歌舞伎役者の屋号と家紋一覧はこれ!有名な屋号の由来と期待の子役たちを紹介

歌舞伎役者には、それぞれ「屋号」と呼ばれる家の看板のようなものがあります。また、それぞれの家には代々受け継がれてきた「家紋」もあります。
「成田屋」「音羽屋」「高麗屋」などが有名で、観客が上演中にかける「〇〇屋!」という大向うの掛け声にも使われています。
この記事では、歌舞伎を初めて見る方にもわかりやすいように、屋号の一覧や由来、家紋、代表的な役者たちや期待の子役たちを紹介します。
屋号や家紋の意味を知っておくと、歌舞伎鑑賞がもっと楽しくなりますよ。
- 1. 有名な格の高い屋号12選と家紋・代表的な役者
- 1.1. 成田屋(なりたや)|市川團十郎・市川新之助
- 1.2. 音羽屋(おとわや)|尾上菊五郎・尾上松也・尾上右近
- 1.3. 中村屋(なかむらや)|中村勘三郎・中村勘九郎・中村七之助
- 1.4. 高麗屋(こうらいや)|松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎
- 1.5. 播磨屋(はりまや)|中村吉右衛門・中村歌昇・中村米吉
- 1.6. 松嶋屋(まつしまや)|片岡仁左衛門・片岡愛之助
- 1.7. 成駒屋(なりこまや)|中村芝翫・中村福助・中村橋之助
- 1.8. 大和屋(やまとや)|坂東玉三郎・坂東彌十郎・坂東巳之助
- 1.9. 澤瀉屋(おもだかや)|市川猿之助・市川中車・市川團子
- 1.10. 萬屋(よろずや)|中村時蔵・中村隼人・中村獅童
- 1.11. 高砂屋(たかさごや)|中村梅玉・中村莟玉
- 1.12. 成駒家(なりこまや)|中村鴈治郎・中村壱太郎
- 2. 歌舞伎役者の屋号一覧を紹介
- 3. 歌舞伎界の将来期待の子供たち
- 4. まとめ:屋号を知って歌舞伎をもっと楽しもう
- 5. 参考資料
有名な格の高い屋号12選と家紋・代表的な役者

数多くある歌舞伎役者の屋号ですが、その中でも特に有名で格の高い12屋号の歴史や由来、代表的な役者とその家紋を紹介します。
成田屋(なりたや)|市川團十郎・市川新之助

成田屋は初代 市川團十郎(1660~1704)に始まる、歌舞伎界の宗家と呼ばれる市川團十郎家だけの屋号で、家紋は「三升」です。
跡継ぎに恵まれなかった初代・團十郎が、成田山新勝寺に祈願したところ男の子(二代目 團十郎)が生まれたことに由来します。江戸歌舞伎の荒々しい演技が特徴的な荒事を創始したのも初代・團十郎です。
成田屋は歌舞伎で最初に付けられた屋号で、他の家もこれに倣って屋号をつけるようになりました。後に七代目 團十郎が「歌舞伎十八番」と呼ばれるお家芸を選定したところ、これまた他の家も対抗するようにそれぞれのお家芸を選定するようになるなど、常に歌舞伎界をリードする存在と言えます。
お家芸として人気な演目には、「歌舞伎十八番」の『助六由縁江戸桜』や『暫』などがあります。
歴代の團十郎は歌舞伎界に大きな影響力を持ち、九代目 團十郎は「劇聖」と呼ばれて明治の新しい歌舞伎の発展に尽くしました。團十郎名跡はときに空席になることもありましたが、令和4年(2022)11月に、十一代目 市川海老蔵が五代目 團十郎の俳名「白猿」を付けた十三代目 市川團十郎白猿を襲名して復活し、さらに長男が八代目 市川新之助として初舞台を踏みました。
音羽屋(おとわや)|尾上菊五郎・尾上松也・尾上右近

