下ります📜。源蔵は忠義と人としての情の間で揺れ動きます。

そこへ、寺入りしたばかりの少年小太郎がやって来ます。澄んだ面差しを前に、源蔵は苦渋の決断を下す——「小太郎身代わりとして菅秀才を守る道」を選ぶのです。妻の戸浪もまた、重い選択を共に抱きしめます😣。

やがて首実検の役目を負った松王丸が到着。子どもたちを確かめたのち、差し出された首を一瞥し、「確かに菅秀才に相違なし」と告げて一行は引き上げます🗡️。

安堵も束の間、息子を迎えに来た千代が「若君のお身代わり、お役に立ちましたか」と胸を張る。続いて再び現れた松王丸は、「女房、喜べ。せがれは大義を果たした」と明かすのです。——わが子を捧げてでも守り抜く忠義。親の愛と主への恩が、痛烈に交錯する名場面です🕯️😢。

🎬 ココが見どころ! ☝️🤓

  • 🎯 クライマックスは「首実検」。桶の中身を前に、全員の視線と呼吸が一点に収束。偽首と見破られるか――劇場全体が止まる瞬間。
  • 🗣️ 名台詞 「せまじき者は宮仕えじゃなあ」。短い一言に、主人への忠義と教師としての良心の板挟みが凝縮。後段で松王丸の嘆きとも重なり、物語の芯になる。
  • 😷 松王丸の二面性。病は仮病、役人の前では悪人、内面は恩ある菅丞相への忠誠。戸浪にぶつかっての「ぶ、無礼者め!」は、張り詰めた心のほころびを見せる名場面。
  • ⚔️ 首桶を前にした複雑な心境
    ・もし首が小太郎 → 策は成功だが、わが子を犠牲にした苦悩。
    ・もし首が菅秀才 → 恩義に報いる道は絶たれるが、わが子は生き残る。
    この二重の思いが一瞬に交錯する。
    奥で首がはねられる気配に動揺し、戸浪にぶつかる場面も「自分の子が討たれたかも」という心の揺れを映す。
  • 👪 親と師の極限の選択。身替りをめぐる決断は残酷でありながら、道義や忠義に突き動かされた人間の姿として描かれる。そこにあるのは運命に殉じる美しさであり、時代を超えて人々の心を打ち続けてきた。
  • ⛩️ 幕切れの象徴的な構図。二重舞台の上に菅秀才、下手に松王夫婦、上手に源蔵夫婦、外に小太郎の遺骸――対比の中に天の理を映すような配置で、泣き笑いが胸に沈む。
  • 🎼 浄瑠璃「いろは送り」「いろは書く、子はあえなくも…」と哀切が満ち、幕が降りてから余韻にひたれるのが真髄の名舞台。

🎭 『菅原伝授手習鑑』と菅丞相 — 近年の名優&これからの期待

歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』は、幾度も上演され、多くの名優が各役を磨いてきました。その柱となるのが主役の菅丞相(菅原道真)です。

💎 いま最高の菅丞相:十五代目・片岡仁左衛門

菅丞相は、十一代目(1858-1934)・十三代目(1903-1994)の仁左衛門が大切にしてきた家の大役。十三代目は視力が衰える晩年にあっても「心眼」で演じ、観客の胸を打ちました。
平成に入り、十五代目が病気から復帰後に初めて菅丞相を勤めてからは、ここを大きな転機に名優としての階段を駆け上がることに。現在、菅丞相をもっとも高い水準で体現するのは十五代目・片岡仁左衛門――この評価に間違いはありません。

🔰 これからの期待:松本幸四郎

2025年9月、幸四郎が仁左衛門とのダブルキャストで菅丞相に挑みます。Aプロでは筆法伝授の場面で、仁左衛門・菅丞相の目前で武部源蔵を勤める配置。まさに“筆法ならぬ丞相の心法を間近で伝授される”座組です。

仁左衛門自身も幸四郎に向けて以下のように語っています。

仁左衛門「演技を作っても意味はない。台本を読み込み、自分なりの丞相様を心に描き、その気持ちになりきって自然体で動くこと」📝歌舞伎美人より

名優からのこの言葉を胸に、幸四郎が自分の菅丞相をどう立ち上げるか――この秋、最注目の見どころです。✨

🎤 片岡仁左衛門が語る「菅丞相」への心構え
「天神様(菅丞相)を勤めるときは、必ず精進潔斎して牛肉は口にしない。牛は天神様の御使いだからね。舞台に上がる前には『これから勤めさせていただきます』という気持ちで臨み、終わったら『ありがとうございました』と感謝の気持ちを持つ。でも、舞台上では感謝の気持ちすらなく、自分がその存在になることが大切なんです。」
(NHK Eテレ「古典芸能への招待」2023年5月28日放送より)

⛩️ 仁左衛門は演じるたびに菅原道真公を祀る太宰府天満宮に参拝し、2025年9月公演の前には京都・北野天満宮にお参りしました。
🙏 果たして、共に菅丞相を勤める松本幸四郎も天神さまにお参りするのでしょうか…。

🤔 三兄弟を得意とする役者は?

