【観劇記】2026年 9月 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」昼の部 〜染團辰に胸躍り、又五郎に唸る〜

2026年9月24日、🎭歌舞伎座で開催された『秀山祭九月大歌舞伎』昼の部を観劇してまいりました✨
今月の歌舞伎座は、恒例となりつつある「秀山祭」。初代・二代目 中村吉右衛門ゆかりの演目が並ぶなか、私が観劇した昼の部では『春調娘七種』『三社祭』『逆櫓』が上演されました。
今回は、昼の部を観劇したミナミが、個人的に感じた見どころや感想を綴った「観劇記」と、市川染五郎・市川團子・尾上辰之助の「染團辰」初の三人共演を記念した「ネタ漫画」を掲載しています。
さらに、今月の歌舞伎座の予約数を千穐楽まで集計して、お客さんの入りを数値化。今年1月からの推移と比較するとともに、夜の部では仁左衛門出演日と幸四郎出演日で興味深い差も出ていますので、ぜひ最後までご覧ください🍵
今回の公演の詳細については「歌舞伎美人」をご確認ください👇
➡️ 令和8年9月歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」
「秀山祭」について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください👇
☀️ シルバーウィーク明けは秋晴れの観劇日和!

今年の9月は、19日(土)〜23日(水・祝)まで5連休のシルバーウィークでした。
ところが東京地方は、長雨に加えて台風25号の影響もあり、ほぼ雨の日が続くちょっと残念な連休に☔
そんな連休が明けた24日は一転、晴天に恵まれ、絶好の観劇日和となりました!😆
まあ、歌舞伎座は屋内なので、実際のところ天気はあまり関係ないのですが……。とにもかくにも、気持ちのいい秋晴れのもと東銀座に到着です。
地下の木挽町広場でまずはチケットの発券と筋書きを購入。連休明けの平日10時くらいですが、木挽町広場はいつもより混雑してる感じがします。
ここですぐ目に入ったのが、アニメ『薬屋のひとりごと』×着物レンタルVASARA×松竹歌舞伎座のコラボ企画です👘✨

木挽町広場には特設ブースが設けられ、アクスタやキーホルダーなどいろいろなキャラクターグッズが販売されております。喫煙ブース前や歌舞伎座タワー5階の「歌舞伎座ギャラリー」前にはスタンドパネルも設置。
『薬屋のひとりごと』は私も見ましたが、けっこう面白いアニメでしたし、着物レンタルとのコラボというのも相性がよさそう。なかなかいい企画なんじゃないでしょうか😆
なんてことを考えてたら歌舞伎座開場しましたので入場します。しかし入場してすぐ何やら違和感が……🤔
「あ、胸像がない!」😳
そうです。一階ロビーでいつも迎えてくれる、松竹の創業者兄弟の胸像がありません。
係の方に聞いてみると、どうやら耐震補強のため修理に出しているのだとか。二階にある團菊などの像も同様だそうです。何か行政からの指導でもあったのかな?🤔

……とはいえ、今回それ以上に私が楽しみにしていたのが、「染團辰」の3人が同じ演目で揃い踏みすることです!🔥
期待に胸を膨らませながら、さあ、開幕です!🎭✨
🌸 華やかさと軽妙さで魅せる、秀山祭の二つの舞踊
最初に上演されたのは、『春調娘七種』と『三社祭』の二つの舞踊です。
「染團辰」初の揃い踏みとなる華やかな舞台と、歌昇・種之助兄弟の息の合った軽快な踊り。それぞれ違った魅力を楽しませてくれました。
🌸『春調娘七種』〜染團辰、ついに舞台で揃い踏み!〜

今月は9月恒例の「秀山祭」です。
その幕開きを飾る『春調娘七種』は、『逆櫓』など今回並ぶ吉右衛門ゆかりの重厚な狂言とは少し趣の違う、華やかな舞踊です。
しかし、ここでの注目は何と言っても、市川染五郎、市川團子、尾上辰之助の「染團辰」初の舞台での揃い踏み!🔥
しかも、三人だけで演じる舞踊です。
個人的には、いきなりクライマックスが来てしまった感じです!😆
幕が開くと、富士山をバックに長唄連中がずらりと並び、中央のセリが大きく開いています。
そして、そのセリから三人が登場!
