【楼門五三桐】(さんもんごさんのきり)五右衛門の歌舞伎名セリフ「絶景かな」が心に響く!

【楼門五三桐】(さんもんごさんのきり)五右衛門の歌舞伎名セリフ「絶景かな」が心に響く!

スポンサーリンク

歌舞伎の演目「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」は、石川五右衛門の名セリフ「絶景かな」が有名な人気の演目です。

この記事では「楼門五三桐」が歌舞伎の演目となった歴史タイトルの由来あらすじ見どころ名セリフなどについて解説し、実際に舞台で見られる上演情報DVDの情報などを紹介していきます。

歌舞伎演目「楼門五三桐」の読み方は?

京都南禅寺の三門(山門)
歌舞伎の演目「楼門五三桐さんもんごさんのきり」は、初代・並木五瓶なみきごへいによって書かれた時代物の全五幕の演目で、安永7年(1778年)4月の大坂角の芝居で初演されました。

初演時は「金門五三桐きんもんごさんのきり」と言いましたが、二段目の「南禅寺山門」が単独で上演されることが多く、そのうちタイトルも現在の「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」と改められて現在に伝わっています。

「楼門」とは2階建ての屋根のある寺社の門のことで、本来は「ろうもん」と読みますが、この演目の舞台が南禅寺の「山門(さんもん)」であったためか、「楼門五三桐さんもんごさんのきり)」という読み方になっており、略して言うときは「山門(さんもん)」と言います。

ちなみに実際の京都・南禅寺では、「山門」ではなく「三門」となっており、その理由は「三門とは、仏道修行で悟りに至る為に透過しなければならない三つの関門を表す、空、無相、無作の三解脱門を略した呼称です。(南禅寺公式サイトより)」となっています。

「楼門五三桐」のあらすじと見どころ

楼門五三桐は、上演時間はわずか15分ほどですが、豪華絢爛な舞台見事な見得などの歌舞伎の様式美が次々と披露され、他にも五右衛門の名セリフや豪快な大薩摩の演奏など見どころに溢れた人気演目です。

ここでは物語の背景と芝居のあらすじ、数々の見どころとなる演出などを紹介します。

「楼門五三桐」のあらすじ

【物語の背景】
京の都では大名や公家、商人の屋敷を盗賊たちが襲う事件が頻発していました。中でも石川五右衛門は盗賊たちの首領として君臨し、大盗賊として恐れられ、なんと天下人である真柴久吉の秘蔵の香炉「千鳥」を盗んでしまうほどでした。これには天下人の久吉も黙っておれず、五右衛門と盗賊たちを取り締まるように家臣たちに命じるのですが・・・。

【あらすじ】
満開の桜に包まれた夕暮れ時の京都東山・南禅寺の楼門の上で、久吉の追っ手から身を隠している大盗賊・石川五右衛門が悠然と花見を楽しんでいると、どこからともなく一羽の白鷹が飛んできて五右衛門のそばの欄干に止まって羽を休めます。

不思議に思った五右衛門が白鷹をよく見ると、白小袖の片袖を咥えているのに気が付き、これを取って見ると血で何か書かれています。

その文章はなんと、明の国の十二代神祖皇帝の家臣・宋蘇卿そうそけいの残した遺言だったのです。

この遺言には、かつて神祖皇帝が久吉宛に使者を派遣したところ、久吉は使者を捕らえてしまったこと。このことを神祖皇帝は恨みに思っており、主君の恨みを晴らそうとして日本に渡った宋蘇卿は久吉にばれて命を落とすことになるということ。そして、宋蘇卿の忘れ形見がなんと五右衛門であるということが書かれていたのです。

元々五右衛門は久吉によって滅ぼされた武智光秀に育てられたので、久吉に対して恨みを持っていましたが、実の父まで殺されていたことを知って、敵である久吉を討つことを決意します。