五代目 尾上菊五郎から分かれた家系の、尾上菊五郎家、尾上松緑家、坂東彦三郎家の一門の屋号が音羽屋です。尾上菊五郎家の家紋は「重ね扇に抱き柏」。初代 菊五郎の父親が、生誕地にほど近い京都の清水寺にある「音羽の滝」にちなんで、音羽屋半平を名乗っていたことが由来です。
尾上菊五郎家は歌舞伎界でも屈指の名門の一つで、五代目 菊五郎は九代目 團十郎と同時代に活躍し、二人は「團菊」と呼ばれて称賛されました。女形(女性役)と立役(男性役)の両方を演じる、「兼ねる役者」であることが伝統的に受け継がれています。江戸庶民の生活をリアルに描いた世話物や、幽霊や妖怪変化が登場する怪談物を得意としているのも特徴です。
お家芸として人気な演目には、「兼ねる役者」としての本領が発揮される『白浪五人男』や『春興鏡獅子』などがあります。
尾上菊五郎家の伝統は、人間国宝でもある七代目 尾上菊五郎から、八代目 尾上菊五郎、六代目 尾上菊之助へと受け継がれ、現在も歌舞伎界を代表する名門一家として活躍しています。
2025年には、七代目 尾上菊五郎の長男・五代目 菊之助が八代目 尾上菊五郎を襲名し、史上初めて二人の菊五郎が存在することになりました。同時に七代目 菊五郎の孫の尾上丑之助が六代目 尾上菊之助を襲名しています。さらに寺島しのぶの長男であり、フランス人とのハーフでもある初代 尾上眞秀も加わり、音羽屋に新たな風を吹き込んでいます。

尾上松緑家は日本舞踊・藤間流とゆかりが深く、家紋は「四輪に抱き柏」。坂東彦三郎家は立役を主にこなし、家紋は「鶴の丸」です。他にも歌舞伎の舞台だけでなくテレビや映画などでも活躍する若手人気役者である、尾上松也、尾上右近がいて、2026年5月には、尾上松緑の息子の尾上左近が三代目 尾上辰之助を襲名し、次代の音羽屋を担う若手として注目を集めています。
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中村屋(なかむらや)|中村勘三郎・中村勘九郎・中村七之助

中村勘三郎の名跡は、江戸三座の一つ「中村座」の座元に連なる由緒ある名跡です。幕末以降しばらく途絶えていましたが、昭和25年(1950)に十七代目 勘三郎が復活させ、現在の中村屋につながっています。家紋は「角切銀杏」。
十七代目 勘三郎は戦後の歌舞伎界を支え、なんと800種類もの役をこなしてギネスブックに登録されています。その跡を継いだ十八代目 中村勘三郎は、渋谷の劇場シアターコクーンを使って、古典歌舞伎の演目を新たな演出で上演する「コクーン歌舞伎」でまったく新しい歌舞伎に挑戦し、江戸の芝居小屋を再現した移動式の劇場「平成中村座」は、国内だけでなく海外でも公演を行うなど、今までになかった歌舞伎のスタイルを打ち出しました。
このように、中村屋だけでなく歌舞伎界全体を引っ張ってきた十八代目 勘三郎でしたが、平成24年(2012)に50代の若さで亡くなったのが惜しまれます。
現在の中村屋は、大河ドラマでも活躍した六代目 中村勘九郎と、女形での活躍が目覚ましい二代目 中村七之助の兄弟を中心に、勘九郎の二人の息子・中村勘太郎、中村長三郎の次世代も成長を続けています。
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高麗屋(こうらいや)|松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎

屋号の高麗屋とは、初代 松本幸四郎(1674〜1730)が神田の高麗屋で丁稚奉公をしていたことが由来で、四代目 幸四郎から屋号として使われています。家紋は松本白鸚・幸四郎が「浮線蝶」、市川染五郎は「三ツ銀杏」。
一時家系は断絶しますが、九代目 市川團十郎の弟子から七代目 松本幸四郎が復活。そこからつながる家系が現在の松本幸四郎家です。
得意芸は團十郎譲りの荒事で、風格のある立役の役柄が似合う家系です。中でも『勧進帳』の“弁慶”は、七代目 幸四郎が生涯に1600回も演じているなど、本家の團十郎家以上のお家芸と言えます。
現在も活躍する二代目 松本白鸚は、九代目 松本幸四郎を名乗っていた時代から国際的舞台俳優としても活躍しており、息子の十代目 松本幸四郎も歌舞伎の舞台だけでなく、様々なメディアに登場して幅広いファンを獲得しています。二代目 中村吉右衛門は松本白鸚の実の弟であり、第92回アカデミー賞授賞式で『アナと雪の女王』のテーマソングを熱唱して注目された女優 松たか子は娘になります。
松本白鸚の孫で松本幸四郎の長男である八代目 市川染五郎も、2022年6月の歌舞伎座で上演された『信康』で、17歳という若さで歌舞伎座初主演を果たしました。その後も祖父・松本白鸚、父・松本幸四郎も演じた舞台『ハムレット』に出演するなど、歌舞伎だけでなく舞台俳優としても活躍の幅を広げており、高麗屋の次代を担う存在として期待されています。
播磨屋(はりまや)|中村吉右衛門・中村歌昇・中村米吉

