【歌舞伎役者の本】生ける人間国宝が語る歌舞伎の真髄とは!
歴代の歌舞伎役者で人間国宝に認定された人は25人いますが、令和三年現在も現役で舞台に立ち続けている役者は6人います。
人間国宝という称号を与えられるほどの役者が、歌舞伎役者としてどのような人生を歩んできて、歌舞伎に対してどう考えて舞台に立ち続けているのかを知ろうとすれば、彼らが実際に語った言葉にふれるのが一番です。
ここでは、「人間国宝」の称号を持ち、現在も現役で活躍する歌舞伎役者の、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂東玉三郎、中村吉右衛門の4人が、自らの言葉で語った本やDVDなどを紹介していきます。
400年の歌舞伎の伝統を受け継ぐ彼らの言葉は、私達が生きていく上でのヒントや新たな気づきを与えてくれる貴重なものになりますよ。
目 次
七代目 尾上菊五郎
七代目尾上菊五郎(屋号:音羽屋)は、七代目尾上梅幸の長男として生まれ、昭和48年(1973年)に七代目尾上菊五郎を襲名します。音羽屋の伝統である「兼ねる役者」として、立役・女形の両方で活躍し、平成15年(2003年)に人間国宝に認定され、現在は菊五郎劇団を主催しながら日本俳優協会の理事長を務めるなど、歌舞伎界を支えてきた役者の一人です。
息子は五代目尾上菊之助として菊五郎の後継者として活躍しており、娘は女優の寺島しのぶ、二人の孫、尾上丑之助、寺嶋眞秀も若くして歌舞伎の舞台を踏んでいます。
菊五郎の色気
「色気ですか・・・。70、80になっても、艶を失いたくないと思っています。艶には、すべてが含まれている。豊かな気がする。いつまでも、艶のある役者って言われたいですね。」(尾上菊五郎)
七代目尾上菊五郎へのインタビューや得意とする演目についての詳細な解説も載っている、七代目菊五郎のファンから初心者まで楽しめる内容の本です。
少年期からの芸への取り組み方や、菊五郎を襲名する時の舞台裏など、本人の赤裸々な思いが綴られている貴重な資料ともなっています。
タイトルについているように、菊五郎の芸になくてはならない「色気」についても、その演じてきた役柄を通して語られており、菊五郎を知りたいファンにとっては読み応えのある一冊です。
七代目菊五郎の芝居(写真集)
平成元年に出版された七代目尾上菊五郎の40代のころの舞台写真のみで構成された、演じている作品ごとの解説も載っている豪華写真集です。
菊五郎が得意とする役だけでなく、初演以降演じることのない役の写真も掲載されている、ファンにとってはたまらない貴重な写真集となっています。
七代目尾上菊五郎について詳しくは以下の記事も御覧ください。
十五代目 片岡仁左衛門
十五代目片岡仁左衛門(屋号:松嶋屋)は、衰退していた上方歌舞伎の復興に貢献した十三代目片岡仁左衛門の三男として昭和19年(1944年)に生まれ、5歳の時に本名の片岡孝夫で初舞台を踏み、53歳で十五代目片岡仁左衛門を襲名します。
すらりとした長身と端正な顔立ちもさることながら、当代随一の立役としての実力で人気があり、現代の歌舞伎界の頂点に立つ役者の一人です。
平成27年には人間国宝に認定され、現在も舞台の最前線に立ちながら若手役者への指導も熱心に行っています。
仁左衛門恋し
「先人たちが残してくれた芝居、その芸を、今を生きる役者は、未来に伝える責任があるんですよ。その責任は重いけれど投げることはできないからね。」(片岡仁左衛門)
十五代目片岡岡仁左衛門にノンフィクション作家の小松成美がインタビューした本です。
内容は、仁左衛門を襲名することになったときの気持ちや、一年に及ぶ闘病生活で感じたこと、歌舞伎への思いや盟友であった中村勘三郎のことなど多岐にわたります。
舞台ではわからない一人の人間としての片岡仁左衛門の素顔に触れることができる一冊です。
片岡仁左衛門の芸と心 ~密着1年! 歌舞伎に生きる十五代目の信念と情熱~(DVD)
