【初心者必見】歌舞伎座の一幕見席は本当にお得?値段や混雑状況も解説
歌舞伎座には一幕見席という、普通の席より安い値段で一幕だけを見ることができる特別な座席があるのをご存知でしょうか?
一幕見席は他の劇場にはあまりないシステムなので、歌舞伎の初心者の方には、チケットの料金や買い方、混雑状況の確認の仕方、本当にお得な席なのかなど、よくわからないのではないでしょうか。
ここでは一幕見席とはどのような席で、どうやってチケットをとるのか、どこから入場するのか、そしてお得な楽しみ方などを、私が実際に一幕見席を見てきた体験をもとに解説します。歌舞伎座で一幕見席を利用するときの参考にしてくださいね。
新型コロナウイルスの影響で長らく販売が中止されていた歌舞伎座の一幕見席ですが、2023年6月の公演から再開されることになりました。これまでとは違い当日席だけでなく前日から予約することも可能になった新しいシステムについても解説します。
目 次
そもそも一幕見席とは何?
一幕見席とは、あまり聞き慣れない言葉ですが、その名の通り公開中の芝居の「一幕」だけを見ることができる席のことです。幕見席と呼ばれることもあります。
歌舞伎座の一幕見席は、3階B席の上の4階になります。正面玄関左手の専用入り口から入場し、エレベーターで4階まで直行します。
かつては全席自由席(椅子約90席、立ち見約60席)でしたが、新型コロナウイルスによる販売中止の期間が明けて販売が再開された2023年6月の公演からは、椅子席のみとなり、予約席約70席、当日自由席約20席となりました。車椅子の方のためのスペースもあります。椅子は3階席のものとほぼ同じです。
下の階に降りたり売店やレストランを利用することはできませんが、飲み物の自動販売機とコインロッカーはあり、受付で「筋書き(プログラム)」「英語プログラム」「オペラグラス」を購入することもできます。イヤホンガイドは通常より安い500円で借りられますが、英語のイヤホンガイド・字幕ガイドはありません。
歌舞伎の公演は「昼の部」「夜の部」に分かれていて、それぞれの部が3つから4つの演目で構成されています。一つの演目は幕が開いてから閉まるまでなので、「幕」と呼びます。幕の上演時間は内容によって異なりますが、だいたい30分から2時間ぐらいです。
普通のチケットは「昼の部」か「夜の部」のどちらか全部を見ることになりますが、どちらもだいたい4時間ぐらいかかります。しかし、一幕見席のチケットは「幕」の一つだけを選ぶことができるので、短い場合は30分ぐらいで終わることもあります。
例えば、次のような公演内容のときの上演時間は以下のようになります。
【昼の部】 3幕
- 菅原伝授手習鑑 加茂堤(27分)
- 菅原伝授手習鑑 筆法伝授(1時間23分)
- 菅原伝授手習鑑 道明寺(1時間52分)
【夜の部】 4幕
- 八陣守護城(24分)
- 羽衣(30分)
- 人情噺文七元結(1時間14分)
- 道行故郷の初雪(25分)
もし、【夜の部】の「人情噺文七元結」だけが見たくて他の演目は見なくてもいいなら、一幕見席で入場すれば見たい演目だけを見られることになります。
歌舞伎座の一幕見席はお得なのか?