播磨屋の屋号は、初代 中村歌六が播磨屋作兵衛の養子に出されたことから付けられました。三代目 歌六の系譜につながる初代 中村吉右衛門と三代目 中村時蔵から、それぞれ二代目 中村吉右衛門(故人)、二代目 中村歌昇(追贈:四代目 中村歌六)に受け継がれていき、現在の五代目 中村歌六、三代目 中村又五郎といった役者に続いています。家紋は「揚羽蝶」。
2021年11月に惜しまれて世を去った二代目 吉右衛門は、初代の養子として吉右衛門の名跡を継ぎました。テレビの時代劇『鬼平犯科帳』の鬼平役でも有名で、人間国宝にも選ばれています。二代目 松本白鸚は実の兄になります。
現在は四代目 中村歌昇が播磨屋の若手立役として活躍し、父の三代目 中村又五郎、弟の初代 中村種之助とともに古典歌舞伎を支えています。
また、人間国宝にも選ばれた五代目 中村歌六の長男である五代目 中村米吉は、播磨屋を代表する若手女形として人気を集めており、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』で主人公ナウシカを演じたことでも話題となりました。
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松嶋屋(まつしまや)|片岡仁左衛門・片岡愛之助

上方歌舞伎の名門として有名な片岡仁左衛門家の屋号は松嶋屋です。現在の系譜は八代目 片岡仁左衛門(1810〜1863)から始まります。片岡仁左衛門の家紋は「七つ割に二引」。片岡孝太郎や片岡愛之助の家紋は「追いかけ五枚銀杏」屋号・松嶋屋の由来はよくわかっていません。
終戦後、関西では劇場が減っていき上方歌舞伎は消滅の危機に陥りましたが、十三代目 片岡仁左衛門が私費を投じて自主公演を開催したことから、再び芝居が行われるようになっていきました。
当代の十五代目 片岡仁左衛門は、歌舞伎役者に必要な口跡、振り、容姿の3つすべてが揃った名優です。『菅原伝授手習鑑』の“菅丞相”など数多くの当たり役を持ちます。
当代の仁左衛門は、兄である二代目 片岡秀太郎(故人)とともに人間国宝にも認定されており、現代歌舞伎を代表する役者の一人です。仁左衛門の息子である片岡孝太郎は上方を代表する女形の一人として活躍し、孫の片岡千之助も次代の松嶋屋を担う若手役者として注目を集めています。
また、秀太郎の養子であり、女優・藤原紀香との結婚でも話題となった六代目 片岡愛之助は、歌舞伎だけでなくテレビや映画でも活躍し、上方歌舞伎を代表する人気役者の一人です。
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成駒屋(なりこまや)|中村芝翫・中村福助・中村橋之助

四代目 中村歌右衛門が四代目 市川團十郎から贈られた「成駒柄の着物」が屋号・成駒屋の由来です。もともとは立役の家系でしたが、五代目 中村歌右衛門によって女形の名門として知られるようになり、六代目 中村歌右衛門は戦後代表する名優で、女形の最高峰と言われました。家紋は「祇園守」。
女形のイメージが強い家系ですが、現在活躍する八代目 中村芝翫は立役として豪快で古風な演技が魅力です。妻である女優・三田寛子との間に生まれた三人の息子、四代目 中村橋之助、三代目 中村福之助、四代目 中村歌之助も歌舞伎役者として活躍しています。長男の橋之助は2026年に元乃木坂46の能條愛未と結婚し、公私ともに注目を集めています。
女形の伝統を受け継いだ九代目 中村福助は大病から役者生命も危ぶまれましたが現在は舞台に復帰し、福助の息子である六代目 中村児太郎も女形役者です。
大和屋(やまとや)|坂東玉三郎・坂東彌十郎・坂東巳之助