そこへ、五右衛門の二人の子分が現れますが、実は二人は追手の右忠太左忠太で、久吉の命を受けて五右衛門の子分になりすまし捕らえようと隙を伺っていたのです。

正体を表した二人は五右衛門に飛びかかりますが、五右衛門はこれを難なくあしらって悠然と煙管をくゆらしています。

そこへ一人の巡礼が現れて、楼門の柱に「石川や浜の真砂のつきるとも世に盗人の種は尽きまじ」という一首を、楼門の上の五右衛門に聞こえるように書きつけました。

これを見た五右衛門は巡礼の正体が敵の真柴久吉であると見抜き、とっさに手裏剣を投げつけますが、久吉は手にした柄杓でこれを受け止め、宿敵の五右衛門とにらみ合うところで幕となります。

見どころ

楼門五三桐は上演時間は15分程度の短い内容ですが、歌舞伎の様式美と鮮やかな色彩美に溢れた見どころ満載の演目です。ここではその見どころを4つのポイントで紹介します。

ポイント1:豪華絢爛な楼門が大ゼリでせり上がる!

満開の桜に包まれ、豪華絢爛な装飾が施された南禅寺の楼門の2階に、大盗賊の石川五右衛門がこれまた派手な大百日(百日間髪を伸ばした状態)と呼ばれるカツラとビロードのドテラ姿で登場するという舞台は、何度見ても圧倒されます。

さらに、その楼門全体が大ゼリでせり上がってくると、一階には五右衛門とは対象的な白塗りの顔で爽やかな出で立ちの真柴久吉が一緒にセリ上がって来るという登場シーンは、初演時からの演出となっており、この舞台の大きな見どころです。

ポイント2:五右衛門の歌舞伎名セリフ「絶景かな」

歌舞伎には数々の名セリフがありますが、中でも楼門五三桐での五右衛門のセリフは特に有名なものの一つです。
満開の桜を眺めながら、五右衛門が語るセリフを紹介します。

絶景かな、絶景かな、春の眺めは値千金とは小さなたとえ、この五右衛門が目から万両。もはや日も西に傾き、誠に春の夕暮れの桜は、取りわけ一入一入ひとしおひとしお。はて、うららかな眺めじゃなぁ・・・「石川五右衛門」

冒頭の「絶景かな」というセリフは現代でも見事な景色を見た時によく使われるセリフとなっています。

また、劇中で久吉が楼門の柱に書きつける、「石川や浜の真砂のつきるとも世に盗人の種は尽きまじ」という歌は石川五右衛門の辞世の歌と言われていますが、この歌は白浪五人男の弁天小僧の名セリフの中にも、「浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜」というふうに引用されています。

歌舞伎の名セリフについては以下の記事もご覧ください。

ポイント3:大物役者の対比が見事な「天地の見得」

ド派手な衣装と大物の貫禄を見せつける大百日鬘の石川五右衛門と、豊臣秀吉がモデルの天下人で知勇を兼ね備えた爽やかな真柴久吉が楼門の上と下で対峙して決まるラストシーンは「天地の見得」と呼ばれます。

この二人を演じるためには役者にもそれなりの貫禄が求められますが、近年では五右衛門を中村吉右衛門、久吉を尾上菊五郎のコンビが有名です。

また、平成25年(2013年)の九代目市川中車の襲名公演においては、歌舞伎役者として襲名したばかりの市川中車が五右衛門と久吉の両方を演じるということもありました。

令和になって最初の楼門五三桐は令和3年(2021年)3月の歌舞伎座ですが、五右衛門役を得意とする中村吉右衛門の生涯最後の舞台となりました。

このとき、吉右衛門の甥に当たる松本幸四郎が久吉を初めて演じましたが、令和4年(2022年)3月には叔父の跡を継ぐように五右衛門を演じています。

ポイント4:豪快な大薩摩(おおざつま)の演奏

開演直後の舞台は水色の大きな浅葱幕あさぎまくで覆われており、その前に歌舞伎音楽の大薩摩おおざつまを演奏する唄い手と三味線の二人が登場し、豪快な三味線の演奏で幕を開けます。立ったままなので三味線は足台に片足を乗せ、唄い手は浄瑠璃本を見台ではなく手に持つという独特のスタイルでの演奏も見どころの一つです。

大薩摩は現在は長唄に吸収されていますが、かつては江戸浄瑠璃の一派として豪快な曲調で歌舞伎を盛り上げていました。現在は、「楼門五三桐」の幕開き以外では荒事の「矢の根」「暫」「鳴神」などの演目で演奏されています。

石川五右衛門とは何者?