右から曽我十郎(團子)、静御前(辰之助)、曽我五郎(染五郎)です。
華やかな赤姫姿の辰之助を中央に、和事味のある團子、荒事の染五郎が両脇を固めるという、実に見事な絵面✨
秀山祭の幕開きを寿ぐだけでなく、これからの歌舞伎界の発展まで寿いでいるように見えてきます。
曽我兄弟と静御前という組み合わせは、史実上この三人に関わりがあったわけではありませんが、『春調娘七種』は「曽我物」の舞踊として最古とされる作品なのだそうです。
昔の観客も、こうした時代を超えた「ありえないコラボ」にワクワクしたのでしょうか🤔
静御前はいかにも華やかな赤姫姿ですが、五郎・十郎兄弟は、『寿曽我対面』などでよく見る浅葱色の長袴とは違い、黒を基調とした裃姿。
これがまた、いつもの曽我兄弟とは少し違った、キリッと引き締まった印象を与えます。
タイトルにあるように、静御前は七種を摘む籠を持って登場。一方、曽我兄弟は鼓を手にしています。
静御前と鼓というと、どうしても『義経千本桜』の「初音の鼓」を思い出してしまいますが、おそらくそれにちなんだものでしょう。
三人は長唄に合わせて舞い踊ります。
三人揃って踊るだけでなく、五郎と静が組んだり、十郎と静が組んだりと、それぞれの取り合わせも楽しませてくれます。
曽我物らしく、仇討ちにはやる五郎を十郎と静が押し留める場面も。
團子は普段の印象だと、天性の陽キャというか(笑)、明るく豪快なイメージがありますが、実際はこうした落ち着いた和事の役がよく似合う感じですね。
『もののけ姫』のアシタカも、荒々しく突き進む人物ではなく、物事の道理をわきまえた落ち着きのある役でした。
一方の染五郎は陰キャ……ではなく(笑)、普段はクールで物静かなタイプに見えます。
しかし、周囲からは「内に熱いものを秘めている」と評されることもあるように、舞台では荒事役の迫力も少しずつ増してきているように感じます🔥
2023年11月の歌舞伎座では、この『春調娘七種』で曽我十郎を勤めていましたが、今回は荒事の曽我五郎。
大叔父である二世 中村吉右衛門が得意とした五郎を演じるには、心中期するものがあるのでしょう。
そして辰之助は、その2023年の歌舞伎座では、まだ尾上左近を名のっていた時代に同じ静御前を勤めています。
さらに2025年の新春浅草歌舞伎では、今度は曽我五郎を演じました。
團子と染五郎に比べると、普段はやや地味……いや、控えめな印象なのですが(笑)、女形になると二人にまったく引けを取らない華がありますね🌸
三人がひとしきり舞い踊ると、最後は三人並んで見得を決めて幕となります。
秀山祭の幕開きにふさわしい華やかな舞踊であり、同時に「染團辰」初の共演で、それぞれの今のニンがよく表れた舞台だったと感じました。
今後、この三人がどのように切磋琢磨しながら成長していくのか。
ますます楽しみです!😆✨
🥁『三社祭』〜歌昇・種之助、息ぴったりの兄弟舞踊〜

さて、続いては『三社祭』です。
こちらも一見すると秀山ゆかりの演目とは言い難そうですが、演じるのは播磨屋の中村歌昇・中村種之助兄弟。
二人の漁師が網を打つところから始まり、どこか人形振りを思わせるような動きもあって、軽快でちょっと滑稽な舞踊です。
歌昇と種之助が兄弟で『三社祭』を本興行で一月勤めるのは、今回が初めてのようです。
事前のインタビューでも、