大和屋の由来は、初代 坂東三津五郎を養子とした初代 坂東三八の実家の屋号になります。江戸時代の森田座(守田座)の座元であり、役者も兼ねていたのが守田勘弥家ですが、新富座と名前を変えた十二代目 守田勘弥の子供からは役者に専念しています。そこから今の坂東三津五郎家と坂東秀調家にも繋がり、三家は一門として深いつながりがあります。家紋は「三つ大」。
舞踊の名手を数多く排出している家系であり、個性的な芸達者な役者が多いのが特徴です。現代の女形では並ぶものがない名女形で歌舞伎界の至宝といっていい五代目 坂東玉三郎は言うに及ばず、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で一躍ブレイクした初代 坂東彌十郎、彌十郎の息子で女形として活躍する初代 坂東新悟、若くして亡くなった名優・十代目 坂東三津五郎の長男であり、『ワンピース歌舞伎』での怪演も話題となった二代目 坂東巳之助などがいます。
また、巳之助の長男である守田緒兜は2025年10月に歌舞伎座で初お目見得を果たしました。
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澤瀉屋(おもだかや)|市川猿之助・市川中車・市川團子

澤瀉屋のオモダカとは薬草の種類のことで、初代 市川猿之助の生家が薬屋だったのでこの屋号になりました。家紋も薬草のオモダカをあしらった「八重澤瀉」です。
歌舞伎界に新風を吹き込むのがこの家系の最大の特徴です。三代目 市川猿之助(二代目 市川猿翁・故人)によって創設されたスーパー歌舞伎は、派手な最新技術を用いた演出と、現代の言葉での台詞が多くの若者をファンにしました。その精神を受け継いだ甥の二代目 市川亀治郎(後の四代目 猿之助)は、古典歌舞伎の演目も着実にこなしながら、スーパー歌舞II(セカンド)では人気漫画『ワンピース』を題材にするなど、往年の歌舞伎ファンも納得させながら若い歌舞伎ファンを増やしています。
2012年には、二代目 猿翁の息子であり多くのテレビや映画に出演してきた俳優・香川照之が、九代目 市川中車を襲名して歌舞伎界入り。
このとき同時に、三代目 市川猿之助が二代目 市川猿翁を、二代目 市川亀治郎が四代目 市川猿之助を襲名。市川中車の長男が五代目 市川團子を襲名する「四人同時襲名」が行われ、大きな話題となりました。
しかし、四代目 猿之助は2023年に両親の自殺ほう助事件により有罪判決を受け、現在は舞台から離れています。また、同年9月には二代目 猿翁も83歳で世を去ることに。
そのため澤瀉屋の今後が心配されましたが、五代目 團子がスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』で主役を勤めるなど大きな成長を見せており、2026年7月には新橋演舞場でのスーパー歌舞伎の新作『もののけ姫』でも主演を勤めます。
團子は、高麗屋の市川染五郎、音羽屋の尾上辰之助とともに、「染團辰(そめだんたつ)」と呼ばれ、次代を担う若手歌舞伎役者としても注目されています。まだ二十歳を過ぎたばかりですが、すでに澤瀉屋の新たな中心的存在です。
大きな転換期を迎えた澤瀉屋ですが、中車や團子を中心に、その芸が次の世代へ受け継がれていくことが期待されています。
萬屋(よろずや)|中村時蔵・中村隼人・中村獅童