一幕見席は歌舞伎座が一番座席数も多く、他の劇場にはあまり設置されていません。好きな演目だけを安く見られる席となっていますが、初心者にとって本当にお得な席なのかどうかを検証してみました。
一幕見席チケットの値段
一幕見席のチケットの値段は、見る幕の長さによって異なりますが、だいたい、500円〜2,500円ぐらいです。
チケットの購入は、予約席は公演前日の12時(正午)から専用のサイトで一人四枚まで購入可能となっています。自由席は公演当日に歌舞伎座一階の一幕見席専用窓口で一人一枚購入可能です。予約席、自由席ともに予定販売枚数に達したところで終了となります。
幕ごとのチケットの値段は、一幕見席購入の専用サイトである「歌舞伎座一幕見席オンラインチケット」で確認できます。
一例として次のような公演の場合、料金は以下のようになっています。(2023年7月歌舞伎座公演)
昼の部 | |
---|---|
菊宴月白浪<忠臣蔵後日譚 序幕> (11:00開演/上演時間 約55~65分) |
1,300円 |
菊宴月白浪<忠臣蔵後日譚 2幕目> (12:35ごろ開演(予定)/上演時間 約55~65分) |
1,300円 |
菊宴月白浪<忠臣蔵後日譚 大詰> (13:55ごろ開演(予定)/上演時間 約55~65分) |
1,400円 |
夜の部 | |
神霊矢口渡 (16:00開演/上演時間 約60~70分) |
900円 |
神明恵和合取組<め組の喧嘩> (17:25ごろ開演(予定)/上演時間 約115~125分) |
1,900円 |
鎌倉八幡宮静の法楽舞 (19:55ごろ開演(予定)/上演時間 約55~65分) |
1,200円 |
一幕見席の料金は演目の内容や出演する役者さんによって違いがあるのではなく、基本的に時間の長さで決まるようです。昼の部、夜の部ともに幕ごとの料金の合計は4,000円(3階B席と同じ)になるようになっているので、特別割安になっているわけではありません。
一幕見席のメリット
歌舞伎の公演は四時間ぐらいの長丁場になり、値段も一番安い3階B席で4,000円になります。一幕見席の場合、自分の見たい演目や役者さんだけを選ぶことができ、時間とお金の節約にもなるのが最大のメリットです。
また、歌舞伎に興味があるので、ちょっと見てみたいけど4,000円は高いと思っている人が、お試しで見てみるのにも使えます。
一幕見席のデメリット
一幕見席は入れるのは4階の専用席だけなので、歌舞伎座劇場内にある展示物を見たり、売店やレストランを利用することはできません。そして舞台から一番遠くなってしまいます。
以前は当日窓口に並んで買うしかなかったのが予約できるようになったのはありがたいのですが、自由席が約20席と少なく今のところ立ち見もできないようなので、当日ちょっと近くに寄ったので見てみようと思っても席が取りにくくなっていると言えます。
一幕見席のお得な見方を紹介
それでは、どうすれば初心者の人が一幕見席を一番お得に楽しむことができるのでしょうか? 具体的な一幕見席の楽しみ方を以下に紹介します。
日にちを決めて予約して行く
予約ができるようになったことで、「初めてなので試しに一幕だけを見てみたいという」方にとっては一幕見席は利用しやすくなりました。予約のためには一幕見席専用販売サイト(※要クレジットカード)で見たい公演の前日昼12時から予約できます。最大4枚まで予約できるので友達を誘って行くこともできますね。
ついでに近くの観光を楽しむ
一幕見席での観劇の前後で銀座をぶらぶらとショッピングや食事を楽しむ“銀ぶら”してみるのはいかがでしょうか。他にも近場の築地場外市場や浜離宮恩賜庭園など、ちょっと足を伸ばせばいろいろと観光できるところがありますよ。
歌舞伎座タワーを観光する
2013年に新しくなった歌舞伎座は、上階にある歌舞伎座ギャラリーに歌舞伎に関する様々なものが展示され、体験コーナーなどもあります。(2023年6月現在歌舞伎座ギャラリーは一部エリアのみ開放)また、地下の木挽町広場には歌舞伎グッズやお土産がたくさん売られています。
歌舞伎座タワーの中で観光や買い物をしながら、合間に一幕見席で歌舞伎観劇をしてみるのもいいですね。
座席に余裕がある演目を見に行く
人気のある役者さんや演目では、一幕見席はすぐに予約でいっぱいになり、当日席も朝の10時から並ばないとチケットが買えないということもあります。
役者や演目にあまりこだわらないのであれば、平日に空いていそうな演目を見に行くとわりと簡単にチケットが手に入ります。また、実際に2023年6月公演のときに4階の一幕見席を見た感じでは、自由席はほぼいっぱいになっていたようでしたが、予約席にはまだ空きが見られました。
あらかじめスマホで「歌舞伎座一幕見席オンラインチケット」に登録(※要クレジットカード)しておけば、その場でスマホから予約席の購入ができるのでおすすめですよ。
歌舞伎座の一幕見席の混雑状況
歌舞伎座の一幕見席の混雑状況は、予約席なら「歌舞伎座一幕見席オンラインチケット」で確認できます。当日自由席の場合は以下の歌舞伎座の電話番号に問い合わせれば教えてくれます。
TEL:03-3545-6800(代)