こちらは2012年にテレビで放送された、十五代目片岡仁左衛門の芸の真髄と生き方に迫る密着ドキュメンタリー映像のDVDです。
一年に渡って片岡仁左衛門に密着したドキュメンタリーで、舞台だけでなく楽屋裏や稽古風景、孫の千之助との共演の様子やロングインタビューなど、永久保存版の貴重な映像満載です。
十五代目片岡仁左衛門について詳しくは以下の記事も御覧ください。
五代目坂東玉三郎
五代目坂東玉三郎(屋号:大和屋)は、昭和25(1950年)年に東京都内の料亭の五男として生まれ、体を鍛えるために始めた日本舞踊から歌舞伎役者の道ヘと進むことになります。
14歳で五代目坂東玉三郎を襲名し、25歳のときには守田勘彌の養子となって、歌舞伎女形としての地位を着々と固めていきます。
2012年に人間国宝に認定され、現在も歌舞伎女形のトップとして後輩の育成にも目を向けながら舞台に立ち続けています。
坂東玉三郎 すべては舞台の美のために (和樂ムック)
現代の女形のトップとして名高い五代目坂東玉三郎の、“美”にかける情熱の凄まじさが伝わってくる本です。
雑誌「和樂」に掲載された現代を代表する伝統芸人、職人、知識人との対談や、プライベートでの写真などを通して、舞台上で玉三郎がいかにして「美しさ」を表現しようとしているのか、そのプロセスを知ることができるファン必見の一冊です。
プロフェッショナル 仕事の流儀 妥協なき日々に、美は宿る 歌舞伎役者 坂東玉三郎の仕事(DVD)
「(プロフェッショナルとは)どんな状態でも、これだけの物をお客様に提供できるという・・・ある種の線をきちっと保てること。」(坂東玉三郎)
NHKの人気番組「プロフェッショナル」で2008年に放送された歌舞伎役者・坂東玉三郎の仕事に迫るDVDです。
玉三郎が舞台にかけるストイックな情熱と、その裏で人知れず積み重ねられた努力が女形のトップとして至高の芸を生み出していることを本人の口から語られるDVDです。
化粧道具へのこだわりや、長年の盟友・片岡仁左衛門と舞台裏でのお互いの芸に対する妥協無いやりとりも大きな見どころです。
五代目坂東玉三郎について詳しくは以下の記事も御覧ください。
二代目 中村吉右衛門
二代目中村吉右衛門(屋号:播磨屋)は、昭和19年(1944年)に初代松本白鸚の次男として生まれますが、初代中村吉右衛門の養子となります。実兄の二代目松本白鸚とともに少年時代から歌舞伎の舞台に立ち、重厚な立役として活躍します。
テレビの時代劇「鬼平犯科帳」で主人公の鬼平を長く努めたことで知名度も高く、2011年に人間国宝に認定されます。
娘が尾上菊之助に嫁ぎ、孫の尾上丑之助と歌舞伎で共演すると、おじいちゃんとしてその成長ぶりを温かく見守っています。
夢見鳥
「江戸の文化の何がいいかといって、戦争のない時代にできたことではないでしょうか。そんな時代に熟成した文化である歌舞伎の香り、これを大切にしてほしい。」(中村吉右衛門)
幼少期からの歩みに始まり、初代吉右衛門の養子としての苦労や、歌舞伎を日本の伝統芸能としていかにして世界に通じるものにしていくのかという真摯な思いなど、二代目中村吉右衛門の歩みを赤裸々に語る自伝的エッセイ集です。
戦争を経験したことからくる平和な時代だからこそできる歌舞伎への感謝と、それを後世につなげて行こうとする吉右衛門の言葉に魅了される一冊です。
まとめ:歌舞伎の生ける人間国宝が語る言葉が心に沁みる
現代の歌舞伎役者で「人間国宝」と呼ばれる役者の本やDVDを紹介してきましたが、いかがでしょうか?
七代目尾上菊五郎、十五代目片岡仁左衛門、五代目坂東玉三郎、二代目中村吉右衛門は、主役として舞台を飾るだけでなく若き歌舞伎役者たちを指導する立場にもあります。
彼らが歌舞伎界に残してきた足跡と、これからの歌舞伎にかける思いを知ることで、より歌舞伎の奥深さを知ることができますよ。