萬屋という屋号は、三代目 中村歌六の妻の実家が経営していた芝居茶屋の名前からとられています。中村時蔵家は、養子を取って家を継がせることも多い歌舞伎界では珍しく、実子の血統で続く家系です。家紋は「桐蝶」。
品の良い女形や二枚目の立役が得意な初代 中村萬壽を筆頭に、二代目 中村錦之助、そしてその息子たちである五代目 中村時蔵、初代 中村隼人が活躍しています。また、時蔵の長男は2024年6月に五代目 中村梅枝を襲名して初舞台を踏みました。
また、初代 萬壽の系譜につながる二代目 中村獅童は、歌舞伎だけでなく映画やテレビでも幅広く活躍し、初音ミクと共演する「超歌舞伎」でも中心的な存在です。近年は長男の中村陽喜、次男の中村夏幹も歌舞伎の舞台に出演しており、親子での活躍にも注目が集まっています。
▶▶ 中村獅童の家系図はコチラ 🔗
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高砂屋(たかさごや)|中村梅玉・中村莟玉

六代目 中村歌右衛門の三人の養子の一人が、高砂屋の屋号を持つ現在の四代目 中村梅玉です。高砂屋の屋号の由来ははっきりしません。家紋は「祇園銀杏」。
四代目 中村梅玉は歌舞伎一筋で歩んできた役者で、端正な顔立ちで若衆役を得意としています。2022年10月には人間国宝に認定されました。
また、梅玉の部屋子から養子として迎えられた初代 中村莟玉は、若衆や女形を中心に活躍する若手役者です。2019年には前名の中村梅丸から中村莟玉へ改名し、近年は歌舞伎座や新春浅草歌舞伎などでも主要な役を務めています。
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成駒家(なりこまや)|中村鴈治郎・中村壱太郎

成駒家の屋号はもともとは「屋」の字を使った成駒屋でしたが、平成27年(2015)に四代目 中村鴈治郎の襲名の際に「家」の字に改められました。これは、かつて初代 中村鴈治郎が同じ屋号の五代目 中村歌右衛門に遠慮して「家」の字を使っていたことに倣ったようです。
家紋は中村雁治郎が「イ菱」、中村壱太郎は「寒雀の中に壱」。
成駒家は初代 中村鴈治郎が一代で名を上げ、上方歌舞伎を代表する名門の家系となりました。やわらかみのある和事を得意とする芸風で、「玩辞楼十二曲」という家の芸を定めています。二代目 鴈治郎は女形へと芸を広げました。
三代目 中村鴈治郎は2005年に四代目 坂田藤十郎を襲名し、人間国宝にも認定された上方歌舞伎の名優でしたが、令和2年(2020)11月に88歳で惜しまれて世を去りました。
現在は当代として活躍する四代目 中村鴈治郎が、映画『国宝』への出演や演技指導などを通じて歌舞伎の魅力を広く伝えています。また、息子の中村壱太郎は若手女形として活躍する一方、アニメ映画『君の名は。』の振付や「ART歌舞伎」などの新たな取り組みにも挑戦しています。
歌舞伎役者の屋号一覧を紹介