石川五右衛門
楼門五三桐の主人公・石川五右衛門とはいったい何者なのでしょうか?

安土桃山時代に大坂や京都を中心に世間を騒がせていた盗賊で、捕らえられてから京都の三条河原で釜茹での刑に処されたというのは有名な話ですが、実際の経歴はよくわかっておらず謎の多い人物とされています。

しかし、謎の人物であるがゆえに多くの伝説が作られ、伊賀忍者の出身だとか豊臣秀吉を暗殺しようとしたというものもあるようです。

歌舞伎の芝居の中では、明国の高官である宋蘇卿の子供であり、父の死後は真柴久吉(豊臣秀吉のこと)のライバルである武智光秀(明智光秀のこと)に育てられたという、さらに複雑な設定になっています。権力者と戦う姿が当時の庶民の心をつかんで人気のキャラクターになっていったようです。

髪型は「大百日鬘だいひゃくにちかつら」と言われる百日間伸ばし続けたらこうなるというボウボウに伸びた髪型で、これは歌舞伎での大悪人のイメージとして表現されたものですが、現在は歌舞伎以外でも五右衛門のイメージとして定着しています。

「楼門五三桐」以外でも石川五右衛門が登場する芝居は他にも「浜千鳥真砂白浪」「五右衛門の釜」など複数存在し、近年では2009年に市川海老蔵がテレビドラマ「石川五右衛門」で五右衛門を演じ、2011年には片岡愛之助が新作歌舞伎「GOEMON」を上演しています。

また、歌舞伎舞踊の戻駕色相肩もどりかごいろにあいあいかたでは石川五右衛門と真柴久吉が二人で駕籠をかつぐという、奇想天外な内容となっています。

今後、どんな五右衛門が歌舞伎の舞台に登場してくるのかも楽しみですね。

楼門五三桐の上演情報

歌舞伎座「三月大歌舞伎」の楼門五三桐の絵看板
楼門五三桐」や石川五右衛門に関連する最近の舞台の上演情報を紹介します。
 

歌舞伎座 三月大歌舞伎

2022年3月の歌舞伎座の第三部で「石川五右衛門」が上演され、大詰めの「南禅寺山門の場」で「絶景かな」の名台詞を聞くことができます。

歌舞伎座三月大歌舞伎 ※公演終了
日時
令和4年(2022年)3月3日(木)~28日(月)
※休演日 10日(木)、22日(火)
劇場
歌舞伎座
第三部 演目(二)
増補双級巴
石川五右衛門いしかわごえもん
配役
【石川五右衛門】松本幸四郎
【三好長慶】中村松江
【三好国長】中村歌昇
【左忠太】大谷廣太郎
【右平次】中村鷹之資
【佐々木秀経】中村玉太郎
【細川和氏】市川男寅
【仁木頼秋】市村竹松
【次左衛門】松本錦吾
【呉羽中納言】大谷桂三
【此下久吉】中村錦之助

>>歌舞伎座「三月大歌舞伎」の詳細はコチラ

まとめ:桜の季節に「楼門五三桐」は必見

楼門五三桐は大盗賊・石川五右衛門と天下人・真柴久吉という宿敵同士が、桜が咲き乱れる絢爛豪華な楼門で対峙する場面を描いた芝居です。

15分ほどの短い舞台ですが、「絶景かな」で有名な五右衛門の名セリフや、派手な五右衛門と爽やかな久吉がにらみ合う「天地の見得」など見どころの多い演目です。

新しい春の季節に歌舞伎の様式美に溢れた楼門五三桐を観劇して、一足早いお花見を楽しんでみてはいかがでしょうか。

スポンサーリンク