次の発売開始まで何人が並んでいるのかなど、けっこう詳しく教えてくれるので、歌舞伎座の近くにいるときなら、それを聞いてから行くか行かないか判断してもいいでしょう。
また、公演が始まってから何日か経っているのなら、前日の混雑状況や土日と平日の様子などもある程度は電話で教えてもらえるので、いつ見に行くのがいいか参考になりますよ。
歌舞伎座のチケットをウェブで購入できる、「松竹webチケット」に登録しているのなら、通常の座席の予約状況を見て、3階席がどれだけ埋まっているのかを見れば、ある程度一幕見席の混雑状況も予想できます。
上図は2020年2月18日に確認した歌舞伎座の2月公演の予約状況です。値段が一番手頃な3階B席から埋まっているのがわかります。
ということは、3階B席に空きがあれば、一幕見席も余裕がある可能性が高いのです。
予約状況は毎日変わるので注意が必要ですが、一つの目安としてぜひ参考にしてくださいね。
他にもTwitterをやっている人であれば、「歌舞伎座幕見」で検索すると、混雑状況を教えてもらえる場合があります。
歌舞伎座の一幕見席チケットの買い方
歌舞伎座の一幕見席は、予約席は公演前日の12時(正午)から専用サイト「歌舞伎座一幕見席オンラインチケット」のみで購入(※要クレジットカード登録)できます。一幕につき四枚まで購入でき、チケット代と別にシステム使用料としてチケット一枚につき110円がかかります。購入者には専用のQRコードが発行されるので、入場時にはスマートフォンの画面にQRコードを表示するか、印刷したものが必要になります。
なお、松竹のチケット販売サイト「チケットWEB松竹」に登録しているIDでは一幕見席オンラインチケットの購入はできません。また松竹歌舞伎会の公演ポイントも付加されませんのでご注意ください。
自由席の場合は、当日の10時から歌舞伎座の正面玄関左手にある一幕見席チケット売り場で、その日に上演されるすべての幕のチケットを一人各幕一枚購入可能(※現金のみ)となっています。
なお、座席は幕ごとに総入れ替えとなっているので、続きの幕のチケットがあっても一度外に出なければなりません。
チケットの販売状況は上の写真にあるボードで知らせてくれます。また、案内係の人が必ずいるので、「一幕見席が見たいのですが」と聞けば、なんでも丁寧に教えてくれるので安心です。
指定席 | 自由席 |
---|---|
販売開始時間 | |
前日12時から販売 | 当日10時から販売 |
販売終了時間 | |
各幕の開演10分前まで | 最終幕開演10分後まで |
購入場所 | |
専用サイト | 歌舞伎座一階窓口 |
支払い方法 | |
クレジットカード | 現金 |
購入枚数 | |
一人四枚 | 一人各幕一枚 |
また自由席の場合、一人が窓口に先に並んでおいて、遅れて来る友人の分もまとめて購入することはできません。あくまで一幕につき一人一枚です。遅れてきた友人を並んでいる自分の後ろに入れることも禁止となっています。なお、支払い方法は現金のみとなっています。
チケットには入場番号が振られており、開演の20分前までに4階幕見入場口に集まれば、その番号順に入場させてくれます。時間に遅れてしまうと後に回されてしまうので注意が必要です。
並んで購入するときは、夏場は暑さや熱中症対策で日傘や飲み物、冬は寒さ対策で厚着やカイロなどを忘れないようにしましょう。
一幕見席以外の一般の座席の購入の仕方は以下を御覧ください。
歌舞伎座の一幕見席からの舞台の見え方
一幕見席は舞台から一番遠くなりますが、実際の見え方はどのような感じでしょうか? 上の写真は一幕見席の最前列から舞台を見た様子です。
3階席と比べても、見え方にそれほど大きな差があるわけではありません。花道も七三(花道上で役者が演技をする見せ場)はぎりぎり見えます。
ただし、やはり距離が遠いので役者さんの表情を見るためにはオペラグラスなどが必要になります。また、座席は2列だけですが、前の座席は手すりが少し邪魔になるかもしれません。
個人的には3階A席の前のほうがおすすめですが、3階B席にして浮いたお金で少し高いお弁当を食べてみたり、一幕見席で昼の部と夜の部を一幕ずつ観てみるのもいいでしょう。
ぜひ、実際に歌舞伎座に足を運んで、自分なりの座席の選び方を研究してみてくださいね。
歌舞伎座の座席一覧
歌舞伎座の座席の一覧は、以下のリンクからご覧いただけます。
歌舞伎座座表(歌舞伎美人)
一幕見席は以下のリンクからご覧ください。
歌舞伎座一幕見席(歌舞伎座)
まとめ
歌舞伎座の一幕見席を初心者の方が楽しむための方法を解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
一幕見席は自分の見たい幕(演目)だけを選んで安く観られるのは魅力ですが、前日からしか予約ができなかったり、当日席は並ばないと購入できない可能性があるなどデメリットもあります。
お試しで比較的空いている公演を見に行くだけでなく、歌舞伎の芝居を見ること以外の観光や買い物などと組み合わせれば、もっと楽しみ方が広がります。
ぜひ、自分にあった一幕見席の楽しみ方を見つけてくださいね。