歌昇は「お互い意識しなくても合わせていく、合っていく」、種之助も「兄とは同じ師匠に習い、見てきたものもほぼ同じ」という趣旨のことを話していましたが、実際に舞台を観ても、さすが兄弟という息の合い方です😆
歌昇って、普段はカッコいいお兄さんという感じですが、こういうちょっと滑稽味のある役も実にうまくこなしますね。
一方の種之助は、6月歌舞伎座『金閣寺』では赤っ面で登場していたかと思えば、2025年5月の團菊祭『助六由縁江戸桜』では傾城浮橋。
立役から女形まで、ずいぶん幅広い役を演じ分ける器用な役者です。
ところで、この『三社祭』で面白いのが「善玉」と「悪玉」。
漫画などでよくある、頭の左右で「天使」と「悪魔」がささやくようなものを想像してしまいますが、実際に観ていると、善玉と悪玉でそこまで極端な違いがあるようには見えないんですよね🤔
もちろん「善」と「悪」ではあるのですが、どちらか一方だけが人間なのではなく、人間の中には善も悪も両方ある──そんなことを表しているようにも私には感じられました。
こういうところも、善悪を単純に二つに分けない日本人的な捉え方なのかもしれません。
ちなみに、この善玉・悪玉の趣向のもとになったのが、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも登場した山東京伝の黄表紙です。
「あ〜、そういえば『べらぼう』でもそんな話があったな〜」と、ここで思い出しました😆
途中から善玉・悪玉の面を被ってしまうので、二人の表情が見られないのはちょっと残念。
それでも、面をつけたまま軽快に、そして息ぴったりに踊る兄弟の姿が楽しい舞踊でした✨
⚔️ 『ひらかな盛衰記』〜悲劇と忠義が交錯する源平の物語〜
さて、昼の部ラストが『ひらかな盛衰記』の三段目になる『大津宿屋』『笹引き』『逆櫓』です。源義経と木曽義仲の間の因縁が描かれる舞台ですが、こちらも三社祭同様、NHK大河で出てたな〜というところがありますね。
『大津宿屋』『笹引き』〜歌舞伎座58年ぶり、子ども取り違えの悲劇〜

歌舞伎座では58年ぶりの上演となる『大津宿屋』と『笹引き』。もちろん私も観るのは初めてです。
物語の中心となるのは、八代目 尾上菊五郎演じる腰元・お筆。武芸に優れた、いわゆる「女武道」の役です。
源頼朝に敗れて戦死した木曽義仲。その奥方・山吹御前(上村吉弥)と息子の駒若丸(秀之助)を、お筆と父の鎌田隼人(中村錦之助)が守りながら、源氏方の追手を逃れて落ちのびています。
一行が泊まった大津の宿屋でたまたま一緒になったのが、船頭の権四郎(中村又五郎)、その娘・およし(中村雀右衛門)、そして孫の槌松。
追われる身のお筆たちにとって、この一家とのささやかな交流は、逃亡生活のつらさをほんの一時忘れさせてくれるものとなります。
ところが、まさにその夜、宿屋は源氏方の追手に奇襲されてしまいます。
追手を率いるのは番場の忠太(中村萬太郎)。
しかし、追手に気づいたお筆たちが提灯の火を消したことで、舞台は暗闇の中で互いに探り合う「ダンマリ」へ。
……いや、追手の皆さん、なんでもっとたくさん提灯を持ってこなかったんでしょうか😆
この暗闇の混乱の中で、駒若丸と槌松が入れ替わってしまいます。
ところが誰もそれに気づかないまま、二組の家族はそれぞれ宿を脱出。
山吹御前たちを逃がすために、残った鎌田隼人は忠太の刃にかかり、ここで命を落としてしまいます。
さらに迫る追手を相手に、お筆は大立廻り!