『菅原伝授手習鑑』のには、松王丸・梅王丸・桜丸という三兄弟が登場し、それぞれ実事・荒事・和事の性格が与えられ、役者の持ち味がはっきり出てきます。
古今の名優たちが三兄弟をどう演じてきたか――そこに注目するのも、この演目を楽しむ大きなポイントです✨。

🎭 松王丸
近年は松本白鸚中村吉右衛門の兄弟が競うように勤めてきましたが、吉右衛門が亡くなり白鸚も高齢となった今は世代交代の時期。
白鸚の息子で吉右衛門の甥にあたる松本幸四郎、そして令和元年9月に吉右衛門の代役を務めた尾上松緑が新たな担い手となり、2022年に続き2025年9月にもダブルキャストで松王丸を勤めます。
また、吉右衛門を岳父とする八代目・尾上菊五郎も、寺子屋の松王丸を岳父ゆずりの「播磨屋型」で演じています。⚔️

🔥 梅王丸
豪快な荒事の梅王丸は、吉右衛門の当たり役のひとつでした。その孫にあたる六代目・尾上菊之助が2025年6月の襲名披露公演で、わずか11歳にして挑戦。「祖父がずっと勤めてきた役なのでうれしかった」(『KabuKabu』P48)と語り、世代を超えて役が受け継がれていく姿に客席も沸きました。
また、2025年9月の秀山祭では吉右衛門を大叔父にもつ市川染五郎が車引の梅王丸を初役で勤めます。「大叔父をみて憧れていた役を演じさせていただけるのは本当にありがたいことです。」(歌舞伎美人)と語っており、こちらも新たな挑戦として大きな期待が寄せられます。💥

🌸 桜丸
和事の柔らかさと気品が求められる桜丸は、中村梅玉の当たり役。八代目・菊五郎(菊之助時代)も得意とし、音羽屋に縁深い役柄です。
さらに2025年9月には、中村歌昇・中村萬太郎・中村時蔵・尾上左近といった次代を担う若手が演じます。多彩な顔ぶれがそろうのも楽しみです。✨




菅原伝授手習鑑の上演情報

歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』の上演情報を紹介します。

2025年9月 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」

2025年は松竹130周年を記念して歌舞伎三大名作の通し上演が行われます、3月の『仮名手本忠臣蔵』に続き、9月は『菅原伝授手習鑑』が通し上演されます。

2025年10月 博多座・京都南座「市川團十郎特別公演」

2025年10月に博多座と京都南座において市川團十郎特別公演が行われ、『菅原伝授手習鑑・車引』が上演されます。

🎭 まとめ:『菅原伝授手習鑑』が「三大名作」と呼ばれる理由

  • 🌏 スケールの大きな物語:全五段にわたり、政争・恋愛・親子の別れが複雑に描かれる。
  • 😭 心を打つ名場面の数々:「加茂堤」🌸「筆法伝授」✍️「道明寺」⛩「車引」🐂「賀の祝」🥂「寺子屋」🏫は単独でも人気。
  • 👨‍👩‍👦 多彩なキャラクター:三つ子兄弟を中心に、忠義・親子愛・裏切りなど人間模様が鮮やか。
  • ⭐️ 名優が磨き上げてきた役柄:仁左衛門・幸四郎をはじめ、世代を超えて受け継がれる名演。
  • 今も上演され続ける魅力:2025年9月には歌舞伎座で通し上演が予定されており、現代の舞台でも生き続けている。

✨ 歌舞伎の様式美と人間ドラマが凝縮された『菅原伝授手習鑑』。
その迫力と感動は、生の舞台でこそ味わえる特別な体験です。
ぜひ一度、劇場で観劇してみてください!🎶🎭




参考資料

【ウェブサイト】
歌舞伎公式総合サイト『歌舞伎美人』
歌舞伎オンザウェブ
文化デジタルライブラリー

【書籍】
増補版 歌舞伎手帖
あらすじで読む 名作歌舞伎50選
最新版 歌舞伎の解剖図鑑
役者がわかる!演目がわかる!歌舞伎入門
KabuKabu 八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助 襲名披露特集
「ほうおう 2025年9月号」
「歌舞伎座筋書 令和七年六月」

【テレビ】
『古典芸能への招待 歌舞伎俳優・片岡仁左衛門の世界』NHK Eテレ(2023年5月28日放送)
『古典芸能への招待 歌舞伎「菅原伝授手習鑑・道明寺」』NHK Eテレ(2020年3月29日放送)
「土曜ゴールデンシアター『車引』『賀の祝』 BS松竹東急 (2023年3月18日放送)」
「日曜ゴールデンシアター『加茂堤』『寺子屋』 BS松竹東急 (2025年5月17日放送)」

※本記事の制作について
一部AIを用いたライティング・画像編集支援を行っていますが、最終的な編集・事実確認・表現調整はすべて人の手で行っております

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