現代では屋号は会社や店の名称として付けられているものですが、元々は武士以外が苗字を名乗れなかった時代に、商人や農家などが自分の家の特徴をもとに付けていた家の名称のことです。歌舞伎役者も商人などを真似て屋号を付けたと言われています。
歌舞伎の楽屋などでは、役者の名前ではなく「◯◯屋さん」などと屋号で呼ぶこともあります。
最初に屋号を付けたのは市川團十郎家の「成田屋」で、それに倣って他の家も屋号を付けるようになりました。屋号は100種類以上あるとも言われますが、現在も使われている、主な屋号と代表的な名跡(芸名のこと)を一覧で紹介します。
| 屋号 | 主な名跡 |
|---|---|
| 🏮 明石屋(あかしや) | 大谷友右衛門、大谷廣松、大谷廣太郎 |
| 🎭 音羽屋(おとわや) | 尾上菊五郎、尾上菊之助、※尾上丑之助、尾上松緑、尾上辰之助、尾上松也、尾上右近、坂東楽善、坂東彦三郎、坂東亀蔵、※尾上左近 |
| 🟢 澤瀉屋(おもだかや) | ※市川猿翁、市川猿之助、市川中車、市川團子、市川猿弥、市川笑也、市川笑三郎、市川右近 |
| 🍁 加賀屋(かがや) | 中村魁春、中村東蔵、中村松江、中村玉太郎 |
| 📜 紀伊国屋(きのくにや) | ※澤村田之助、澤村由次郎、澤村藤十郎 |
| 🎐 京屋(きょうや) | 中村雀右衛門 |
| 🏯 高麗屋(こうらいや) | 松本白鸚、松本幸四郎、市川染五郎、市川高麗蔵 |
| ✝️ 十字屋(じゅうじや) | 大谷桂三 |
| 🌸 高砂屋(たかさごや) | 中村梅玉、中村莟玉 |
| 🏮 高島屋(たかしまや) | 市川左團次 |
| 🏮 高嶋屋(たかしまや) | 市川右團次、市川齊入 |
| 🌊 瀧乃屋(たきのや) | 市川門之助 |
| 🌊 滝乃屋(たきのや) | 市川男女蔵、市川男寅 |
| 🍊 橘屋(たちばなや) | 市村家橘、市村萬次郎、市村竹松、市村光 |
| 🔔 天王寺屋(てんのうじや) | ※中村富十郎、中村鷹之助 |
| 🎭 中村屋(なかむらや) | ※中村勘三郎、中村勘九郎、中村七之助、中村勘太郎、中村長三郎、中村鶴松 |
| 🎎 成駒屋(なりこまや) | ※中村歌右衛門、中村芝翫、中村福助、中村児太郎、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助 |
| 🔥 成田屋(なりたや) | 市川團十郎、※市川海老蔵、市川新之助 |
| 🏯 播磨屋(はりまや) | ※中村吉右衛門、中村歌六、中村又五郎、中村米吉、中村歌昇、中村種之助、中村種太郎、中村秀乃介 |
| 🌊 松嶋屋(まつしまや) | 片岡仁左衛門、※片岡秀太郎、※片岡我當、片岡孝太郎、片岡愛之助、片岡進ノ介、片岡千之助 |
| 🌊 松島屋(まつしまや) | ※片岡亀蔵、片岡市蔵 |
| 🏮 三河屋(みかわや) | 市川團蔵 |
| 🌸 美吉屋(みよしや) | 上村吉弥、上村折乃助、上村吉太朗 |
| 🏮 山崎屋(やまざきや) | 河原崎権十郎 |
| 🏯 山城屋(やましろや) | ※坂田藤十郎 |
| 👘 大和屋(やまとや) | ※守田勘弥、※坂東三津五郎、坂東玉三郎、坂東彌十郎、坂東秀調、坂東新悟、坂東巳之助 |
| 🔔 八幡屋(やわたや) | 中村亀鶴 |
| 🧧 萬屋(よろずや) | 中村萬壽、中村時蔵、中村錦之助、中村獅童、中村隼人、中村萬太郎、中村梅枝 |
(屋号の並びは五十音順。※は令和8年5月時点で空席の名跡を示します。)
歌舞伎界の将来期待の子供たち