これぞ「女武道」と呼ばれる役どころなのでしょう。
……とはいえ、女性の着物姿であれだけ激しく戦うとなると、どうしても動きには制約があります。派手な立廻りをするには、やはりちょっと無理があるような気もします🤔
そんなお筆の奮闘もむなしく、山吹御前は重傷を負い、駒若丸――と思われていた子どもも忠太に捕らえられ、首を刎ねられてしまいます。
なぜ歌舞伎ではこうも子どもが首を刎ねられるのか……。
我が子の死を嘆く山吹御前。
ところが、お筆が遺体を確認すると、着ているものが違うことに気づきます。
そこで初めて、殺されたのは駒若丸ではなく、先ほど宿屋で一緒だった槌松だったことが分かります。
いくら暗闇だったとはいえ、今の今まで誰も気づかなかったなんてことあるか?……という疑問はいったん置いておきましょう😆
ここからが、この場面の通称にもなっている「笹引き」です。
駒若丸がどこかで生きていることに望みを託しながらも、山吹御前はついに力尽きて息絶えます。
お筆は、亡くなった山吹御前と、哀れにも身代わりとなって命を落とした槌松を二本の笹の上に乗せ、その場を立ち去ろうとします。
槌松の遺体は人形ですが、山吹御前は吉弥さん本人がそのまま横たわっています。
「これ、どうやって引っ張るんだろう?」
とちょっと期待しながら見ていたのですが……。
笹に二人を乗せたところで、お筆が見得。
そして、そのまま幕となりました。
……引っ張らないんだ。😆
倒れている人を地面に見立てた敷物ごと、裏方がロープで引っ張って動かすという演出は、先月観た『怪談牡丹燈籠』にもありました。
なので今回も実際にズルズルと笹を引いていくのかと思っていたのですが、どうやら「笹引き」は、その姿を見せるところまでということなのでしょうか。
ちょっと期待していただけに、そこは少し残念でした😅
さて、ここまでの物語を振り返ってみると、どこかで聞いたような構図です。
そう、『義経千本桜』の「木の実・小金吾討死」です。
『義経千本桜』では、若葉の内侍と六代君を逃がすため、小金吾が追手と戦い、奮闘の末に討死します。
一方の『ひらかな盛衰記』では、山吹御前と駒若丸を守るため、お筆と隼人が追手と戦い、隼人が命を落とす。
もちろん細かな展開は違いますが、追われる主従、幼い若君、それを守って戦う家臣という構図には、どこか通じるものを感じます。
成立したのは『ひらかな盛衰記』のほうが先ですから、『義経千本桜』の側がこうした先行作品の趣向を取り入れている部分もあるのかもしれません。
そして実は、後半にまたしても『義経千本桜』とのつながりを連想させるものが登場します。
ということで、次の『逆櫓』をご覧ください。😆
『逆櫓』〜船頭から武将へ!樋口次郎、ついに正体を現す〜

さあ、昼の部ラストを飾るのは、今回の演目のなかでももっとも秀山祭らしい一幕ともいえる『逆櫓』です。
船頭松右衛門実は樋口次郎兼光は、初代・二代目の中村吉右衛門がともに得意とした役。
今回は松本幸四郎が初役で勤めます。
高麗屋でも初代・二代目白鸚が演じてきた役だけに、幸四郎にとっても今後受け継いでいきたい演目の一つでしょう。
というところで、『逆櫓』開幕です。
舞台は、先ほど子どもを取り違えたもう一方の家族、権四郎とおよしの家。
およしの前夫の三回忌が営まれているところから始まります。
供養に訪れた人々が、「槌松が以前とまるで違う子になっている」と不思議がると、権四郎は、あの大津宿での騒動の際に子どもを取り違えてしまったことを話します。
そして、
「この子を大事に育てていれば、いつか本当の槌松も帰ってくるだろう」
というようなことを言っています。
ずいぶん呑気な感じもしますが、この時代は子どもが行方不明になってしまうことも、今ほど珍しいことではなかったのでしょうか🤔
そこへ帰ってくるのが、およしの新しい夫でもある松右衛門(松本幸四郎)です。
なんでも松右衛門は、権四郎の家に伝わる「逆櫓」の技を身につけたことで梶原景時に認められ、源義経が乗る船の船頭に取り立てられたのだとか。
この「逆櫓」というのは、船尾を先にして船を進めたり、前後へ自在に動けるようにしたりする操船法です。
そういえばNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、梶原景時と義経がこの逆櫓をめぐって言い争っていましたね。
あのとき梶原景時を演じていたのは中村獅童でした。
さて、この話を聞いた権四郎は、婿の出世を大喜び。
ところが、この松右衛門には大きな秘密があります。
その正体は、なんと木曽義仲の四天王の一人・樋口次郎兼光!
主君・義仲の仇である義経を討つ機会をうかがい、船頭に身をやつして権四郎の家へ婿入りしていたのです。
そして逆櫓の技を身につけていたところ、まんまと義経自身が乗る船の船頭に抜擢されてしまったという……。
都合良すぎん?😆
まあ、歌舞伎ではよくあることです(笑)。
そういえば『義経千本桜』の「碇知盛」でも、平知盛が渡海屋銀平に身をやつし、義経を討つ機会をうかがっていました。
前半の『大津宿屋』『笹引き』に続いて、ここにも『義経千本桜』を連想させるものがあります。
そんなところへ現れるのが、八代目 尾上菊五郎演じるお筆です。
大津宿で子どもを取り違えた者だと名乗ると、権四郎とおよしは、
「槌松が帰ってきた!」
と大喜び。
しかし、お筆が重い口を開いて告げたのは、あまりにも悲しい事実でした。
槌松は駒若丸の身代わりとなり、すでに非業の最期を遂げている。
ここで、又五郎演じる権四郎の感情が一気に爆発します。
「それなら駒若丸の首を斬って返してやる!」
と、激しくいきり立つのです。
ここでのポイントは、権四郎が決して身内だけを贔屓して道理の通じない人物ではないということ。
お筆が事情を説明し、誠意を尽くそうとしていることも頭では分かっている。
それでも、かわいい孫が身代わりとなって殺されたと知った瞬間、悲しみと怒りを抑えることができません。
さきほど私は、「槌松もいつか帰ってくるだろうなんて、ずいぶん呑気だな」と書きました。
でも、本当はずっと心配していたのでしょう。
その気持ちを表には出さず、帰ってくると信じて待ち続けていた。
だからこそ、死を知らされた瞬間に、それまで押し込めていたものが一気に噴き出します。
ここは又五郎さんの演技が実に光るところでした。
そして怒りの収まらない権四郎は、松右衛門に向かって「駒若丸を討て」と迫ります。
すると松右衛門は、周囲に人がいないことを確かめ……。
「権四郎、頭が高い!」
う〜む、と唸る場面です!🔥
それまでの飄々とした船頭・松右衛門という世話物の人物から一転。
舞台の空気そのものが変わったように、重厚な時代物の武将・樋口次郎へと変貌します。
樋口は驚く一同を前に、自らの正体とこれまでの経緯を明かします。
自分は木曽義仲に仕えた武士であり、駒若丸は亡き主君の大切な若君。
たとえ槌松の仇であったとしても、駒若丸を討たせるわけにはいかない。
武士としての忠義の道理を説き、権四郎に駒若丸を助け、自らの思いを遂げさせてほしいと頼み込みます。
あまりにも意外な事実が次々と明かされ、権四郎とおよしも困惑するばかり。
しかし事情を知ってしまえば、二人もそう簡単に反対することはできません。
そしてお筆は、父・鎌田隼人を討った番場の忠太への仇討ちを誓って、その場をあとにします。
この仇討ちの話は、今回上演されない後の段へと続いていくのですが、仇討ち自体は果たせないようですね。
そんなところへやって来たのが三人の船頭。『春調娘七種』に出演した染團辰の三人が再び登場です!😆
市川染五郎、尾上辰之助、市川團子が今度は小粋な船頭姿となり、松右衛門に逆櫓の技を教わりに来ました。
樋口次郎という武将の顔から再び船頭・松右衛門へと戻ると、四人は船に乗って沖へと漕ぎ出していきます。
さて、ここから登場するのが、私が歌舞伎の演出を観てもっとも驚いたものの一つ「遠見」です。
それまで大人の役者が演じていた人物を、遠く離れた沖の船では小さな子どもが同じ衣装で演じることで、人物そのものが遠く小さく見えるようにするという演出です。
初めてこれを観たときは、
「……なんか変だな?」
と思ってよく見たら、子どもになってる!😳
何に驚いたかって、その発想ですよ。
こんな方法、レオナルド・ダ・ヴィンチでも思いつかないだろ〜〜!