親から子へと名跡や芸が受け継がれていくことは、歌舞伎の大きな特徴の一つです。
歌舞伎役者の子どもたちは幼いころから舞台に立ち、長い年月をかけて芸を磨いていきます。令和の歌舞伎界では、将来の團十郎や菊五郎を担う存在として期待される子どもたちも次々と登場しています。
ここでは、そんな若い世代の中から注目の顔ぶれを紹介します。
※年齢は記事閲覧時点のものです。
團菊の後継者たち
歌舞伎界を代表する二つの名門、「成田屋」と「音羽屋」。その次代を担う子どもたちとして注目されているのが、成田屋の市川新之助(13歳)、音羽屋の尾上菊之助(12歳)、そして尾上眞秀(13歳)です。
新之助は十三代目 市川團十郎の長男として、2022年に八代目 市川新之助を襲名しました。天真爛漫なキャラクターで小さいときから人気を集め、襲名披露では「歌舞伎十八番」の『外郎売』や『毛抜』で父のいない舞台でも堂々と主役をはり、将来の團十郎として大きな期待を集めています。
菊之助は八代目 尾上菊五郎の長男で、2025年に六代目 尾上菊之助を襲名しました。襲名披露では坂東玉三郎と八代目 菊五郎と『三人道成寺』で見事な踊りを見せるとともに、『菅原伝授手習鑑・車引』では、母方の祖父・中村吉右衛門譲りの荒事にも挑戦するなど、音羽屋の伝統である「兼ねる役者」の道を着実に歩んでいます。
また、七代目 菊五郎の娘・寺島しのぶの長男である眞秀も、2023年に初代 尾上眞秀を名乗って初舞台を踏みました。フランス人の父を持つハーフの役者としても注目されていますが、2026年4月の歌舞伎座では尾上右近とともに『連獅子』を踊り、まだ中学生ながら豪快な毛振りを披露しています。
成田屋と音羽屋は、明治時代に「團菊」と呼ばれた九代目 市川團十郎と五代目 尾上菊五郎の時代から歌舞伎界を牽引してきました。令和の時代、その伝統を受け継ぐ子どもたちがどのような役者へ成長していくのか楽しみですね。
兄弟で活躍する若手役者たち
歌舞伎界では親子だけでなく、兄弟そろって舞台に立つことも珍しくありません。特に近年は、幼いころから注目を集める兄弟役者たちが次々と登場しています。
まず中村屋では、中村勘太郎(15歳)と、中村長三郎(13歳)の兄弟が活躍しています。父の勘九郎と叔父の七之助も兄弟で活躍する歌舞伎役者であり、中村屋伝統の兄弟コンビとして成長を見守られています。
勘太郎は2025年8月、祖父・十八代目 勘三郎による『野田版 研辰の討たれ』で、仇討ちに奔走する“平井才次郎”を演じるなど、大きな役を勤めるようになっており、弟の長三郎もその背中を追いかけるように舞台に立っています。
また萬屋の二代目 中村獅童の息子である中村陽喜(8歳)と中村夏幹(5歳)の兄弟も人気を集めています。2026年には夏幹が骨折で休演した際、兄の陽喜が代役を務めることになり、「頑張って練習したので、ぜひ見に来て下さい」と立派にあいさつする姿が話題となりました。
播磨屋では、四代目 中村歌昇の息子である中村種太郎(10歳)と中村秀乃介(7歳)の兄弟も舞台に立っています。2025年9月の『菅原伝授手習鑑・寺子屋』では、“小太郎”と“菅秀才”という重要な子役を二人で勤めました。播磨屋の将来を担う兄弟として、これからの成長が楽しみです。
密かな注目株たち
團菊の後継者や兄弟役者たち以外にも、将来が楽しみな子どもたちがいます。
中村梅枝(10歳)は五代目 中村時蔵の長男で、2024年6月に五代目 梅枝を襲名して初舞台を踏みました。また、音羽屋の坂東亀三郎(13歳)は坂東彦三郎の長男です。
二人は2025年5月の『白浪五人男』で、市川新之助、尾上菊之助、尾上眞秀とともに稲瀬川勢揃いの場面に出演し、五人の子どもたちによる「五人男勢揃い」を披露しました。
歌舞伎では子どものころから舞台に立ち、長い年月をかけて芸を磨いていきます。今回紹介した子どもたちの中から、将来の團十郎や菊五郎、あるいは新たな名優が誕生するかもしれません。歌舞伎を観る機会があれば、ぜひこうした若い世代にも注目してみてください。
まとめ:屋号を知って歌舞伎をもっと楽しもう
歌舞伎役者の屋号と由来と家紋について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
歌舞伎役者の屋号は、家や一門の歴史を伝える大切な名前です。成田屋、音羽屋、高麗屋、中村屋など、それぞれの屋号には由来があり、受け継がれてきた家紋にも家ごとの個性が表れています。
好きな役者の屋号や家紋を知っておくと、舞台で飛び交う「〇〇屋!」という大向うの掛け声にも、より親しみが湧いてきます。
また、親から子へ、師匠から弟子へと芸が受け継がれていくのも歌舞伎の大きな魅力です。ぜひお気に入りの屋号や家紋を見つけて、歌舞伎鑑賞をさらに楽しんでみてください。
参考資料
【書籍📚】
「歌舞伎手帖」
「歌舞伎ハンドブック」
「歌舞伎の解剖図鑑」
「かぶき手帖」
【ウェブサイト🌐】
「歌舞伎美人」
「歌舞伎オンザウェブ」
「家紋DB」
「Wikipedia」