と感動したのをよく覚えています(笑)。
『与話情浮名横櫛』の与三郎風に言うと「ダ・ヴィンチさんでも気がつくめぇ」でしょうか。
まあ、この遠近表現が歌舞伎オリジナルなのか、さらに古い何かに原点があるのかまでは知りませんが、とにかく私の大好きな歌舞伎の演出です。
今回、沖の船で松右衛門を演じているのは中村種太郎くん。
ただ、けっこうセリフがあるんですよね。
しゃべってしまうと「あ、子どもだ」とすぐ分かってしまうので、遠近法の魔法が少し解けてしまうような感じがするのは、ちょっと残念😅
ところで、この三人の船頭は単に逆櫓を習いに来たのではありません。
実は梶原方から送り込まれた者たちで、沖へ出ると松右衛門に襲いかかります。
どうにか浜に戻った樋口次郎ですが、その額からは血が流れ、髷も切れて散切り状態。
そして舞台を見ると、なぜか巨大な碇が綱をつけた状態で置かれています。
……やっぱり『碇知盛』じゃん😆
『義経千本桜』のほうが後にできた作品なので、これは後から逆輸入された演出なんでしょうか?
やがて大勢の船頭たちが現れ、樋口との大立廻りが始まります。
先ほどの染團辰の三人も衣装を変えて再び登場……していたのですが、船頭が大勢出てくるので、不覚にも私は三人の存在を見失っておりました😅
あとで筋書きの舞台写真を見て、「あ、やっぱりいたのか!」と気づいた次第です(笑)
それにしても、立廻りに登場する船頭たちはみんな褌姿。「尻まで出して気合い入ってるな〜」と思ってよく見たら、肌色のタイツのようなものを履いています。
あ、そうか。こういうところで素肌は出さないんですね😆
樋口は巨大な碇を振り回しながら大暴れします。が、その碇は途中で船頭たちがどこかへ持っていってしまいました。
あれが後の『碇知盛』に回されるんだろうなぁ……(笑)
奮闘する樋口ですが、先程自らの忠義に理解を示してくれたはずの権四郎が敵方の畠山に訴え出たことを、およしを通じて知ります。
やがて、その権四郎が槌松――実は駒若丸を連れ、畠山重忠(尾上松緑)と家臣たちとともに姿を現します。
「どうしてそんなことをやるのか」となじるおよしに、権四郎は「孫を守るため」と言い放ちます。
権四郎は「この子は樋口とは何の関係もない。前の婿とおよしとの間に生まれた自分の孫だ」。そう重忠に訴え、この子だけは助けてくれるよう願い出ていたのでした。
素直に駒若丸を差し出してしまえば、自分たちは助かったでしょうが、権四郎は、短い間とはいえ自分たちの孫として育てた駒若丸を見捨てません。
そして同時に、この子の命を守ることが、樋口の忠義を守ることにもなると考えたのでしょう。
自ら危険を冒してまで、敵方の重忠に助命を願い出たのです。
ここまで来ると、やっぱり又五郎さん演じる権四郎が、この『逆櫓』のもう一人の主役に見えてきます。
そして畠山重忠もまた、本当はこの子が駒若丸だと見抜いていながら、あえて権四郎の言葉を受け入れ、その命を助けることにします。
権四郎の思い、そして重忠の温情を悟った樋口も、ついに抵抗をやめ、自ら縄につきます。
そして最後、駒若丸が樋口に別れを告げます。
「ひーぐーちー、さーらーばー」
あれ、これは『義経千本桜』でも聞いた安徳帝が知盛に告げる、
「とーもーもーりー、さーらーばー」
とまったく同じような別れのセリフです。
もともと『ひらかな盛衰記』がやっていたのか?『義経千本桜』のヒットを受けて取り入れたのか?どちらなのかはよくわかりませんが、同時代にできた作品にはこういうヒットする演出が繰り返し使われてきたのかな〜😆
そんなことを考えながら、今回の秀山祭九月大歌舞伎・昼の部も幕となりました。
というところで、今回の歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」昼の部 観劇記も、このあたりでコレギリといたしとうございます。🎭
最後までお読みいただき、ありがとうございました!✨
この後、おまけとして「【歌舞伎漫画番外編】遠見のピンチだ染團辰!」と「2026年9月の歌舞伎座予約率は?」を掲載しています。ご興味ある方はぜひご覧ください。
【おまけ漫画】遠見のピンチだ染團辰!
遠見の子役が体調不良で出演できない!
そのとき、「染團辰」の舞台への思いと責任感が試されることに!?
※スマホで文字が読みづらいときは、画像をピンチ(二本指で拡大)してみてください📱✨
![[その1]遠見の子役が一人体調不良と聞いて慌てる染團辰](https://jp-culture.jp/wp-content/uploads/2026/09/review_260924_manga_01-f-600x400.jpg)
![[その2]なぜか連れて行かれる辰之助](https://jp-culture.jp/wp-content/uploads/2026/09/review_260924_manga_02-f-600x400.jpg)
![[その3]子役の代役を勤める辰之助とその姿に感心する團子と染五郎](https://jp-culture.jp/wp-content/uploads/2026/09/review_260924_manga_03-f-600x400.jpg)
脚本:ミナミ
作画:Saku(AIアシスタント)
登場したのは私のネタ漫画シリーズで活躍する「染團辰」の三人です。
急遽、代役に指名されたのは一番小さい辰之助でした。
「なんでボクが?」と腑に落ちない辰之助ですが、舞台への責任感から子役の代役をきっちり勤めます。
それを見た團子と染五郎も、辰之助の対応に感心して、ちょっと見直したようですね!
まあ、のちのち笑い話として語り継ぐのは間違いないでしょうが(笑)
「染團辰」の三人のこれまでのドタバタ劇をまだ見ていない方は、ぜひ以下の歌舞伎ネタ漫画シリーズもご覧ください!
📘 歌舞伎役者をネタにした漫画シリーズはこちらからどうぞ!
おまけ2:2026年9月の歌舞伎座予約率は?
おまけとして歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」の予約状況チェックをご覧ください📊
千穐楽までの全23公演日の歌舞伎座の予約数を、「チケットWeb松竹」でミナミが目視で確認した数値をもとに、予約率を共有していきます。
あくまでご参考までに。
歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」
2026年9月2日〜26日
休演日:9日、18日
公演日数:23日間
■ 今年1〜9月の予約率比較
| 年月 | 昼の部 | 夜の部 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月(22日公演) | 100% | 90% | ||||
| 2026年2月(24日公演) | 98% | 81% | ||||
| 2026年3月(20日公演) | 87% | 77% | ||||
| 2026年4月(24日公演) | 80% | 90% | ||||
| 2026年5月(23日公演) | 94% | 97% | ||||
| 2026年6月(21日公演) | 93% | 86% | ||||
| 2026年7月(23日公演) | 99% | 85% | ||||
|
2026年8月 (23日公演) |
第一部 | 第二部 | 第三部 | |||
| 95% | 90% | 88% | ||||
| 2026年9月(23日公演) | ||||||
| 95% | 86% | |||||
(※貸切は満席とカウント)

2026年9月の歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は、昼の部が23日集計で95%、夜の部が23日集計で86%という結果になりました。(小数点以下切り上げ)📊
昼の部は「染團辰」初の揃い踏みもあり、なかなかの好成績。
一方、夜の部には片岡仁左衛門が出演しているので、てっきりこちらもかなり強い数字になるのかと思いきや、昼の部を下回る結果となりました。
ところが、夜の部を仁左衛門さん出演のAプロと、幸四郎出演のBプロに分けて見てみると……
Aプロ:94%
Bプロ:73%
(※貸切は除く)
数字にしてしまうと、なかなかはっきりと差が出ています。
仁左衛門さんは体力面もあってダブルキャストを希望されているようですが、松竹としては「仁左衛門さんを休ませたい、でも客席は埋めたい」という、なんとも悩ましいところでしょう。
もちろん幸四郎にとっても、この数字はちょっと悔しいところでしょう。今後の奮起にも期待したいですね!🔥
来月10月は、8月のように三部制となり、仁左衛門さんは再びダブルキャストでの出演。
そして次に、仁左衛門さんのダブルキャストの洗礼を受けるのは、八代目 尾上菊五郎です。
さてさて、今度はどんな数字が出ることやら……。
10月の歌舞伎座も、集客の動きから目が離せませんね〜😆📊










ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません